「鑑賞後、しばらく席を立てなかった」と呉美保監督
今冬注目のサスペンス映画『ジュリアン』のグザヴィエ・ルグラン監督とトーマス・ジオリア(ジュリアン役)が来日したのを記念し、特別試写会を実施。本作と同じく『きみはいい子』(15)、『そこのみにて光輝く』(14)などで家族をテーマにした映画を手がけた呉美保監督と共にトークショーを行い、『ジュリアン』での細部にまでこだわりぬいた秀逸な演出術の裏側や本作の注目ポイントについて熱く語った。
呉監督は、登場早々から「最近見た映画の中で最も胸を打つ作品」と本作を絶賛。観賞後は涙を流し「しばらく席が立てなかった」と告白するほど、衝撃を受けたという。また、離婚した父親と母親の間で揺れ動く息子ジュリアンら家族の複雑な思いを丁寧に描いた本作の演出についての話になると、ジュリアン役を演じたトーマスは「素晴らしい演技指導をシーンごとにしていただいたので不安はなかったです」と笑顔。舞台俳優としても活躍するルグラン監督は「目線の指導など、細かく言いました」と、人物の作り込みやディテールへのこだわりを明かした。それを受けて呉監督も「まさに一番引き付けられたの目!」と続け、「冒頭から話が進んでいくにつれて登場人物の目の色が変わっていく。そこに怯えを感じ、家族のもろさや儚さを俳優の目で感じました」とコメントした。
また本作を語るうえで重要なポイントが“音”の使い方。ルグラン監督は、「通常の映画は後から音を入れたりもしますが、俳優たちを現実の本物のような環境に置き、その音が聞こえるように配慮した」と語り、呉監督は「そう!音に感情が動かされました。すごく繊細な音がついていて、それがクライマックスに結びついていく。そこが驚きでとても良かった!」とまたもや絶賛した。
呉監督も大絶賛する本作は、《第74回ヴェネチア国際映画祭》にて最優秀監督賞にあたる銀獅子賞を受賞し、本国フランスで40万人動員のロングランヒットを記録。アメリカの映画批評サイトRotten Tomatoesでは94点の高評価を得ている。
【『ジュリアン』ストーリー】
両親が離婚したため、母ミリアム、姉と暮らすことになった11歳の少年ジュリアン。離婚調整の取り決めで親権は共同となり、彼は隔週の週末ごとに別れた父アントワーヌと過ごさねばならなくなった。母ミリアムはかたくなに父アントワーヌに会おうとせず、電話番号さえも教えない。アントワーヌは共同親権を盾にジュリアンを通じて母の連絡先を突き止めようとする。ジュリアンは母を守るために必死で父に嘘をつき続けるが、それゆえに父アントワーヌの不満は徐々に溜まっていく。家族の関係に緊張が走る中、想像を超える衝撃の展開が待っていた。
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