(撮影/久保田司 取材・文/柳真樹子)
――団塚監督と黒崎さんが、もともとお知り合いだったと伺いました。団塚監督の作品で初めての主演映画はどういったお気持ちでしたか?
以前、『さよなら ほやマン』という映画に私が出演しまして、その作品のメイキングで入っていたのが団塚監督でした。その映画の撮影は、2週間ぐらい島に滞在していて、スタッフさんたちともすごく仲良くなり友だちみたいな関係性になりました。その時に団塚さんが「次、映画を撮るんだ~」とお話されていたのは聞いていたんです。ある時、監督にカフェに呼ばれて、主演をお願いしたいと話されました。「僕なのか…!?」と驚きましたが、確かに団塚さんと僕って似ていると言われることがあったので、ある意味納得しました。
――似ているのはどういうところ?
顔というより性格面で。監督はアーティストなので、ちょっと常識から離れた部分がありますが、この外れ方が似てるのかなと思いました。
ーー「見はらし世代」という言葉は聞き馴染みがないですが、映画のタイトルについては何か説明を受けましたか?
タイトルを聞いた時は、若干、みんな不安になったと思います(笑)。所謂「“Z世代”とかが浮かんで、軽々しくみられるのでは?」と心配しました。監督からは詳しく聞いてないですけど、僕的には東京の景色とか暮らしの景色とか、「世代」というよりは「見はらす」ことに注目していました。最初に監督にも「何が見はらしなんですか?」と聞いたんですが「なんかいい感じじゃん」って(笑)。
――渋谷を中心とした街並みを見はらしている……。たまたま再開発に居合わせた色々な人たちという感じなのかなと受けました。
そういう感じです(笑)。景色と人物が同時に交差している様子だと思います。
――お話をいただいた時は蓮の人物像はどのぐらい出来上がっていたんですか?
監督の前の作品『遠くへいきたいわ』はセリフも芝居も設定もガチガチに固めて撮影されたらしく、今回はそれとは逆で撮りたいとおっしゃってました。なので、ある程度、こちら側に余白を持たせてくださったようです。
――役作りに関してはいかがでした?
監督と相談し、シーンごとにメモしたりお話したりしていたのですが、監督はあえて撮影まで蓮というキャラクターを固めたくなかったんだろうなと、途中から気づきました。それからは、僕のプライベートと近いものを蓮に感じていたので、あまり作りすぎないように演じました。
――自分っぽい部分がありました?
そうですね~(笑)。例えば父親の泣いてるところを見て笑っちゃうところとか。ちょっとした笑いのポイントとかが似てるのかなと感じました。
――子供の頃に家族4人で出かける様子が描かれ、それからすぐに青年になった蓮が描かれていました。映画の中では触れていない数年間は、蓮にどんなことが起こったのでしょうか?
恐らくですけど、父親に久々に会った時に、怒りが沸くんですよ。蓮は母の死についてずっと苦しみ続けているわけではなかったと思います。フツーに悲しんで、フツーにサッカー部に入って、彼女とかもいて……と割とフツーの男の子として過ごしてきたと想像しました。
――監督をはじめスタッフも同世代が多かったそうですが、そんな現場はこれまでありました?
ここまでの現場はなかったですね。現場の特徴として、どの立場の人でも普通に発言できる空気を作るのが上手い監督です。若い人も多くいたのですが、ベテランの方もいらっしゃって。仲がいいので、意見が言いやすく自由度の高い現場でした。
――お父さん役の遠藤憲一さんとの共演はいかがでしたか?
遠藤さんも何でも言える空気がある方でした。そして、とにかく、いい意味で顔が最高に面白い!遠藤さんとの最初の芝居は、僕が花を投げつけるシーンだったんです。やっぱり、遠藤さんの顔って強いんで、僕、なんか笑っちゃったんですよ(笑)。
――ボス感ありますよね。
それでいてカッコいいんですよ。僕が笑っちゃっても、遠藤さんは「笑っちゃダメだよ~」って優しくいじってくれる方でした。遠藤さん絡みでもう一つ思い出したんですが、家族3人で最後に会うシーンがあるのですが、遠藤さんが木竜さんに向かって「久しぶり」って言うセリフがあって。そこを「お久しぶり」って言い間違えて、ご自分でツボっちゃってました。5回くらいNGを出して助監督に怒られていました(笑)。そしたら「怒られちゃったよ~」って(笑)。本当に可愛らしい方です。
