コンペ部門より一日遅れてのカンヌ国際映画祭2日目には、「ある視点」部門のオープニングセレモニーがドビュッシー劇場で開かれた。(現地レポート/岡田光由)

審査員に若手監督らも起用

恒例の審査員団の紹介が、映画祭総監督のティエリー・フレモーによって行なわれた。今回の審査員長は、「存在のない子供たち」(7月公開)で昨年のカンヌで監督賞を受賞したレバノン出身の女性監督ナディーヌ・ラバキ。さすが女優でもあるナディーヌはタイトなブラックドレスで観客の目を惹きつけた。次いでフランス女優マリーナ・フォイス、アルゼンチンの監督イサンド・アンゾ、ドイツのプロデューサー、ヌアハン・シェケルチ・ポスト、それにベルギーの監督ルーカス・ドンという審査員の面々もステージへ。中でも男優並みのイケメン、ドンは昨年の「ある視点」部門で「Girl/ガール」(7月5日公開)で注目された若手。今回は特にこれまでにない期待の新進を起用していることが目立つ。しかも昨年に続いて女性審査員が3対2と過半数なのだ。

画像: ティエリー・フレモー

ティエリー・フレモー

若い才能を出来るだけ採用しようという気運は、伝統と格式を重んじるここカンヌでも強烈に見られる。この「ある視点」部門でも選出された18本の作品の半数が、新人監督によるもので、彼らはみなカメラドール賞受賞のチャンスを持つことになる。

オープニングは「ア・ブラザーズ・ラブ」

さて、審査員団の紹介の後には、オープニング上映を飾る「ア・ブラザーズ・ラブ」の監督&キャストの紹介だ。これまたカメラドール授与の対象となる作品で、女優でもあるカナダ出身のモニア・ショクリの監督デビュー作。観客席には「胸騒ぎの恋人」で彼女と共演したグザビエ・ドランが駆けつけていた。ちなみに彼の最新監督作は今回コンペ部門にエントリーされている。出演者たちと登壇したモニアは、先ほどのナディーヌに負けないくらいの黒のスケスケ・ロングドレス。これで作品も大いに印象づけようという狙いか。

画像: 舞台挨拶するショクリ監督

舞台挨拶するショクリ監督

この「ア・ブラザーズ・ラブ」は30歳半ばの独身女性が主人公。仲が良すぎるほどの、これまた独身の兄にいつも振り回されてきたが、突然その兄が恋に落ちてしまい、彼女はようやく自分の人生と向かい合い、大人になっていく女性ドラマ。ただ初監督作品とあって、気合が入りすぎたか、ハイテンションで台詞、台詞の洪水状態に、少々閉口気味。ちょっと残念な出来のようだ。

今回の「ある視点」部門には新進監督たちに並んで、コンペ部門で顔なじみのベテラン監督も名を連ねる。「ユマニテ」でカンヌ・グランプリを受賞したブリューノ・デュモンや「美しいひと」のクリストフ・オノレである。デュモンはジャンヌ・ダルクの前半生を描いた「ジャネット」の続編とかで、当然、後半生を描いた「ジャンヌ」が選出されたもので、10歳の少女リーズ・レプラ・プラドムがヒロインを演じるのも話題だ。そしてオノレ作品は「シャンブル212」で、結婚に疲れた女性が自宅の向かいにあるホテルの212号室に泊まり、夫や家庭を見直すというもの。

このように選出作品をチェックしていくと、やはりベテランより新人監督たちの作品に興味が引かれるのは当然のこと。どんな才能に出会えるかが楽しみな「ある視点」である。

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