成田 陽子(なりた・ようこ)
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて37 年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。SCREEN誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
今回は、ジョン・ボイエガの素顔に迫ります。
英ロンドン生まれだが両親はナイジェリア出身で両国の習慣を取り入れて育った
「僕の両親はナイジェリア人だから、ナイジェリアには何度も行ってるし、つい先月も訪れたんだよ。英国のロンドンで生まれて育ったとはいえ、僕にはナイジェリアの血が流れているから食べ物も習慣も両方の国のものを取り入れて、どちらも大好き。ま、イギリスの食べ物はだいたい味もそっけもないから、ナイジェリアの方が美味しいよね」
と苦笑しながら話すジョンは、「スター・ウォーズ」シリーズのフィン役で一躍有名になったとはいえ、7歳の時から舞台に出て、演技の基礎をしっかり身につけた舞台俳優出身。
サウス・テームズ・カレッジ時代にはシェークスピアの古典舞台劇「オセロ」の主役も演じたし、なんとタップダンスもお得意とマルチタレントで、すでにプロデューサーとして今年公開の「パシフィック・リム:アップライジング」を主役を演じながら制作も手がけたのである。
まずは「スター・ウォーズ」の新作「最後のジェダイ」の話を聞いてみよう。
『前作のJ・J・エーブラムズはそれまでのスター・ウォーズの流れを汲んで、伝説に沿ったストレートなドラマを作らねばならなかったけれど、今回のライアン(ジョンソン)監督は、自由闊達にオリジナルでユニークなドラマに仕立て上げてよいと言われたから、彼の才気が溢れたスター・ウォーズ・ユニバースを広げた映画になっている。
どちらの監督もすごい才能があって、それぞれ違うやり方だけれど、僕は二人のベストの監督のもとで働く幸運を得たと言えるね。二人とも、スマート・デュード Smart Dudesと呼べるよね。ライアンは僕に記念だからとフィンの銃をくれたんだよ。それから、僕のことをBiohexicript(新造語)と呼んで、何かとこの舌がもつれそうな、長い名前を使うんだ』
育った街の近所の子供たちからもらった嬉しいプレゼントとは
『今回はフィンが前より強い存在になったから、すごく演じがいがあったし、共演者たちとも親しくなって、楽しい撮影だったね。キャリー・フィッシャーともたくさん一緒の出番があって、それぞれが素晴らしい思い出だけれど、今はまだ彼女のことをあまり話したくないんだ。まだまだショックの余韻が残っていてね。
「スター・ウォーズ」の音楽がまた大好きで、夜中の2時にお腹が痛くなったりした時、彼のサウンドトラックを聞くと痛みが消えていくような気がするから、良ければ試してみるといいよ』
3月17日の25歳のお誕生日には、近所の子供達から素晴らしいプレゼントをもらったという話を始めた。
『僕がジェダイの衣装を着ている絵で、「ジェダイ・フロム・ペッカム」Jedifrom Peckham と書いてあるんだ。ペッカムは僕の育った町で、そこに住む子供たちが一生懸命に作ってくれてね。
自宅の壁にかけて家にいる時は毎度眺めては、子供達の心を思って、身を引き締めて、謙虚さを失わずに、スターぶったりせず、いつまでも自分の出身地の身分を忘れず、正直なジョンでいよう!と決意を新たにするのだよ』
なんとも心温まる贈り物ではないですか。
『コミコンに出席して、大勢のファンに囲まれた時は高校時代の人気生徒たちのテーブルに加わったような気分になった。僕はもちろん彼らのテーブルに座ることなど一度もなかったけれどね。
最近は街などで認められるようになって、「スター・ウォーズに出ていたジョンじゃない?」なんて聞かれると「しょっちゅう似ているって言われるんだ。ジョンって良い俳優だよね!」なんて言ったりする。いくら映画に出るようになって、スターの仲間入りをするようになったからって、僕自身は全く変わってないんだよ。スケジュールが変わっただけさ』
健気で、心意気の高いジョンのこれからが楽しみではありませんか。