コンペティション長編部門の主な受賞結果
金熊賞…『肉体と精神』(ハンガリー、イルディコ・エンエディ監督)
銀熊賞(審査員特別賞)…『フェリシテ』(仏=セネガル=ベルギー=独=レバノン、アラン・ゴミ監督)
銀熊賞(監督賞)…アキ・カウリスマキ(フィンランド=独、『ジ・アザー・サイド・オブ・ホープ』)
銀熊賞(男優賞)…ゲオルク・フリードリヒ(独=ノルウェー、『ブライト・ナイト』)
銀熊賞(女優賞)…キム・ミニ(韓国、『オン・ザ・ビーチ・アット・ナイト・アローン』)
銀熊賞(脚本賞)…『ア・ファンタスティック・ウーマン』(チリ=独=米=スペイン、セバスチャン・レリオ監督)
銀熊賞(芸術貢献賞)…ダナ・ブネスク(ルーマニア=独=仏、『アナ、モナムール』編集)
名誉金熊賞…ミレナ・カノネロ
今年もハリウッド作品のワールドプレミアは多数
政治色の強い映画祭として知られるベルリン映画祭だけに、今年も審査員たちの挨拶からアメリカ大統領ドナルド・トランプへの批判・皮肉が飛び出すという幕開け。
最新作『エル』で主演女優のイザベル・ユペールをオスカー候補に送り込んだポール・ヴァーホーヴェン監督を審査員長に、ディエゴ・ルナ、マギー・ギレンホールらが名を連ねる審査員たちも反トランプ派のようでした。
例年に比べるとハリウッドスターの参加は減少気味のようですが、それでも自身最後のウルヴァリン映画と言う『ローガン』のヒュー・ジャックマンが、共演のパトリック・スチュアート、子役のダフネ・キーン、ジェームズ・マンゴールド監督らとプレミアに登場したり、『ロスト・シティー・オブ・Z』のロバート・パティンソン、チャーリー・ハナム、シエナ・ミラーがそろって顔を見せたり、スタンリー・トゥッチが監督したアーミー・ハマーの新作『ファイナル・ポートレート』でハマーとジェフリー・ラッシュが現われたりと、今年も人気スターの顔ぶれは豪華。
日本でも公開中(2017年4月14日現在)の「T2 トレインスポッティング」もベルリンがワールドプレミアということで、ダニー・ボイル監督をはじめ、ジョニー・リー・ミラー、ユエン・ブレムナーらが参加。ヨーロッパからは、ほかにも御大カトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、ダニエル・ブリュール、セシル・ド・フランスといった日本でもおなじみのスターが会場をにぎわせました。
最高賞はハンガリー作品、日本からも受賞作が
日本からもSABU監督の『ミスター・ロン』(ドイツ、香港、台湾との合作で主演はチャン・チェン)がコンペティション部門に参加しましたが、残念ながら受賞は逃す結果に。
コンペ部門ではありませんが、荻上直子監督の「彼らが本気で編むときは」がLGBT映画を対象にするテディー賞で審査員特別賞を受賞しました。
審査員長のヴァーホーヴェンはポリティカルな傾向にはとらわれないと発言していましたが、実際、金熊賞に輝いたハンガリー映画『肉体と精神』は奇妙なラブストーリー。
ブダペストにある畜殺場を舞台に、そこで働く女性と彼女のボスが同じ夢を見るという、日本人からすると「君の名は。」をちょっと思い出してしまうような設定の作品。
映画祭中から評価は高かったものの、前半の上映作品では銀熊賞を獲得したアキ・カウリスマキ監督の『ジ・アザー・サイド・オブ・ホープ』が圧倒的な人気だっただけに、予想外ともいえる金熊賞受賞となりました。
また、女優賞となった「お嬢さん」のキム・ミニの主演作『オン・ザ・ビーチ・アット・ナイト・アローン』は韓国の名匠ホン・サンス監督の最新作。相変わらずベルリンでのホン監督の人気は高いようです。