宇宙を守る任務を帯びたスペシャルエージェントのヴァレリアンを演じるのは、『ディーン、君がいた瞬間』や『アメイジング・スパイダーマン2』など繊細なキャラクターを演じることが多かったデイン・デハーン。デインは今作で新たな魅力を発揮している。ヴァレリアンの頼れる相棒にしてクールビューティーのローレリーヌを演じるのは、トップモデルとしても活躍している女優のカーラ・デルヴィーニュ。
プロモーションのため来日したリュック・ベッソン監督に、本作について語ってもらった。
【ストーリー】
宇宙に進出した人類はさまざまな宇宙人と遭遇。平和と結束のメッセージを込めて遠い宇宙に送られた“アルファ宇宙ステーション”は長い年月を経て拡張を続けて巨大化。あらゆる種族が共存する“千の惑星の都市”として銀河にその名を知られていた。
西暦2740年。連邦捜査官のヴァレリアン(デイン・デハーン)とローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)は宇宙の平和を守る任務に就き、銀河をパトロールして回っている。ある日、2人は砂漠の惑星キリアンにあるビッグ・マーケットへの潜入という極秘ミッションの任務にでかける。そのミッションとは、宇宙各地から訪れる観光客と犯罪者が入り乱れる混沌とした巨大市場で、闇マーケットに出回ってしまった生物“ミュール変換器(コンバーター)”の最後の一匹を捕獲することだった。二人は無事にミュール変換器を奪取し宇宙ステーション“アルファ”に届けるが…。
この映画では“愛するということはどういうことなのか”を
ローレリーヌがヴァレリアンに教えているんです
ーーフランス語圏の漫画バンド・デシネ「ヴァレリアン」が原作ですが、バンド・デシネの魅力をどんなところに感じますか?
「例えば小説を読んでいて“庭に花が沢山植えられていた”と書かれていたら、僕自身の祖母の庭や祖母のことを思い出してしまうんです。本の世界から色んなことを想像して気が散ってしまうので、2時間かけても10ページが読み進めないこともあって(笑)。でもバンド・デシネのような漫画は、描かれている世界観の中に素直に入り込むことができるんです。逃避することができるとも言えるけど。それが僕にとっての一番の魅力です」
ーー監督の作品には強い女性が多く登場しますが、意図的にそういう女性を登場させているのでしょうか?
「僕にとってはあなたが言ったように強いと言われている女性が普通の女性像なんです。というのも、幼い頃の自分にとって最初の女性像は母親でした。うちは父親が出ていってしまったこともあって、母が一人で僕を育ててくれました。仕事をしながら僕を懸命に育ててくれて、尊厳も失わず、華奢なのにとても強い女性でした。そして10才の頃に出会った「ヴァレリアン」のローレリーヌが母親の次に“女性とはこういうもの”という強い女性像を抱かせてくれた存在です。それ以降も僕はゴージャスで強くて、才能溢れる女性としか出会っていないんです。男性に関してはバカで愚かで才能のない奴に沢山出会ってきたけどね(笑)」
ーー誰のことかは聞かないでおきますね(笑)。ローレリーヌですが、人に対する愛があるからこそ強いキャラターでいられるのではないかと感じました。
「まさにそうです。この映画では“愛するということはどういうことなのか”をローレリーヌがヴァレリアンに教えているんです」
ーーヴァレリアンを演じたデイン・デハーンですが、個人的に彼の大ファンなので、監督の作品の世界観でどんなキャラクターを演じるのかかなり前から楽しみにしていました!
「僕も彼がヴァレリアンを演じることが決まってからとてもワクワクしていたよ!」
ーーデインは今までヴァレリアンのようなキャラクターは演じてなかったように思いますが、彼が演じることで原作のキャラクターから肉付けされた部分などはあったのでしょうか?
