リアルヒーローを描き続けてきたイーストウッド監督の集大成
クリント・イーストウッド監督は、「硫黄島」2部作でハリウッド初となるアメリカと日本、ふたつの視点から戦争を浮き彫りにした。『アメリカン・スナイパー』では、最強の狙撃手と呼ばれた男の心の葛藤を内面から描き出し社会現象化し大ヒット。咄嗟の判断で多くの生命を救った機長が、一転、殺人容疑者とされた『ハドソン川の奇跡』では、事件の裏側をヒューマンドラマに昇華させた。近年、リアルヒーローを描き続けてきたイーストウッド監督の集大成と位置づけられる作品が『15時17分、パリ行き』だ。
この映画の主人公を演じるのは、スペンサー・ストーン、アンソニー・サドラー、アレク・スカラトスの3人。映画初主演となる全く無名の若者たちは、実際にテロに立ち向かった本人たち。幼馴染みとして成長した3人は、2015年8月、休暇を利用してヨーロッパ旅行に出かけた。だが、パリに向かう3人を乗せた特急列車タリスがフランス国境内に入った瞬間に事態は一変。この時、車内では554人の乗客全員をターゲットした無差別テロ、通称《タリス銃乱射事件》が発生。トイレから漏れる自動小銃AK-47の装填音に気づいたフランス人乗客が取り押さえようとするが、イスラム過激派の犯人が発砲、被弾した乗客が重傷を負った。乗務員室は鍵で閉ざされ、乗客たちは絶体絶命の危機に瀕していた。極限の恐怖と緊張感の中、幼馴染の3人は、なぜ、テロに立ち向かうことが出来たのか…。
今回解禁された映像では、イーストウッドが「意識して英雄をとり上げてはいないが、普通の人々による偉業は興味深いものだ。主人公の3人は幼馴染で普通の若者たち。彼らは咄嗟の行動が要求された。ある日、パリ行きの列車に乗っていた500人の命を救うためにね」と、列車内で突然に起こったテロに、勇気を持って立ち向かった3人の若者たちに魅せられたことを告白している。またキャスティングについては「数多くの俳優たちと会ったが、実際の体験者に演じてもらうことが面白い試みだと思った」と微笑む。そして前代未聞のこの挑戦に、「彼らはやる気になってくれて、天性の才能を発揮し、事件当時の再現でカタルシスも得られた」と自信を見せている。
リアリティを徹底的に追求したイーストウッドは、主演の3人だけではなく、当時列車に乗り合わせた人々も多数起用して、事件が実際に起こった場所で撮影に臨んだ。監督が「これは実際に彼らが体験した物語だ。真実なんだ」と語る通り、昨年のテロ発生件数は世界で114件(11/7まで。公安調査庁調べ)起きている。いつ、どこで、誰もがテロに直面してもおかしくない今、ついに巨匠クリント・イーストウッド監督が初めて無差別殺傷テロを描く。当事者の目線からテロの時代を生きる私たちに問いかける真実と現実。87歳を迎えても尚、現役の監督として新たな挑戦を続けるトップランナーの最新作は、今を生きる全ての人々に捧げられた物語なのだ。
15時17分、パリ行き
3月1日(木)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT INC.