非常に稀な病気にかかった女性スザンナ・キャハランを演じたクロエ・グレース・モレッツは、役に決まってから撮影に入るまで短い期間しかなかったという。
『決まったのはかなり急だったわね。撮影開始の三週間前ぐらいだったわ。元々この企画には興味を持っていたんだけど、当時の私は若すぎてこの役を演じられる年齢じゃなかったわ。でも、本格的にこの映画が動き出した時には十八歳になっていて、役がこなせるようになっていたの。プロデューサーを務めたシャーリーズ(セロン)とは「ダーク・プレイス」で共演したばかりで、彼女の方から電話をくれたのよ。ジェラード(バレット監督)とはスカイプで話をしてすぐに意気投合したの。キャラクターをどう描くかについて、同じ考えを持つことができたのよ』
役作りの過程の中では、スザンナ本人が病状に苦しむ様子を写した記録映像も見た。
『不思議なのよね。昨夜ジェラードの部屋に行って、症状の出たシーンを演じている私の映像を見たんだけど、スザンナに会った後に彼女の映像を見た時と同じように感じたのよ。スザンナはとてもかっこよくて、優しくて、私は一人の人間として彼女のことが心から好き。でも画面の中で病院にいるスザンナは、誰か別の人のように振る舞っているの。見た目まで本人じゃないみたい。完全な別人。そして、私の映像も同じだったのよ。私のは演技だけど、それでも全く別人のように見えた。あの状態になると、すべてが機能しなくなるの。正しい答えは一切出てこない。顔も身体も以前と同じようには動かない。奇妙なことよ』
病気の症状である内面的な混乱を演じるのはもちろん難しい部分があったという。
『おかしな話だけど、正直言って、自分が何をしているかを把握できてないの。それがこの映画なのよ。シーンに入る前に、こんなに何も分からないという経験はなかったわね。これほど、そのシーンに対する準備をしないで臨んだことはなかったの。最初のテークの前には、そのシーンでスザンナがどうするかが分からないからよ。最初のテークが一番リアルで一番生々しいの。ただ直感的にやるしかないの。本当にそのシーンが終わるまで、自分が何をやっているか分からないの。こんなことは初めてよ。最高にクレージーな体験。まるでアクターズ・スタジオの巨大なワークショップみたいな感じだったわ』
そしてこの映画は病気との闘いの映画であるとともに、無条件の愛についてのラブストーリーでもあると語る。
『恋人のスティーヴンは絶対にスザンナを見捨てなかったわけだから、美しいラブストーリーよね。スザンナの病気の後、五年もつき合って、ついに結婚したんだから、素敵な話だわ。演じる人間として、そんなストーリーを描けるなんて、本当に心が温かくなる』