はじめて国際タイトルに挑戦する、その歓喜の中で起きた大惨事
一昨年、ある飛行機事故のニュースがサッカー界のみならず、世界中を大きな悲しみに包んだ…。2016年11月28日ブラジル1部リーグ・セリエAのサッカーチーム【シャペコエンセ】の主力選手と首脳陣、そしてジャーナリストを乗せたチャーター機が、南米大陸選手権コパ・スダメリカーナの決勝ファーストレグへ向かう道中、コロンビアのメデジン郊外で墜落し、乗客77名中71名が命を堕とした。サッカーを愛する小さな街のクラブが、はじめて国際タイトルに挑戦する、その歓喜の中で起きた大惨事だった。
セレッソ大阪やジェフユナイテッド市原・千葉でプレーした経験のあるケンペスや、元柏レイソル所属で2016年チームキャプテンを務めたクレーベル・サンタナ、ヴィッセル神戸の監督を務めたカイオ・ジュニオールなど71名が亡くなり、生存者わずか6名の悲惨な事故・・・。大けがを負うも奇蹟的に生還したジャクソン・フォルマン(GK)、エリオ・ネト(DF)、アラン・ルシェウ(DF)の3選手を除いて、シャペコエンセ(以下、シャペ)は殆どの選手とチームスタッフを失った。
選手獲得やクラブの経営はどうするのか?合同葬儀の翌日、悲しみも癒えぬまま、シャペは新シーズン開幕へ向けてゼロからの再出発を余儀なくされる。選手はチーム再建のプレッシャーと、急速な変化に対応しきれず、またサポーターも旧チームへの愛着と新チームに対する過度な期待の狭間で葛藤し、ピッチの内外でいくつもの亀裂が走り、新生シャペは負のスパイラルに陥る…。しかし、彼らが再びそのアイデンティティを見つめ直し一致団結したとき、奇跡の快進撃が始まる…!
本作は、事故の翌年(2017年)にクラブ史上最高順位の成績を収め、復活を遂げたシャペを追ったドキュメンタリー映画。劇中、事故直前の機内で撮影された選手たちの笑顔は、その後の悲劇を知る私たちの胸に深く刺さる。
カメラは、かけがえのないチームメイトを亡くした喪失感に苦しみながら過酷なリハビリに耐え、チーム再建のシンボルとしての重責を担う3選手を中心に、遺族とクラブ経営陣の亀裂、航空会社の倒産で補償問題が進展せず、小さな子供を抱える未亡人たちの不安、事故を免れた既存選手の新チームへの戸惑い、勝ちに執着する新監督との軋轢、クラブを愛するサポーターたちのジレンマなど、各々の様々な葛藤を容赦なく捉えていく。そこから本当の意味で、選手、スタッフ、経営陣、街とサポーターが一体となり、“俺たち皆のシャペ (原題 「Nossa Chape」の意)”を復活させる姿に、観客は心を揺さぶられ、まるで家族ともいうべき絆の強さを感じずにはいられない。
わがチーム、墜落事故からの復活
7月6日(金)、新宿ピカデリーほか緊急公開
配給:コムストック・グループ