「特にそういったことはなかったです。原作のキャラクターが50%で、デイン自身と混ざり合ってできたものが映画のヴァレリアンという人物です。完成したあと思ったのは、他の人がヴァレリアンを演じているのが想像できないということ。例えば、『フィフス・エレメント』のコーベン・ダラスという役は最初はメル・ギブソンにオファーしていました。でも彼は自分の作品の監督がしたかったこともあって、かなり悩んだ結果ノーと言いました。それでブルース・ウィリスに決まったんですけど、いまとなってはブルース以外にあの役はイメージできないですよね。それはきっとコーベン・ダラスというキャラクターとブルースがミックスしてひとつの人物になったからだと思います。そういう意味でもデインは役としっかりとミックスしたと言えます」
僕とデインとカーラの3人でいつも一緒に食事をしていましたし、
家族のようなアットホームな雰囲気の現場でした
ーー彼(デイン)はインスタでオフショットの写真をアップしていて、楽しそうな現場の雰囲気が伝わってきました。
「ファミリーと言えるような環境だったと思います。例えばアメリカの撮影現場では、エージェントやパブリシスト、アシスタント、エグゼクティブプロデューサー、ドライバーなどもの凄い数の関係者がいるけれど、今作の現場の撮影以外の時間では僕とデインとカーラの3人だけということも多かったんです。いつも一緒に食事をしていましたし、家族のようなアットホームな雰囲気でした」
ーー食事中はどんな話をされたんですか?
「そりゃあもちろん撮影に関する話ですよ(笑)」
ーーデインから監督の過去の作品に関する質問などはありませんでしたか?
「そういう話もしなかったですね。例えば、船で海を渡っている時は船の先しか見えてないですよね。それと一緒で、木曜日は何を撮るとか、金曜日は何をするかとか、とにかく撮影に関することばかり話していました。彼らは剣の練習や体作りも必要だったので、アクションやエクササイズの話もよくしていましたね。ものすごく集中して撮影に挑んでいたと思います」
ーーもう少しキャストについてお伺いしたいのですが、監督が長年のファンだったというジャズミュージシャンのハービー・ハンコックが国防長官の役で出演していますね。
「14才の時からハービーの大ファンで、素晴らしいピアノ奏者です。でも今作では演奏をお願いしたわけではなくて、彼の顔が国防長官役にピッタリだと思って声をかけたんです(笑)。あと声も魅力的ですよね。それで“やってくれませんか?”と聞いたらハービーは“僕は役者じゃないよ”と。結果的に受けてくれたんですけど、現場で緊張されていたのでできるだけ居心地の良い空気を作って、“演じなくていいので国防長官になってください”とお願いしました(笑)」
ーーハービーやリアーナを起用したり、エンドロールでカーラが歌う『I Feel Everything』が流れるなど音楽ファンも楽しめる要素が満載ですが、中でも冒頭のシークエンスでデヴィッド・ボウイの『Space Oddity』が使われていたのが印象的でした。
「ある日車に乗っていたらラジオからデヴィッド・ボウイの『Space Oddity』が流れて、“あ、あのシーンにピッタリだな”とひらめいたんです。というのも僕の頭の中にはコンピューターが装備されていて、ピッと押すと僕の撮った映像が見られるんです(笑)。チェスのプレイヤーだってある程度のレベルになると盤無しで勝負しますよね。それと一緒で、映画の全体像が常に頭の中に入ってるから一瞬でひらめくんです。そのかわり映画以外のことは全て削除してしまうから、母親の電話番号もクレジットカードの番号すらわからないんですけどね(笑)」
(取材・文:奥村百恵)
■監督・脚本:リュック・ベッソン
■キャスト:ヴァレリアン:デイン・デハーン
ローレリーヌ:カーラ・デルヴィーニュ
フィリット司令官:クライヴ・オーウェン
バブル:リアーナ
客引きジョリー:イーサン・ホーク
国防長官:ハービー・ハンコック
ネザ軍曹:クリス・ウー
アイゴン・サイラス:ジョン・グッドマン
世界連邦大統領:ルトガー・ハウアー
■配給:キノフィルムズ/木下グループ
3月30日(金)より全国ロードショー
© 2017 VALERIAN S.A.S. - TF1 FILMS PRODUCTION