10月25日から行なわれた東京国際映画祭のオープニング作品ゲストとして来日したメリル・ストリープ。しっかり12月1日から一般公開される新作「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」のキャンペーン会見も行なってくれた。
映画祭用のいつもより少し小さめの会見場に、笑顔で現われたマダム・メリル。
『とても温かい歓迎をありがとうございます。前回来た時(「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」)より二倍くらい取材の方がいるんじゃないかしら?(笑)』
超満員の取材陣を前に、まったく動じることのない堂々とした様子は、大女優ならではの余裕。
さて今回の“オンチな歌姫”の役作りはどういうものだったのだろう。
『フローレンスは確かにあまり歌が上手とは言えないですが、心から音楽を愛していました。ニューヨークでトスカニーニなどのコンサートを開いたり、芸術的な貢献を惜しまなかった。でも彼女のようなパトロンの人たちはだいたい心の中では、自分が歌手になりたいとか、舞台に立ちたいという夢のある人が多いものなの(笑)。私の夢も歌手になる事なのよ(笑)。以前「マンマ・ミーア!」などで歌を披露したけれど、今度も二か月かけて特訓したの。最初は本当にオペラ・コーチについて、きちんとしたアリアが歌えるほどにして、最後の二週間をかけて、それをちょっと崩して歌うようにしたんです(笑)』
オンチなフローレンスがカーネギー・ホールでコンサートを開くために内縁の夫があれこれ奮闘するが、大女優メリルと旦那様の関係はどういうものなのだろう。
『私の夫はとても理解がある人で良かった。彼はアーチストなので、私の仕事に波があることも理解できる。他の職業の人だったら、うまくいかなかったかもしれないわね。フローレンスとシンクレアにしても同じ事。彼らも共に芸術を愛していたの。フローレンスは自分のオンチを知らなかったけど、シンクレアは役者として自分が才能不足とわかっていた。でもどこかでアートにかかわっていたい、という夢を共有していた。ずっと一緒にいたのはそういうことだったのではないかしら』
今度もアカデミー賞級の演技を披露しているが、完成した作品を見て自分の演技力に驚くこともあるのだろうか?
『私はいつも最初の試写を見るのが楽しみなの。現場で演技している時はなかなか気づかないけど、試写を見る時になって、いかに共演者たちがスゴイ演技をしていたかに気づき驚かされるから。初めて監督の目線で見られる時なので、ワクワクするのよ』
と謙遜するメリルだが、最近ハリウッドでも女性をメーンにした企画が増えつつあることを喜んでいた。
また今回の来日では京都にも足を延ばし、
『お豆腐料理のレストランに入ったの。アメリカにはお豆腐は一種類しかないのだけど、いろんな種類のお豆腐があることを知って本当にびっくりしたわ!』
と語り、また近いうちに日本に来たいと再訪を約束してくれた。