「アイアンマン」の監督による低予算映画
これは2015年に日本公開された「アイアンマン」のジョン・ファヴロー監督&主演作。先日ユーカリが丘のイオンシネマで再上映されていて再見したが、最初に見た時より面白かった。その時の気分次第なのかもしれない。
ロサンジェルスのレストランで腕を振るう一流シェフのキャスパーが、店のオーナーの意向に逆らって、人気ブロガーを店の定番でなく、新メニューで感嘆させようとしたことが裏目に出て、オーナーと対立。結局感情的に辞職してしまうのだが、これが彼の第二の人生の出発点となった。
キャスパーを演じているのはファヴロー監督自身。シェフらしい立派な体格と、中年の悲哀も感じさせ適役だ。さらに店のオーナーは名優ダスティン・ホフマン、店のマネージャーにスカーレット・ヨハンソン、後半出てくるキャスパーの元妻の前夫がロバート・ダウニー・ジュニアなどなど、「アイアンマン」の監督作だけあって豪華俳優が友情出演しているのも楽しめる。
大作にはない人間味に溢れた感動編
キャスパーは美人の元夫人イネス(ソフィア・ベルガラ)とは、いまも気軽に話せる仲で、10歳の息子パーシーも彼になついている。だが仕事一途の彼は私生活がうまくいかず、離婚し、息子との間にも変な溝がある。
イネスのマイアミへのお里帰りにつきあったキャスパーは、そこでキューバンサンドイッチと運命的な出会いをし、シンプルなキューバ料理をメインにした移動販売を思いつく。おんぼろフードトラックを改装し、元同僚のマーティン、そしてパーシーと三人でマイアミからロサンジェルスへ、フードトラックでの旅へ。彼の作るキューバサンドはどこへ行っても大好評。やがて、キャスパーの心に今まで感じたことのなかった考えが浮かぶ……
元々はファヴロー監督が大作映画を撮るようになる前に企画していた案を基にした作品で、バイクとカメラだけで撮ったような「イージーライダー」的な低予算映画を作りたかったのだとか。たしかに大作映画にはない、人間味に溢れ、中年男の成長物語でもあり、家族の絆の再生映画でもある。何よりキューバサンドがすぐに食べたくなるような、食の映画としても優れていて、ノリノリのラテン・ミュージックが気分を高揚させてくれる。
見逃した名作を近くの劇場で
見逃していた名作、公開は終わったけど、もう一度見直したい感動作が劇場でかかっていたら嬉しいもの。イオンシネマでは『シネフィル・セレクション』と題して全国の系列館で「シェフ…」を含む6作品を上映中という。ぜひ近くのイオンシネマで新しい感動に出会ってみたいものだ。