原作は、映画プロデューサー・脚本家として多数の映画を製作してきた川村元気が小説家として2019年に発表した自身4作目となる小説「百花」(文春文庫刊)。各界の著名人から絶賛され、発行部数18万部を突破の《ふたりで生きてきた親子の、愛 と記憶と、忘れられない事件を巡る物語》を描いた作品。原作者である川村元気が監督・脚本を手掛ける。監督としては 2018年カンヌ国際映画祭短編コンペティション部門に出品された『どちらを(英題:Duality)』などを手掛けてきたが、今作が初の長編監督デビュー作となる。
記憶を失っていく母と向き合うことで、母との思い出を蘇らせていく息子・葛西泉を演じるのは、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめとする数々の映画賞に輝いてきた演技派俳優・菅田将暉。 レコード会社に勤務し、社内結婚をしてまもなく子供が生まれようとしている日常から一変。記憶を失っていく母を 目の当たりにして、封印していたはずの過去の記憶に向き合うことになる役どころを熱演。
そしてすべてを忘れていくなか、様々な時代の記憶を交錯させていく母・葛西百合子を演じるのは、黒澤明、増村保造、深作欣二など数々の名匠の作品に多数出演し映画賞を総なめにしてきた原田美枝子。 女手一つで育ててきた息子と、とある事件をきっかけにすれ違うようになってしまった百合子を演じる。
そんな感涙の愛と記憶の物語となる本作を鑑賞した映画監督・プロデューサー感想コメントが到着した。
『男はつらいよ』『たそがれ清兵衛』『母と暮らせば』などの名作を監督した、日本映画界を代表する巨匠・山田洋次、『パラサイト 半地下の家族』では「第 72 回カンヌ国際映画祭」パルムドール<最高賞>、「第92 回アカデミー賞」作品賞ほか最多4部門を受賞した映画監督 ポン・ジュノ、スタジオジブリのプロデューサーとして名作を世に送り出してきた 鈴木敏夫、『Love Letter』『スワロウテイル』『花とアリス』ほか、数々の作品で熱狂的なファンを生み出してきた映画監督 岩井俊二という、世界を代表する映画監督・プロデューサーらが一足早く本作を鑑賞し、熱い賞賛コメントが寄せられた。
著名人コメント ※順不同/敬称略
◆山田洋次/映画監督
凝縮された美しさ。
奇想天外な物語がある一方、誰もが身に覚えのあるような身近なストーリーもある。
認知症がじわじわと進行しつつある母親に、出産を控えた息子夫婦が向き合う、という誰にとっても身につまされるような、悪く云えば日常的なドラマを、思い切って凝縮してみる、何百気圧のプレッシャーをかけてギュウギュウ圧縮すると、透明なキラキラした美しい結晶体に変化する。
川村監督の『百花』はそんな映画だ。
ワンシーンワンカットで撮影された、いわば「長回し」の大胆な演出スタイルが不思議に飽きさせない。うまい演出とは云いたくない、この作品の力はスタイルではなく、このドラマにかけた監督のエネルギー、情念、憧れ、愛情、といったもの、つまりハートなのだということをしみじみ思わせてくれたし、実は初演出の川村元気君自身が完成した作品を見てそのことに気づき、衝撃的に思いあたっているに違いない。
「カットとカットの間に神が宿るんだ、それが映画というもんだよ」と、ぼくに語ってくれた黒澤明監督の温顔をしみじみ思い出す。
◆ポン・ジュノ/映画監督
映画は最初から野心的であざやかだった。絶妙なロングショットは、非常に繊細かつ鋭敏に演出されていて、最後まで緊張感が続く。
何よりも感動したのは、映画の後半で、主人公の泉が母の百合子に「なんで忘れてんだよ、こっちは忘れらんねえんだよ」と叫ぶ場面。そしてラストに、母親が求める「半分の花火」が何だったのか、その本当の意味に彼が気づく。なんと感動する瞬間なのか。改めて、息子と母の親子関係の本質を力強く感動的に描いた作品だ。素晴らしい作品を見せてくれたことに、感謝を伝えたい。
◆鈴木敏夫/スタジオジブリ・プロデューサー
母の記憶とリンクするピアノ曲と抑制された音楽と。
本当に久しぶりに映画に浸った。
◆岩井俊二/映画監督
記憶とは歪んだイビツな鏡なのかも知れない。母にとって小さな湖が、海と映る。果てなく大きな存在が母であるその息子の鏡には。
映画『百花』
2022年9月9日(金)公開
出演 :菅田将暉、原田美枝子
監督 :川村元気
脚本 :平瀬謙太朗、川村元気
音楽 :網守将平
原作 :川村元気「百花」(文春文庫刊)
制作プロダクション :AOI Pro.
配給 :東宝
海外配給 :ギャガ
©2022「百花」製作委員会
映画公式Twitter
https://twitter.com/movie_hyakka