今回は、もうすぐ公開になる「キングコング:髑髏島の巨神」のお話です。
ドクター・ストレンジ」で来日したマッツ・ミケルセンの初日舞台挨拶にお邪魔しました。彼曰く、子どもの頃からブルース・リーとマーベルとスター・ウォーズが好き。だから「ローグ・ワン」の出演は嬉しかったし、「ドクター・ストレンジ」もマーベル物でカンフーっぽいアクションも出来るから本当に幸せだったと。
なんだ、マッツさんも自分と同じような少年時代(笑)。彼は少年の時の夢を俳優という形でかなえました。僕は自分にブルース・リーやスター・ウォーズを教えてくれたこのスクリーン誌で記事を書くことが出来て幸せです。スクリーン誌の中で思い出に残る1冊があり、それが76年の「キングコング」特別増刊号。33年製作の「キング・コング」のリメイク版。東宝の怪獣映画が好きで映画好きになり洋画ファンになった僕にとって「キングコング」はハリウッド発の本格的怪獣大作。期待に胸をふくらませこの増刊号を読み漁りました。76年版は作品としては評価されなかったようですが、僕は十分楽しみコングのファンに。
そして14年、サンディエゴ・コミコンに参加した際、新しいコング映画の製作が発表され大興奮! それが今回の「キングコング:髑髏島の巨神」です。でも、こうも思ったのです。なんでまた作るの? というのも05年のピーター・ジャクソン版「キング・コング」が素晴らしいリメイクで、この先コング映画はしばらくないだろうな、と。しかもこのコミコンで発表されたタイトルが“Skull Island”(髑髏島)。僕は勝手にピーター・ジャクソン版の“前日談”と解釈し、島だけのお話で果たして盛り上がるのか?と思いました。
実はこの映画の監督ジョーダン・ヴォート・ロバーツ氏も全く同じ気持ちだったようです。先日、来日した彼にインタビューする機会がありました。監督曰く、大作のオファーで喜んだけれど「いまコングの物語を作る意味ってなんだろう?と考えたんです。つまり自分ならば、どういうコングだったら観たいか、ということです」
今回のコングは“美女と野獣”ではなくスーパー怪獣アクションだ!
その答えとして自分がファンだったという「地獄の黙示録」等のベトナム戦争映画の要素をとりいれた、と。ジャングルを舞台に巨大な軍用ヘリとコングが大バトルする、というイメージ。そう、監督は、コングと言えばみんながまっさきに思い浮かべる“美女と野獣”のお話ではなく、スーパー怪獣アクションとして組み立てることに挑戦したのです。だから今度のコングは“既知だがデカい動物”ではなく“人知を超えた獣神”。前半ヘリvs.コング、後半コングvs.モンスターと怪獣映画としての見せ場が連続! これが功を奏し本作は嬉しくなるような冒険エンタテインメントに仕上がっています!
「シン・ゴジラ」と「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を観た時のあの胸熱感!しかもジョーダン監督は根っからの映画ファンであると同時に日本の怪獣映画、ゲーム、アニメのギークでもあり、エヴァンゲリオンや「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」的なキャラも大好き。そういう自分の引き出しの中にある要素を全部とりいれ、まさにジョーダン少年の夢がテンコ盛りの髑髏島となりました。
僕の愛する76年版では軍用ヘリにコングがあっさり射殺されてしまいます。ここはちょっと肩透かしで、もっとコングとヘリの戦いを観たかったのですが、本作ではヘリ軍団をものともせずコングが大暴れ!40年ぶりに雪辱を果たしてくれました!“美女と野獣”の要素は薄まりましたが、このコングには33年版の遺伝子もちゃんと残っています。それは“原始と文明”というテーマ。本作では原始の時代からの神であるコングが、戦争を持ち込む文明人の前に立ちはだかる、という構造になっています。そして何よりも33年版が当時の観客になにかすごいものを見せたい!という意気込みで作られていたのと同じように、本作も徹底的に観客を楽しませてくれます!傑作です!あ、絶対にエンドロールが終わるまで席を立たないでください!そして耳をすませてくださいね!