成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
前回はこちら。
「サスペリア」で話題沸騰のダコタ・ジョンソンに直撃!
最近はピーコック(孔雀)をスタイルのポイントに取り入れているんだ
2016年の「ムーンライト」はオスカー最優秀作品賞を受賞しただけでなくマハーシャラ・アリも助演男優賞を受賞、そして今回は更に注目を集めている「グリーンブック」でのクラシック音楽のピアニストの役をエレガントに格調高く演じて、二度目の助演賞受賞。今やハリウッドのAリスト俳優として認められてきた。彼に会うのはこれで3回目だが低い声で静かに話す謙虚な人となりを見せてくれる。
今回は鮮やかな色彩のジャケットに変わった帽子をかぶって登場。
『最近の僕はピーコックをスタイルのポイントにしているんだ。ユニークなデザインだろう?』
とにんまり。細面の顔にスレンダーな体がファッションを引き立てている。
『グリーンブック(人種差別時代、黒人が食べたり泊まったり出来るお店のガイド)のことは実は僕も知らなかった。白人たちがトリプルAが発行するガイドブックでナイアガラの滝やグランドキャニオンを大いに楽しんでいる時に、僕らの先代は「グリーンブック」をガイドにしていた。これほどまでに制限されていたのかとショックを受けたものの、それなりに当時の差別状況は理解していたね。
今でも差別を受けるんだよ。たった2週間前にロンドン映画祭に招かれてあるクラブでの会食に出席したら、僕がどうしてここにいるのかというようなことを支配人が質問してきたので黙って席を立ってしまった。監督のピーター(ファレリー)も同席していて非常に怒っていたが、まだまだこういう扱いは頻繁にあるんだよ。僕は大学でマスターの学位を取り、オスカーも受賞しているが、そういう教育やキャリアのない黒人はこういう場所にはまず入れない。俳優になってからもレッドカーペットなどでは隅に追いやられるしね。自分がブラックであるということは絶対に頭から離れない事実なんだよ。
映画の中で南部に行き、畑仕事をしている黒人たちが僕は後部席に座って白人がドアを開けて、僕が出て来ると全員唖然としてみている場面があるだろう。彼らは当時の奴隷の身分に近く、特権を持つ黒人など一生に一回も見たことがないはず。おまけに白人みたいな喋り方をするのだから、彼らにとって僕は異星人みたいな存在だったろうね。
オバマ大統領が現れた時、その豊富なボキャブラリーと上品なアクセントの話し方に「白人みたいな喋り方をしやがって」と批判する黒人も大勢いた。つまり黒人のマジョリティーは、まだまだ古い考え方をし、歪んだ逆差別の態度をとっている。教育が不足しているのだろうが、今の所状況はあまり進歩していないから大きな問題になっている』