主演映画『冬薔薇(ふゆそうび)』では、堕落した生活を送る青年役に挑み、役者としての新たな魅力や可能性を感じさせるような素晴らしい表現力で観る者の心を揺さぶった伊藤健太郎。
そんな彼が、これまでの俳優人生を振り返り、印象に残っている作品や自身にとって転機となった作品での思い出について語ってくれた。他にも影響を受けた洋画や憧れのハリウッド俳優の話をする様子からは“芝居への情熱”や“映像作品への愛”が伝わってきた。
撮影/稲澤朝博 スタイリスト/前田勇弥 ヘアメイク/竹島健二 文/奥村百恵 衣裳/デニムジャケット¥48,400、デニムパンツ¥35,200/semoh (セモー)他、スタイリスト私物
——2014年に役者デビューをしてから8年以上経ちましたが、これまでの役者人生を振り返ってみて、いまどんなことをお感じになっていますか。
「小さい頃って“サッカー選手”とか“お医者さん”とか将来の夢が毎日のようにコロコロ変わるじゃないですか(笑)。僕もそういう子どもだったので、いろんな役を演じさせていただくたびに子どもの頃の夢が叶ったような感覚になるんですよね。様々な境遇で生きる人たちの人生を、役を通して疑似体験できるという意味ではまさに僕にピッタリなお仕事だなと、最近改めて感じます」
——役者というお仕事以外でなかなかそういう経験はできないですよね。
「役作りの際に、演じる役の言動に対して“なんでこの人はこういうことを言うんだろう”とか“どうしてこんな行動をするのかな”と深く探るのですが、そうすると自分の中にはなかった考えや物事の見方を知れたりするので、とても刺激的に感じて。本当に素敵なお仕事だなと思います」
――幅広い役柄を演じてこられた印象がありますが、その中でも伊藤さんにとって転機となった作品や役柄はなんでしょうか。
「“伊藤健太郎”をたくさんの方々に知っていただくきっかけになったドラマ「今日から俺は!!」は、僕にとってすごく大事な作品です。伊藤真司というツッパリの役を演じたのですが、このドラマから僕のファンになって他の出演作も観てくださる方が増えたり、いまだに街で『あ! 伊藤真司だ!』と声をかけられたりするので、やはり「今日から俺は!!」の反響はすごかったなと思いますね」
――ちなみに役名で声をかけられたときはどのようなお気持ちなのでしょうか。
「めちゃくちゃ嬉しいですよ。自分が演じた役がその人の中でずっと印象に残ってるってことじゃないですか。それって役者冥利に尽きますよね。今後の課題は「今日から俺は!!」ぐらい大きな反響をいただけるような作品を増やすことと思っています」
――ご自身のお芝居に影響を与えた作品も教えていただけますか。
「連続テレビ小説「スカーレット」では実在した人物の役だったので、いつも以上に“中途半端に演じてはいけない”という気持ちで挑んだのですが、約半年ほどひとつの役を演じられたことは僕の中でとても大きかったです。川原武志という役とじっくり向き合えたことで、それまでとは違うお芝居への感覚が生まれることもあったので、すごく印象深い作品になりました」
――これまでに数多くの役者さんたちと共演されていますが、中でも印象に残っている方とのエピソードをお話しいただけますか。
「2016年に出演したドラマ「仰げば尊し」の主演が寺尾聰さんだったのですが、それまで寺尾さんのような大先輩の役者さんとご一緒する機会があまりなかったので、現場でものすごく緊張していたんです。このドラマは学園もので、若い役者がたくさん出演していたのですが、寺尾さんが僕ら若手に向かって『役者という仕事はキャリアや年齢は関係なくて、“よーいスタート!”でカメラが回ったら相手が先輩でも萎縮する必要はないんだよ。なんなら他の役者を潰すぐらいの気持ちでやりなさい』みたいなことをおっしゃったんです」
――素敵なアドバイスですね!
「素敵ですしカッコいいですよね。その言葉を聞いた瞬間からカメラの前に立ったら相手が誰であろうと遠慮せずにお芝居しようという気持ちになれました。もちろん最低限の礼儀は必要ですけど、例えば先輩の頭をひっぱたくシーンで遠慮してしまったら画として成立しないので、寺尾さんのアドバイスのおかげで思いっきりひっぱたけるようになりました(笑)」
現在発売中のSCREEN+Plus vol.82では役者としての今後の展望を語ってもらっています。ぜひ本誌もご覧ください。
PROFILE
伊藤健太郎
1997年6月30日生まれ、東京都出身。
〈近年の主な映画出演作〉
連続テレビ小説「スカーレット」(2020年)
ドラマ「東京ラブストーリー」(2021年)
映画『今日から俺は!!劇場版』(2020年)
映画『弱虫ペダル』(2020年)
映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020年)
映画『とんかつDJアゲ太郎』(2020年)
映画『十二単衣を着た悪魔』(2020年)
映画『冬薔薇(ふゆそうび)』(2022年)