カーチェイスや銃撃戦、生身の肉体バトルなど壮絶なアクションを自らこなし、正義感溢れるキム刑事を魅力的に演じたカン・ドンウォンに、今作の撮影秘話やイ・ビョンホン、キム・ウビンとのエピソード、更に最近観て面白かった映画などを聞いた。
【ストーリー】
金融投資会社のトップに君臨するチン会長(イ・ビョンホン)は、カリスマ的なテクニックで集めた多額の投資金で裏金を増やし、国の権力者たちへ賄賂をばらまきビジネスを拡大してきた。知能犯罪捜査班のキム・ジェミョン刑事(カン・ドンウォン)は、その悪徳行為を追跡するなか、会長の側近で天才ハッカーのパク・ジャングン(キム・ウビン)に“捜査に協力すれば自由の身にする”と司法取引を持ちかける。ところがチン会長は周囲に裏切り者の匂いを感じ取り、警察の猛追をかわし大金と共に忽然と姿をくらましてしまう。1年後、チン会長の遺体が外街で発見されたというニュースが国中を震撼させるが……。
怪我を負っても撮影を続行した迫真のアクションシーン
ーー今まで演じた役の中で最も難しいと感じたそうですが、どのような部分に難しさを感じたのでしょうか?
「まず、個人的な思いを持った復讐劇ではないので、役の感情を掴むのが難しいと感じました。キム刑事は社会的正義を全うしなければいけないという使命はありますが、キャラクターとしてはどこか掴みどころがないんです。あと、僕が今まで演じてきた役の中で最も男性的でしたし、キム刑事はハキハキと早口で話すという設定を自分で決めてしまったので、そういう人間に見せる苦労は多少ありましたね。僕はそこまでマッチョではないですし、どちらかというと普段は静かにゆっくり話す方なので(笑)」
ーーマッチョな体を作るために10キロ体重を増やしたりボクシングのトレーニングをおこなったそうですね。
「そうですね。監督からそういった要望があったので、運動を沢山したりボクシングのトレーニングを受けました。あと、台詞のテンポ感を調整できるようにリズムに関しても訓練しました」
ーーアクションシーンでは怪我をされたそうですが、どのような撮影だったのでしょうか?
「フルショットで映るシーンはアクションスタントの方が演じてくださっているところもありますが、顔が映るシーンなどなるべく自分で演じたかったんです。カーチェイスシーンでキム刑事が運転している車の窓ガラスが割れる場面があるんですけど、撮影中にバーンと音がしてガラスの破片が首と顔に刺さってしまって…(苦笑)。それでも撮影を続行したのですが、カットがかかって車の外に出てすぐにショーウィンドーに映った自分の顔を見たら血だらけになっていたんです…僕はもはやここまでかなと思いました(笑)。これにはスタッフもかなり青ざめていましたけど、そのあと治療を受けて無事に治ったのでホッとしました」
ーーイ・ビョンホンさん、キム・ウビンさんと共演されてみていかがでしたか?
「キム・ウビンさんと一緒のシーンが多かったので、二人でよく食事に行ったり運動したりしました。イ・ビョンホンさんは同じシーンの撮影ではない日に突然現れて、お酒や食事をご馳走してくださいました」
ーー食事の席ではどんな会話をされたのですか?
「英語の勉強について三人で話していた時に、ビョンホン先輩が“英語はアメリカで本場の発音を習わないといけないんだよ”とおっしゃったんです。僕は軽いジョークのつもりで“でも先輩、英語の本場といえばイギリスではありませんか?”と言ったらウビンさんに“そんなこと言ってはダメですよ”と真面目に突っ込まれてしまって(笑)。お二人との共演は刺激になりましたし、楽しい時間を過ごさせて頂きました」
ーーちなみにドンウォンさんがご自身で“○○のマスター”だと思えるものはあったりしますか?
「難しい質問ですね(笑)。趣味においても仕事においても胸を張って“○○のマスターです”と言えるものはないかもしれません」
ーーインテリアを手掛けたり家具を作ったりされますよね。そういった分野を極めてらっしゃるイメージもありますが。
「インテリアや家具は趣味でやっていますが、ジョージ・ナカジマ(家具デザイナー、建築家)さんぐらいにならないとマスターとは言えないかなと。誰よりも得意なものがあるとしたら…インターネットの検索ぐらいでしょうか(笑)」
ーーちなみにご自身のことも検索をされたりするのでしょうか?
「します! でもそれは仕事でもあります。世間の人達が僕のことをどんな風に思っているのかを知ることも大切なんじゃないかと。もちろん書き込まれた意見が全てではないと思いますし、悪いことが書いてあったら“見返してやるぞ”なんて元気が出たりします(笑)」
“有名・無名問わず色んな監督の作品を観ます”
ーー『MASTER/マスター』はアクションクライムムービーですが、ドンウォンさんのお好きなクライムアクションムービーを教えて頂けますか。
「『ベイビー・ドライバー』を観たんですけど凄く面白かったです。あまりにも良かったので腹が立ったりして(笑)。カーチェイスシーンも見事でした」
ーーアジアの作品でお好きな作品は?
「日本映画で好きなのは『嫌われ松子の一生』や是枝裕和監督の作品です。ただ、最近は韓国で日本映画があまり上映されないので、観る機会が減ってしまいました…。韓国映画で好きなのは『殺人の追憶』と『グエムル -漢江の怪物-』です」
ーー敬愛しているハリウッドの監督はいますか?
「沢山いるので…すみません、絞れないです(笑)。有名・無名問わず色んな監督の作品を観るのですが、最近は『ウインド・リバー』というジェレミー・レナーさんとエリザベス・オルセンさんが共演した犯罪スリラーが凄く面白かったです。『シカリオ(邦題:ボーダーライン)』の脚本家テイラー・シェリダンさんがご自身で脚本を書かれて監督もされた作品なんですよ」
ーー今まで様々な役を演じてこられたドンウォンさんですが、今後挑戦してみたい役柄はありますか?
「特に演じてみたい役柄はなくて、才能のある方と一緒にお仕事できるならどんな役にも挑戦してみたいと思っています。それはデビューの頃から変わってなくて、こういうキャラクターを演じたいというのは特に無いんです」
ーー日本でのファンクラブ発足や『ゴールデンスランバー』の韓国リメイクへの出演が決まるなど日本のファンも喜んでいると思います。最後にメッセージを頂けますか。
「日本のファンの皆様にはいつも感謝しています。これからも皆さんと会える機会が増えるように一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いします!」
(文:奥村百恵)
監督・脚本:チョ・ウィソク
キャスト:イ・ビョンホン、カン・ドンウォン、キム・ウビンほか
配給:ツイン
TOHOシネマズ 新宿ほか、全国公開中!
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