毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が〝最高品質〞の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画はアカデミー賞主演男優賞とメークアップ&ヘアスタイリング賞の二部門を制した「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」です。

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編集部レビュー

「これはもはや『演じる』ではない」@近藤編集長

メリル・ストリープが演じた老サッチャーを見た時もかなり驚いたが、今回のゲーリー・オールドマンによるチャーチルにも腰が抜けるほど驚かされた。この二つの何がすごいって、そこにメリル・ストリープあるいはゲイリー・オールドマンが全くいないのだ。消えている、というべきか。メーキャップの力とかを差し引いてなお、「なる」ことの凄まじさをまざまざと見せつけてくれる。そう、「演じる」ではなく「なる」なのだ。

画像: 「これはもはや『演じる』ではない」@近藤編集長

ちょうど同じ頃、イーストウッドの「15時17分、パリ行き」を見て、主人公を「演じた」本人たちがあまりに上手で、俳優って何?と考えていた矢先。その答えがゲイリー・オールドマンだったのかも。それにしても、グローバリズムが解体し、世界各国で強い指導者が求められているこのタイミングでチャーチルの映画というのは、何かキナ臭いものを感じたりして。

「エンタメ映画として一級品の出来栄えに」@疋田副編集長

世界のCEOが選ぶ“最も尊敬するリーダー”に選ばれたチャーチル。なぜ彼がそれほど尊敬され、伝説となったのかを解き明かすのがこの作品だ。『政治映画だから難しそう』という心配はまったく無用。首相就任から一か月の“最も困難な時期”に焦点を絞ったことで、内容もわかりやすくサスペンス性は増し、エンタメ映画として一級品の出来栄えになっているからだ。奇しくも映画「ダンケルク」の裏側を描いているのも面白い。

政治家チャーチルが“武器”としたのは、その言葉の力。彼はノーベル文学賞受賞者でもあり、名言を多く残したが、決して難解な言葉は使わなかった。なぜか? それは彼がメッセージを届けたい相手は国民ひとりひとりだったからだ。最後の名演説はもちろん、国民の声に耳を傾けたチャーチルを寓話的に描く電車のシーンにも胸を震わされた。

「演技を忘れて一人の人間の姿に引き込まれていく」@阿部編集部員

あくまで個人的意見ですが、実在の人物を演じる映画って、似てるか似てないか演技合戦みたいになってしまって、正直そんなに好きなジャンルではなかったり…。その上、外見がまるで違うゲイリー・オールドマンが演じるってどういうこと!?
それもあって、初めはメイクアップの部分ばかり気にしていましたが、チャーチルの人間味溢れる姿や一国の首相でも私たちと同じように焦り、弱さも見せるのだということを知るうちに、これが演技であることを忘れるくらい、一人の人間の姿にどんどん引き込まれていくんです。

画像: 「演技を忘れて一人の人間の姿に引き込まれていく」@阿部編集部員

実在の人物にもう一度息を吹き込み、史実だけではなく生身の人間の姿を見せる。ゲイリーが改めてその面白さを教えてくれたような気がします。なぜ何時間もかけて、外見を変えてまでこの役に挑んだのか。答えはきっと映画を見たらわかるはずです。

「政治に興味が無くても、色んな角度から楽しめます!」@中久喜編集部員

政治家の映画って、ちょっと堅くて取っつきにくかったり、似たようなオジさんがやたら出てきて混乱したりしませんか? そこは文芸作品の名手ジョー・ライト監督。ただの伝記映画にするのではなく、ダンケルク撤退までの数週間のみにスポットをあて、チャーチルと妻や、タイピストの女性との掛け合いを織り交ぜながら、堅くなりがちな題材を温かみのある情緒溢れる作品にしあげています。

また、ゲイリーの名演も本作の魅力。昼間からお酒を飲んだり、嫌われ者とぼやいたり、時にコミカルにも見える演技で、繊細で型破りなんだけどかわいらしくってどこか憎めない、人間味のあるチャーチル像を作り上げています。

そして、その名演を引き出したのが辻さんの特殊メイク。ゲイリーの原型をとどめていないぐらいの似せっぷり、ぜひ劇場の大スクリーンで堪能して下さい!

「祝!オールドマンのオスカー主演男優賞!」@松坂編集部員

とにかくゲイリー・オールドマンの成り切りっぷりがすごい。特殊メーキャップ・アーチストの辻一弘のおかげもあるだろうが、辻がやってくれなければチャーチルは演じないと言ったオールドマンも慧眼だった。これぞ役者魂というところではないだろうか。

画像: 「祝!オールドマンのオスカー主演男優賞!」@松坂編集部員

また、「ダンケルク」を見ていたせいもあるだろうが、当時の英国の状況がよく分かり、チャーチルが政界でどれだけ嫌われていたかも伝わってくる。救国の英雄ではあるのだが、人間的にはパーフェクトな人物ではなかったということだ。そこもまた魅力、という人物ではあるのだが。

脇のリリー・ジェームズ、クリスティン・スコット・トーマスの存在も映画を膨らましている。どこまで史実に正確に描いているかは分からないが、この二人のおかげで単なる英雄伝説、史実映画に終わらなかったと言えるだろう。

「“英雄”を人間臭く演じるゲーリーは名演の一言」@米崎編集部員

チャーチルが登場する映画はいくつか見てきたが、数年前にブレンダン・グリーソン主演のTVムービー「チャーチル 第二次大戦の嵐」を見て、この人は本当に英国民に愛されている政治家だなと思った。でも今回はそれ以上に、愛すべきキャラに仕立てられている。しかも彼がどのようにして首相になったかの経緯など、とても興味深い人間として描かれているので、従来のチャーチル作品の中でも頭抜けて面白い伝記映画になった。

あの「ダンケルク」に重なる時期が映画の主要舞台となるのも、面白さの要因の一つで、歴史的事件の舞台裏を描きながら、チャーチルの豪快で繊細な人物像を紹介していくため、ますます親近感がわく。そんな“英雄”を人間臭く演じるゲイリー・オールドマンは名演の一言。単なる歴史上の偉人ではなく、血の通った人間として彼を演じることで大成功を収めた。

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