『海炭市叙景』(2010)『そこのみにて光輝く』(2014)『オーバー・フェンス』(2016)に続き、佐藤泰志の小説の映画化4 作目となる『きみの鳥はうたえる』。監督を務めたのは、『Playback』(2012)、『THE COCKPIT』(2015)など意欲的な作品を制作してきた新鋭・三宅唱。原作の骨格はそのままに、舞台を東京から函館へ移し、現代の物語として大胆に翻案した。函館郊外の書店で働く「僕」を『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018)の柄本佑、「僕」と⼀緒に暮らす失業中の友人・静雄を『空海−KU-KAI−美しき王妃の謎』(2018)の染谷将太、そしてふたりの男たちの間を行き来する佐知子を『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017)で数多くの賞を獲得した石橋静河が演じている。3人が過ごす何気ない日常を、かけがえのないきらめきと共に描いた本作で静雄を演じた染谷に、今作の撮影秘話やオススメの洋画などについて語ってもらった。

【ストーリー】
函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで共同生活を送っていた。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子(石橋静河)とふとしたきっかけで関係をもつ。彼女は店長の島田(萩原聖人)とも抜き差しならない関係にあるようだが、その日から、毎晩のようにアパートへ遊びに来るようになる。こうして、「僕」、佐知子、静雄の気ままな生活が始まった。夏の間、3 人は、毎晩のように酒を飲み、クラブへ出かけ、ビリヤードをする。佐知子と恋人同士のようにふるまいながら、お互いを束縛せず、静雄とふたりで出かけることを勧める「僕」。
そんなひと夏が終わろうとしている頃、みんなでキャンプに行くことを提案する静雄。しかし「僕」はその誘いを断り、キャンプには静雄と佐知子のふたりで行くことに……。

画像: 3人の男女の何気ない日常を描いた青春映画
『きみの鳥はうたえる』
染谷将太インタビュー

とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました

ーー柄本佑さんとは『東京島』(2010)で共演されていて、普段も映画館でバッタリお会いすることもあるそうですが、久々にガッツリ共演されてみていかがでしたか?
「佑さんはもともと、人としても役者としても大好きで尊敬している方なので、今作で初めてしっかりと長い時間向き合ってお仕事させて頂けたのは嬉しかったです。「僕」を演じる佑さんを一番近くで見れたことを人に自慢したいぐらいですし、ひとつひとつのシーンで沢山色んなものを見せてくださいました」

ーー染谷さんは『シミラー バット ディファレント』(2013)や『清澄』(2015)、そして柄本さんは『ムーンライト下落合』(2017)という短編映画を撮られているので、そういった意味でも互いにリスペクトし合える関係だったのではありませんか?
「映画について色んな話をしたはずなんですけど、何を話したかはあまり覚えていなくて(笑)。覚えていることと言えば、佑さんは今作の少し前に『ムーンライト下落合』の撮影をしていたらしく、三宅監督も『ムーンライト下落合』の現場を手伝っていて、撮影も今作と同じ四宮秀俊さんだったので現場でよくその話をしていました。あと『ムーンライト下落合』には加瀬亮さんと宇野祥平さんが出演されているので、現場でのお二人のエピソードなんかも聞かせて頂いたり。監督と佑さんが“あの現場楽しかったね〜”なんて盛り上がると“いいな〜”と僕が羨ましがったりして(笑)、そういう時間が凄く楽しかったです」

画像1: とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました

ーー監督から“今日のテーマはこれでいこう”という演出があったそうですが、例えばどんなテーマだったのでしょうか?
「撮影前に“このシーンはみんなお腹を抱えて笑って、最終的に立てなくなるぐらいの馬鹿笑いになるまで撮ってみよう”とか、“このシーンは「僕」と佐知子で静雄をちゃんと見守ってね”といったことを監督が話してくれて、それがその場面のテーマになったりすることもありました」

ーーテーマがあることでみなさんの中に共通認識が生まれて、とても演じやすかったのではありませんか?
「そうですね。監督が何かひとことテーマを言うだけでそのシーンの温度感をみんなで共有しやすかったですし、僕も佑さんも石橋さんももともと監督と知り合いなので、監督の言いたいことがすぐに理解できたというか。スタッフさんもずっと三宅組に参加されてきた方達ばかりだったので、全員が監督の表現したいことをしっかりと受け止めて、どうすれば具現化できるかを考えていましたし、みんなが意見を言える現場でした。その空間の中で僕ら役者は自分の役をどう体現していくかを考えていたので、とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました」

