世界三大国際映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭がいよいよ2018年も開幕。世界各国の映画人が集う現地から岡田光由氏が最新レポートをお送りしていく。

コンペ部門には二人の日本人監督作品が

71回目を迎えたカンヌ国際映画祭が、5月8日から始まった。昨年の70回を節目に、今年は新たな1回目とばかりに様々な改革、改定を断行。映画というものに素直に向き合った原点に立ち返って、これまでのマンネリを打破し、新たなスタートを切る強い姿勢と意気込みが感じられた。

まずは、映画は劇場で観るという基本姿勢を貫き、ネットフリックスの作品を除外。さらにこれまでのごひいきフィルムメーカーや大御所監督など、イロメガネによる選定を外して公正な目で行なうことを実施。その結果がメーンのコンペティション部門でのエントリー作品に表れている。マイク・リーやラース・フォン・トリアーら常連監督たちが外れ、テリー・ギリアムやトリアーは特別上映に回った。今年の21本の作品の中では、是枝裕和(「万引き家族」)やジャ・ジャンクー(「アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト」)、マッテオ・ガローネ(「ドッグマン」)らお好み監督の作品が入っているが、初エントリーの監督作品が7本もある。「寝ても覚めても」の濱口竜介監督もその一人だ。昨年とはだいぶ変わった。

そのエントリー作品には、スパイク・リー監督の「ブラッククランスマン」や、「イーダ」のポーランド人監督パヴェウ・パヴリコフスキの「コールド・ウォー」が期待されるが、注目は元祖ヌーベルバーグの旗手ジャン・リュック・ゴダールの「イメージ・ブック」である。「さらば、愛の言葉よ」で審査員賞を受賞してから4年ぶりの新作。87歳ながら驚くべき創作意欲で、今年こそ御姿をカンヌに現してほしいと願うばかりだ。

画像: ケート・ブランシェット(中央)ら審査員たち

ケート・ブランシェット(中央)ら審査員たち

女性が審査員の過半数を占め、男性は控えめ?

さてカンヌは新たに若者たちが鑑賞できる“カンヌの3日間”を5月17~19日に設けた。18~28歳の若者たちが優先的に映画を鑑賞できるイベントである。
さらにプレス試写も正式上映前に行なわれていたのを、同時試写またはその後の試写に変わった。これはSNSの普及で正式上映前に作品の評判が出てしまうのを防ぐため。またカンヌでは映画のラストクレジットが出た途端に席を立ち上がって出ていく悪しき習慣がある。それも防ぐため、エンドロールが終わるまで席を立たないでと指令がでているが、アスガー・ファルハディ監督の「エブリバディ・ノウズ」の第一回目のプレス試写ではそれが効いていなかった。日本では当たり前のマナーなのだがね。
ともあれ、いろいろ変わって、リスタートのカンヌ。ケート・ブランシェットの審査員長に、クリステン・スチュアート、レア・セドゥら女性審査員が今年は過半数を占め、ドニ・ヴィルヌーヴやチャン・チェンら男性審査員たちは心なしか控えめであった。記者会見でもケートらが堂々と応答していたのが印象的だった。パルムドール受賞の行方も彼女たちにかかっていそうだ。女性躍進、応援のご時世、カンヌにもセクハラ防止のホットラインも開設されたという。オープニングセレモニーで、特別ゲストのマーティン・スコセッシ監督と一緒に、ケートが力強く開幕を宣言、女性の時代到来を予感させる光景だった。(岡田光由)

画像: 女性が審査員の過半数を占め、男性は控えめ?

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