たとえばTitan(タイタン)はオリンポスの12神に先立つ古代の神の名称。タイタンの12神はオリンポスの12神との10年にわたる戦争にやぶれ、タルタロスの深淵に閉じ込められてしまうが、それでも現代英語におけるtitanは『巨大な』『力強い』などのイメージがあり、偉大なものの比喩としてよく使われる言葉。タイタニックの語源もtitanからきている。映画「タイタンの戦い」にそのタイタンが主人公で登場するが、いまも古代神の中で人気が高いようだ。
映画「300」でペルシア帝国の船団が嵐に襲われるシーンで『ゼウスが雷で空を突き刺す』というセリフが出てくるが、ゼウスがギリシア神話の主神で天空や宇宙、神々、人類すべての支配者ということを知っていると、これがスパルタン戦士に天空の神ゼウスが味方したことがわかる。映画「トロイ」にも登場するアキレス(ブラッド・ピット演)はトロイア戦争で戦った英雄だが、『アキレス腱』という言葉がこの神話に依頼していることも有名。アキレスの唯一の弱点は彼が生まれた時にテティスが彼を不死身にしようとしたが、かかとを持って不死の水に浸されなかったため、そこだけ不死になれなかったという。
こうしたギリシア・ローマ神話の『常識』を一冊にまとめた新刊本『ギリシア・ローマ神話を知れば英語はもっと上達する』(西森マリー著/講談社・刊)を読めば、映画に限らず、現代ニュースでもしばしば神話の言葉・キャラクターが登場することがよくわかる。日本人が半ば常識のように日本昔話や戦国時代の英雄伝を知っているのと同じような感覚だ。元ネタを知っていると、外国映画が何を言いたいのか、その真意を推し量ることが容易になる。古代神話の常識は憶えておいて損はない。