ーー3人でお酒を飲むシーンも沢山ありましたが、実際にお酒を飲んで撮影に挑まれたこともあったとか?
「全部ではないんですが、実際にお酒を飲んで撮影したシーンもありました。監督とは普段飲みに行ったりするので酔っぱらった僕や佑さんを見ていますよね(笑)。きっとそういうのもあって、シーンによっては実際にお酒を少し飲んでやってみようという提案をされたんだと思います」

画像2: とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました

ーー3人でお酒を飲んでビリヤードや卓球、クラブで遊ぶシーンも印象的でしたが、個人的に静雄くんが卓球で独特な球の打ちかた(ラケットを持っていない手も上に上げている)をしていたのが気になりました。あれは静雄くんのキャラクターをふまえたうえであのフォームを考えられたのでしょうか?
「あれは…単純に僕の癖です(笑)」

ーーてっきり静雄くんのキャラクターを考えて打ち方の研究をされたのかなと思ってました(笑)。
「じゃあそういうことにしておいてください(笑)。三宅監督と僕はプライベートで何度か卓球をしに行ったことがあって、佑さんも監督と卓球をしたことがあったらしいんです。それでたぶん佑さんと僕に卓球のシーンをやらせたら何か出て来るだろうと、そう思ったんじゃないかなと(笑)」

画像3: とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました
画像4: とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました

ーークラブやビリヤードは夜の遊びという感じがしますけど、卓球は珍しいなと思っていたので今のお話を聞いて納得です(笑)。
「普段卓球しに行ったりしませんか? たまに渋谷の卓球場に行くと僕と同世代の人達がいてワイワイ楽しそうにしていますよ。そこはお酒も飲める卓球場で、監督と行って盛り上がったこともあります。是非探して行ってみてください(笑)」

ーー探してみます(笑)。話は変わりますが、染谷さんオススメの洋画をひとつ教えて頂けますか。
「ジム・ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984)は是非観て頂きたいです。『きみの鳥はうたえる』のように男二人と女性一人がメインキャラクターとして登場していて、お互いがお互いをどう思ってるかわからない微妙な関係のまま物語が進んでいくんですけど、不思議と観終わったあとは清々しいんです。青春映画とも言えるので、『きみの鳥はうたえる』のあとに観ると面白いかもしれません」

画像5: とても建設的で想像力豊かな時間を過ごすことができました

ーー染谷さんは大作エンタメ作品から単館系まで幅広く出演されていて、作品選びのユニークな役者さんというイメージがありますがどのように出演作を選んでらっしゃるのでしょうか?
「役者は出演のオファーを頂けないと選びようがないので(笑)、お話を頂けるものはタイミング合えば是非という感じです。国内外問わず自分が全うできると思えるものならどんな作品でも。ただ、役者はお話を頂かないとできないお仕事ですが、僕は監督として『シミラー バット ディファレント』(2013年)と『清澄』(2015年)、そして山口情報芸術センターの映画制作プロジェクト「YCAM Film Factory」で制作した最新作の『ブランク』の3作品を撮っています。『ブランク』は去年の夏に山口県でしか上映できていないので、いま東京でも上映できるように動いている最中です」

ーー今後も役者としての染谷さん、そして染谷さんの監督作品を拝見できるのを楽しみにしております。
「ありがとうございます。役者を続けながら今後も継続的に監督として作品を撮り続けていきますので発表を楽しみに待っていて頂けたら嬉しいです」

(インタビュー・文/奥村百恵)

監督・脚本:三宅唱
原作:佐藤泰志(『きみの鳥はうたえる』河出書房新社 / クレイン刊)
キャスト:柄本佑 石橋静河 染谷将太
     足立智充、山本亜依、渡辺真紀子、萩原聖人、他
配給:コピアポア・フィルム、函館シネマアイリス
8月25日(土)函館シネマアイリス先行公開
9月1日(土)新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
©HAKODATE CINEMA IRIS

画像: 「きみの鳥はうたえる」特報 youtu.be

「きみの鳥はうたえる」特報

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