英国の押しも押されぬ大女優となったエマ・トンプソン。
最近、彼女が主演の「ヒトラーへの285枚の葉書」(「アローン・イン・ベルリン」(2016)ALONE IN BERLIN )という第2次大戦の真っ只中のドイツはベルリンで、ドイツ人の夫婦を、こともあろうが、アイルランド人のブレンダン・グリーソンと演じる映画を見ました。

二人とも、英国人俳優ならではのアクセントを駆使して、ドイツ語訛り英語でセリフを言うのが、最初はちと鼻につきましたが、二人の迫力の、しかし、静かで、力強さが底にみなぎった演技力の吸いこまれました。

最初の場面は近所の世話焼き郵便配達が、運命の政府からの手紙をこの夫婦に届ける、と言う、誰もがその中身を察することが出来る兵士の死亡通知書です。

ひっそりと息子の帰還を待って暮らす夫婦は、悲しみをそれぞれ異なった反応で示し、エマは、全身で怒り狂って、しかし声はほとんど出さず、手紙を引き破ります。母親の絶叫が沈黙のうちに聞こえてきます。

夫は工場の中間職で、毎日決まった勤務を繰り返す、灰色の生活を送り、ますます生きる目的が薄れていきます。思いついて、反ヒトラー、反戦のメッセージを書いたハガキを街のあちこちに置く独自の犯行運動を始めるのですが、何しろ町中にナチの監視が敷かれている中、見つかれば死刑の危険な行為なのです。見るに見かねた妻も夫の運動を助けるようになり、二人で尾行されないよう、見つかりそうになると妻が機転を働かせてその場を救ったりと、沈黙の使命を続けます。

ベルリンの警察の警部がダニエル・ブリュールで、ナチのゲシュタポに圧力をかけられながらも、独自の捜査に励むのですが、なかなかうまくいきません。

監督はフランスのハンサム俳優、ヴァンサン・ペレーズで、彼はドイツとスペインの血を引き継いでいるため、是非ともこの実話の映画化を叶えたいとメガホンを取ったとか。
ちなみに、ダニエル・ブリュールも同様に、ドイツとスペイン人の両親を持ってます。

エマはほとんどセリフを言わずに、表情も動作も極力抑えての劇的な演技を見せてくれます。夫役のブレンダンも大柄な体をできるだけ目立たないように秘密作業をする絶望的な父親を静かに熱演して、怒りと悲しみの極限を雄弁に見せてkます。

最近は「ブリジット・ジョーンズの日記3」(2016)の産婦人科医のような喜劇タッチを加える脇役が多かったエマの久しぶりのドラマティック演技が素晴らしいのです。

2003「ラブ・アクチュアリー」の頃。「ハワーズ・エンド」(1992)からのツーショットがたくさんあるのですが、 今回は見つからないので見送りです。意外に大柄でしょう!

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