INTRODUCTION
今年の第89回アカデミー賞において、作品・主演男優・助演女優・脚色の4部門でノミネートされ、見事にヴィオラ・デーヴィスが3度目のノミネートで助演女優賞を獲得した。すでにオスカー俳優となっているデンゼル・ワシントンが、オーガスト・ウィルソン作の同名舞台劇を作者自身に脚本化してもらい、製作も兼ねて監督した作品。
舞台は第2次世界大戦後の1950年代、公民権運動以前のまだ黒人に対する差別が色濃く残っている時代で、貧しい黒人の家族が抱える様々な問題を通して、 当時のアメリカ社会の実情と貧困黒人家庭の困窮ぶりが描かれていく。
ただし、ワシントンがこの題材を取り上げ自ら映画化したのは、こういった歴史的・社会的背景よりも、編中で描かれていく家族同士の愛と葛藤、父親の権威と身勝手ぶりに興味をそそられたからではないだろうか。妻を愛し続けていながらも家庭外で子どもをもうける展開にもそれがうかがえる。
STORY
主人公
あらすじ
ピッツバーグに住むトロイ・マキソンは、妻ローズ、高校生の息子コーリーと共に、貧しいながらも平穏な暮らしを送っていた。
殺人を犯して服役し、出所後に野球に目覚めてニグロ・リーグで活躍したがメジャーには昇格できず、いまは市のゴミ清掃の仕事で生計を立てている。刑務所時代からの親友ボノは白人だが、トロイを尊敬している。
息子コーリーは学校でフットボールに励んでおり、スカウトマンがプロになるための大学推薦の話を持ってくる。
だが、自分がメジャーに行けなかったのは人種差別のせいだと信じているトロイは、その話を蹴ってコーリーには手に職をつけるよう強要する。
トロイが以前にもうけた息子ライオンも、もう34歳にもなるのに定職に就かずバンドで生計を立てようとしているような変わり者で、トロイはコーリーにはそういう生活を送ってほしくないと思っているのだ。
トロイはコーリーに手伝わせて庭にフェンスを作ろうとしているが、それは何を囲い込むためのものなのだろうか。あるいは何を守ろうとしているのだろうか......