『レゴ®バットマン ザ・ムービー』は、2つの意味でバットマンファン必見の映画です。1つはバットマンファンが嬉しくなるようなパロディ作品として楽しめます。まず歴代バットマンの名場面をレゴ®バットマン流に再現したシーンが登場。89年のティム・バートン版『バットマン』で、バットマンがジョーカーに言うセリフがそのまま再現されたりしています。そうしたメモリアル・シーンの1つに『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の戦いもあり、ちゃんとレゴになったバットマンとスーパーマンが戦います。
さらに『ジャスティス・リーグ』の面々も出演! 傑作なのは、スーパーマンがバットマン抜きでヒーロー仲間を集めてパーティーを開催しているシーン。そこにはフラッシュ、ワンダーウーマン、アクアマン、サイボーグ、グリーン・ランタンが参加しています。
これは深読みすれば今年の11月に公開される超大作映画『ジャスティス・リーグ』をネタにした描写になっています。というのも『ジャスティス・リーグ』ではどっちがリーダーになるかをめぐってバットマンとスーパーマンがもめるという展開になるとも言われており、だからそれを見越して(?)、このレゴ®の世界では一足早くスーパーマンが他のヒーローたちを取り込もうとしていたわけですね。
さらに今度の映画版『ジャスティス・リーグ』では、まだグリーン・ランタンは登場しないようなのですが、それをうけ、このレゴ®版のパーティーのシーンではグリーン・ランタンは他のヒーローたちとちょっと離れた場所に浮いているのです(笑)。『スーサイド・スクワッド』に登場したハーレイ・クインやキャプテン・ブーメランやキラークロックもちゃんとレゴ®仕様で登場です。
こうしたパロディ(ないしオマージュ)が満ち溢れながらも‟正当な”バットマン映画に仕上がっているのが本作のもう1つの魅力。確かにかわいいギャグもいっぱいの楽しい映画ですが、バットマンという複雑なキャラの本質をうまくついているのです。
レゴ®の世界のゴッサム・シティを舞台に愛らしい仕様のバットマンとジョーカー率いるスーパーヴィラン軍団が激突、そこにバットマンの押しかけ相棒ロビンが絡んでくる、というのが基本ストーリー。ここに今までのDCコミックスや映画で描かれてきたシリアスなエッセンスがちゃんと取り入れられているのです。例えばバットマンとジョーカーはお互いの表と裏の存在であり共存関係にある、家族の愛に飢えているからこそバットマンは他者をよせつけす孤独なヒーローであろうとするなど、今までのバットマン映画やDCコミックスで描かれてきたエッセンスがうまくちりばめられているのです。この映画は、実はバットマンと彼をとりまく人々の‟結びつき”がテーマであり、それをまさにレゴ®という1つ1つのパーツを‟結びつき”で世界を組み立てる素材で描いているところが興味深いですね。
登場するバット・メカは本当にかっこよくて、映画を観終わった後、レゴ®のバットマンおもちゃが欲しくなります。
さてこの映画の本当の主役はバットマンの相棒であるロビンであり、彼の視点で物語は進んでいきます。
本作の監督クリス・マッケイは次回作としてこのロビンをテーマにした実写版DCヒーロー映画『ナイトウイング(仮)』の監督候補だそうです。レゴ®ではなく人間の俳優が演じるライヴ・アクション。この監督は本当にロビンが好きなのですね。ロビン愛があふれる作品でもあります。
〈TEXT:杉山すぴ豊〉
「レゴ®バットマン ザ・ムービー」
監督/クリス・マッケイ
配給/ワーナー・ブラザース映画
公開中
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