夢の人道支援プログラムの裏で果たして何が起きていたのか?
本作は、元国連職員のマイケル・スーサンが自身の体験を基に書き起こした2008年のベストセラー小説「Backstabbing for Beginners」の映画化。困窮するイラク国民を救うはずの夢の人道支援プログラム「石油・食料交換プログラム」の裏で行われていた国連史上最悪の政治スキャンダルを描く。
「石油・食料交換プログラム」とは、国連がイラクの石油を管理し、その販売金で食料を購入、それを市民に配給するという支援計画。しかし、総額640億ドル(約7兆1千億)という巨額の予算のため賄賂や不正が横行し2003年に終了した。
当時、プログラムを管理していた国連事務次長のベノン・セバン自身(本作での役名はコスタ・パサリス)の関与がのちの調査により発覚したが、国連は調査協力を拒否したため現在も全貌が明らかになっていない。
「OFFP(石油・食料交換プログラム)で大金を手にしたサダム・フセインのバース党幹部は、イラク戦争後シリアに逃れ、ISISを作り上げた。中東がとめどもない混乱に陥っているのは、このOFFPに端を発していると言って良い。この映画で国連の実態を知り、世界の現実について正しい認識を持ってほしい」とハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏は語る。
映画の主人公は、24歳のアメリカ人青年マイケル。彼は念願だった国連事務次官の特別補佐官に任命され、国連が主導する「石油・食料交換プログラム」を担当することになった。ところが一見理想的な政策に見えるこのプロジェクトに実はフセイン自身が関与し、国連を中心とした世界各国の企業や官僚機構が関わっていることが判明。やがて世界に例を見ない巨額の汚職事件に発展していく。
主演のマイケルを演じたのは、世界的に大ヒットした『ダイバージェント』(14-16)シリーズや『アンダーワールド』(03-17)シリーズで人気を博したテオ・ジェームズ。彼は、難民キャンプに赴くなど社会問題解決にも関心が高く、本作ではエグゼクティブ・プロデューサーも兼ねている。
脇を固めるのは、『ガンジー』(82)で第55回アカデミー賞主演男優賞受賞し、その後も主演男優賞、助演男優賞合わせ3回もアカデミー賞にノミネートされているベン・キングズレーや名作『ブリット』(68)で鮮烈な印象を残し、最新作ではフランソワ・オゾン監督の『2重螺旋の恋人』(17)にも出演しているジャクリーン・ビセットといった名優たち。監督は『ストックホルムでワルツを』(13)でスウェーデン映画界最高の栄誉である第49回ゴールデン・ビートル賞で監督賞を受賞したペール・フライが務める。
バグダッド・スキャンダル
11月3日(土)シネマカリテほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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