成田凌インタビュー、Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」“こんなに面白いことが人生で起きるんだな”と

–––最初に本作の話を聞いた時の印象を教えてください。

「（原作者の）燃え殻さんに初めてお会いした時に、ご自身の経験をお話しくださって、“こんなに面白いことが人生で起きるんだな”と思っていたんです。それから、監督（萩原健太郎）ともご一緒したいと思っていましたし、キャスト一覧みたいなものを見せていただいたら素晴らしい人たちで。“この方々と一緒にこんな青春の物語を描けるのであればぜひやりたい”と思いました」

–––荻野智史はどんな人物だと思いましたか。

「荻野は真っ直ぐに生きていて、夢もあって、人並みに恋愛もしていて、それだけで素晴らしいことだと思うんです。でもそれを傍から見るとなんか心がキュってなる。荻野が感じていることと、傍から見て感じることが違うんです。実はみんなが当たり前にやっているようなことを荻野もやっているだけなんですけど、傍から見ると“この気持ちは何だろう？”　みたいな感覚になる。そういう人間が出来たらいいなと思って演じていました。あとは作品全体を通していろんな諦めを描いているんですけど、諦めて自分から何かを取ったことで、そこに新しい何かが入って来る。時間もそうだし、恋人もそうだし、そういうことを荻野から感じてもらえたらとは思っていました」

–––演じていてご自身の高校時代を思い出すこともありましたか。

「楽しいことは思い出しやすいし、昔の友人と集まった時にはそういうことを笑いながら話したりもしますけど、当時、悩みとか、夢とか、人には言えなかったとかもたくさんあったと思うんですよね。けど、そんな悩みとかも全て忘れて楽しい時間を過ごせるのが高校生だったなって。それを思い出しました（笑）」

–––高校時代はどんな夢を持っていましたか。

「今、自分がここにいるのは、高校時代に友人と先生とした何気ない会話がきっかけになっていて。部活が終わった後に友人と顧問の先生と朝礼台に座って話していたら、先生から“進路どうするの？”　って聞かれて。僕は“大学か～、勉強は嫌だな”って思っていたくらいだったんですけど、“専門学校は？”って聞かれた時に、友人が僕の手を取ってあげたんです。そこで僕の人生は決まりました（笑）。結果、その友人と一緒に美容学校に通うんですけど。ちなみに、その友人がイベント好きで、文化祭でAKBを踊ろうって言われてみんなで踊りました。そんな僕が今回、前田さんと共演しています（笑）。人生本当に何があるかわからないですよね」

–––成田さんは荻野とは違って、オーディションでいくつもの役を勝ち取っていますよね。

「最初の頃の役は全部オーディションでしたけど、ありがたいことに落ちなかったですね。荻野には言えないですけど（笑）。事務所に入った時にマネージャーさんから“オーディションは100回受けて一個受かったらいいほうだよ”と言われたんですけど、1回目で受かって、そしたら2回目、3回目も受かって、今思えばすごく有難いことで、良い経験ばかりでした。でも受かったらそこに責任は伴ってくるので、新たな壁にぶつかっていました。この間、久々に僕の2作目の出演作のプロデューサーさんとお会いした際に、オーディションの話をしてくれました。僕の言動が面白いと思って取ってくださったと聞きました。それも出会いですね」

–––そんな出会いが繋がって、今があるんですよね。

「そんな僕を面白がってくれる大人に出会えたことが良かったんだと思います。当時、僕なりに一生懸命やっていたら、8話で僕の役が注目される話を作ってくださって。そのプロデューサーさんの存在は大きかったですね。そうやってテレビドラマに出ると、他の作品でも僕のことを気にして呼んでくださることが続いたりもしました。その後、やっぱり映画がやりたいなと思っていたら、キャスティングの方が、まだ映画は撮ったことのない監督だけどこんな面白い人がこういう作品を撮ろうとしているよって教えてくださって。それで会わせていただいたのが、『ニワトリ★スター』のかなた狼監督でした。お会いする時、“脚本を読まないで来てください”って言われたんですけど、理由がわからなかったから読んでしまったんですよ。そしたら会って“脚本読んだ？”　と聞かれ、どうしようって思ったんですけど、正直に読んだことを伝えたら“良かった”って言われて、その時はその言葉の意味も理解できませんでした（笑）。だけどその後に連絡が来て、今度はお酒を飲みながら話そうと言われて、呼ばれて行った店が僕が前に行ったことがあったお店だったんです。しかも、そこの店主が僕のことを覚えてくださっていて、さらにその映画の美術さんだったんです。それもまた縁だなって思って、“この役は自分しかいません。何でもします”と言って、やれることになりました。やっぱり出会いや縁って大切だなって思っています」

PROFILE

成田 凌 NARITA RYO
1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。
第74回 毎日映画コンクール 男優主演賞 受賞
第42回 日本アカデミー賞 新人俳優賞 受賞
第44回 日本アカデミー賞 優秀助演男優賞 受賞
第63回 ブルーリボン賞 助演男優賞 受賞

〈近年の主な出演作〉
連続テレビ小説「おちょやん」（2020-21年）
ドラマ「逃亡医Ｆ」（2022年）
映画『ホムンクルス』（2021年）
映画『街の上で』（2021年）
映画『くれなずめ』（2021年）
映画『竜とそばかすの姫』声の出演（2021年）
映画『ちょっと思い出しただけ』（2022年）
映画『ニワトリ☆フェニックス』（2022年）
朗読劇「湯布院奇行」（2021年）
舞台「パンドラの鐘」（2022年6月6日～上演）
〈待機作〉
映画『コンビニエンス・ストーリー』（2022年8月5日公開）

Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」

デビュー作「ボクたちはみんな大人になれなかった」（新潮社）がベストセラーとなった小説家・燃え殻による書き下ろし作品。17歳と27歳という年に人生の分岐点を迎えた者たちが抱く夢と葛藤、そして後悔を描き、何者でもない6人にスポットライトをあてた群像劇。主人公・役者の夢を諦めた平凡な27歳のサラリーマンの荻野智史役の成田凌をはじめ、同級生役に伊藤沙莉、藤原季節、上杉柊平、前田敦子、さらに元教師役の田中麗奈が出演。

STORY

高校2年生だった僕らは教室で、エロ本に赤い下着姿で写る27歳の女教師をクラス全員で見殺しにした。
あれから10年が経ち、僕らはあの時の先生と同じ27歳になった。あの時先生が流した歌は、今の僕らに何を語りかけるのだろう──。

あの時、17歳だった僕らは27歳の大人を冷めた目で見ていた。17歳は、どんな夢も叶うと信じていた無敵で最強の時期だったけれど、時間は誰にでも平等に流れている。僕らはあの時の大人と同じ27歳になった。
役者になる夢を諦めきれずにもがく荻野智史(成田凌)、アイドルになりたかった前田ゆか(伊藤沙莉)、小説家志望の片桐晃(藤原季節)、武道館ライブを目指す中澤悠斗(上杉柊平)、人気アイドルのものまねに活路をみつけた島田まさみ (前田敦子)、そして17歳だった彼らの心に27歳という年齢を刻んだ元英語教師の望月かおり(田中麗奈)。27歳だった先生と27歳になった生徒たちの運命が10年の歳月を経て再び交わろうとしていた。