2019年5月14日から世界の映画人が注目するカンヌ国際映画祭が開幕。長編コンペ部門審査員長はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。現地より映画ライターの岡田光由氏が映画祭の生情報を逐次お届けする。

シネマイベントがいっぱいの第72回カンヌ国際映画祭

ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」のオープニング上映で始まった今年のカンヌ国際映画祭。72回目を数えて5月14日から25日まで、映画ファンにはたまらない世界一流のシネマイベントが連日繰り広げられる。一昨年の70回を節目に様々な改革、改定を断行し、マンネリを打破して時代の変化に向き合いつつ、新しい映画祭の姿を追い求める姿勢は立派なもの。
今回の呼び物は何と言って審査員長を務めるアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥだ。「バベル」でカンヌ映画祭監督賞、「バードマン」、「レヴェナント:蘇えりし者」で二年連続アカデミー賞監督賞に輝き、いま最も脂の乗り切った人。彼が記者会見やオープニングセレモニーで映画に関すること、審査に関することを英語やスペイン語で熱く語るその気迫に並々ならぬものを感じた。

画像: 今年も快晴にめぐまれた映画祭会場

今年も快晴にめぐまれた映画祭会場

そんな彼と審査を共にする仲間に、「バベル」に出演したエル・ファニングや新進の実力派監督と言っていい「幸福なラザロ」のアリーチェ・ロルヴァケル、「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス、「COLD WAR あの歌、2つの心」のパヴェル・パヴリコフスキーだ。彼らとイニャリトゥとの審査における熱い戦いも見ものだ。

次にコンペティション部門で注目されるのが、「パルプ・フィクション」でパルムドールに輝いたクエンティン・タランティーノ監督の最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」である。しかもレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演作で、21日の公式上映は映画祭後半最高の盛り上がりになることは間違いない。映画祭総代表ティエリー・フレモーが映画の完成を待ってエントリーに加えたほど。
3つ目は特別上映作品の「ロケットマン」だ。「ボヘミアン・ラプソディ」の大ヒットで、次なる音楽映画の目玉として期待されるエルトン・ジョンの伝記映画。エルトンに扮するタロン・エガートンのなりきりぶりにも注目だ。さらにクロード・ルルーシュ監督の出世作「男と女」の53年ぶりの続編となる「ザ・ベスト・イヤーズ・オブ・ア・ライフ」も、特にオールドファンにはたまらない。あのジャン・ルイ・トランチニャンとアヌーク・エメが現在の姿で登場するのだ。

画像: 会見場にやってきたエル・ファニングとイニャリトゥ

会見場にやってきたエル・ファニングとイニャリトゥ

アラン・ドロンが名誉賞受賞で来場予定

さらにオールドファンには嬉しいことが。アラン・ドロンが映画祭名誉賞を受賞するためにカンヌに登場する。彼の受賞についてはフランス国内でかなりの物議を醸しだしたようだが、フレモーは映画俳優としての彼の功績を重んじての授与ときっぱり。そういえばシルベスター・スタローンもやって来る。彼の功績を讃えてのことで、ミッドナイト・スクリーニングで上映の韓国映画「ギャングスター、コップ、デビル」のハリウッド・リメークの製作発表もカンヌでやるらしい。

ともかく日本映画が監督週間で三池崇史監督の「初恋」と吉開菜央監督の短編「Grand Bouquetいまいちばん美しいあなたたちへ」、国際批評家週間で富田克也監督の「典座TEZO」だけとは寂しいことだが、今の日本映画界の現状を考えれば致し方のないこと。日本映画の奮起を祈りつつ、カンヌを楽しみたい。(続く)

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