2018年度アカデミー賞最有力「スリー・ビルボード」とは
最愛の娘が殺され、事件から7か月しても犯人が捕まらないことに業を煮やす母親。警察に抗議するため彼女が出した三枚の広告掲示板が、のどかな田舎町に不穏な嵐を巻き起こしていく。被害者遺族と警察の対立、そしてそこから広がる波紋を、ダークなユーモアとともに描くクライム・サスペンス。ゴールデングローブ賞で最多四冠、トロント国際映画祭で観客賞を受賞し、本年度アカデミー賞の本命の一本と目されている。
怒りのエネルギーに満ちた〝闘う母親〞を演じるのは「ファーゴ」のアカデミー賞女優フランシス・マクドーマンド。警察署長役には「猿の惑星:聖戦記」のウッディー・ハレルソン、彼の部下には「コンフェッション」のサム・ロックウェル。監督はイギリス演劇界で頂点を極めたのち映画界に進出し、長編映画デビュー作『ヒットマンズ・レクイエム』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされた注目の才能、マーティン・マクドナー。
アメリカの片田舎の大通りに並ぶ3枚の看板に、ある日突然、現れた真っ赤な広告。それは、何もない田舎町に吹き荒れる、予想もしない嵐の前触れだった──。
アメリカはミズーリ州の田舎町エビング。さびれた道路に立ち並ぶ三枚の広告看板に、ある日突然メッセージが現われる。『レイプされて死亡』『なぜ? ウィロビー署長』『犯人逮捕はまだ?』と。それは、七か月前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス)が、一向に進展しない捜査に腹を立て、無能な警察に送った〝挑戦状〞だった。
いち早く看板を発見したディクソン巡査(ロックウェル)に報告を受けた警察署長ウィロビー(ハレルソン)は一人でミルドレッドを訪ね、捜査状況を丁寧に説明する。だがミルドレッドは徹底抗戦の姿勢を崩さない。町の人々は署長を敬愛しているため、ミルドレッドを翻意させようとするが、かえって彼女から手ひどい逆襲を受けてしまう。
娘のために正義を求めながら、ミルドレッドは息子(ルーカス・ヘッジズ)にも反発され孤立無援に。そしてこの騒ぎに関わった人々の人生をも変える衝撃の事件が勃発する。
注目ポイント3選!
01: アカデミー賞最有力の一本
本作が受賞したトロント国際映画祭観客賞(最高賞)はアカデミー賞作品賞と重なることも多い重要な賞。2017年の「ラ・ラ・ランド」は惜しくも受賞を逃したが、今回はいかに?
02: F・マクドーマンドの役作り
F・マクドーマンドが役作りの参考にしたのは西部劇のアイコンであるジョン・ウェイン。常に戦闘態勢にある役の参考になるような女性のアイコンが見つからなかったからだという。
03: 重要な役割を担った“エビング”
本作の舞台となるエビングという街はじつは架空の場所。実際の撮影はノースカロライナのシルバという街で行なわれたが、そこには監督が理想とする伝統的な本通りが残っていた。
「スリー・ビルボード」
2018年2月1日公開
監督・脚本・製作:マーティン・マクドナー(『セブン・サイコパス』)
出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ、ルーカス・ヘッジズ
原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
配給:20世紀フォックス映画