2019年5月13日から開催された第72回カンヌ国際映画祭は天候不順に見舞われ、例年よりも寒さに耐えながら25日にクロージングを迎えた。(現地レポート/岡田光由)

ポン・ジュノ監督が「PARASITE」で韓国に初の最高賞パルムドールをもたらす!

授賞式ではシルヴェスター・スタローンやマイケル・ムーア監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、チャン・ツィイーらがプレゼンターを務め、パルムドールほか数々の賞が授与された。そしてクライマックスとなる最後のパルムドールが大女優カトリーヌ・ドヌーヴから手渡されたのは、「PARASITE」(英題)のポン・ジュノ監督。両手を挙げた喜びを爆発させた。何しろ韓国初のパルムドール受賞である。昨年の「万引き家族」に続いてアジア映画が、しかもどちらも家族を見つめた作品が受賞するという快挙。

その「PARASITE」は日本でも公開が予定されているが、内容は半地下の狭いアパート暮らしの職のない一家4人が、超リッチな豪邸に住む若き起業家の家庭へ各々が働き手として入り込むというもので、その豪邸には意外な秘密が隠されていて、異色のミステリータッチのドラマであり、コミカルな要素も加えられ、いかにもポン・ジュノ監督らしい作品になっている。しかも根底には韓国の格差社会への批判も盛り込まれ、社会性と娯楽性のバランスがうまくとられているのだ。

画像: イニャリトゥ監督(右端)ら審査員の面々の会見

イニャリトゥ監督(右端)ら審査員の面々の会見

授賞式後の審査員団会見で、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ審査員長は「全員一致の結果だ」と強調。ポン・ジュノ監督もそのことに驚いていると述べた。そして今年は韓国映画100周年の年とかで、とても素晴らしいプレゼントになったと大喜び。彼の力量は計り知れず、今後の活躍が期待される。

若い才人の活躍が目立ち、無冠に終わったベテランの作品も

また今回、受賞一覧を眺めると世界各国バランスのいい受賞にはなっているが、「バクラウ」のブラジル作品や、「アトランティック」のマティ・ディオップ、「レ・ミゼラブル」のラジ・リらフランスの若き才人監督が目立った。そのせいで上質な作品なのに無冠に終わったケン・ローチやテレンス・マリックらベテラン監督作品が哀れ。パルムドール大本命だった「ペイン・アンド・グローリー」のペドロ・アルモドヴァル監督にも情けはかけられなかった。せめてアントニオ・バンデラスの演技賞受賞で、ご容赦願ったのだろう。ダルデンヌ兄弟だって、いまさら監督賞とはね。やはり審査員団の好みには合わなかったに違いない。

画像: 男優賞のアントニオ・バンデラス

男優賞のアントニオ・バンデラス

このように受賞作&受賞者を眺めていくときりがない。ジャーナリストたちは授賞式会場の隣のドビュッシー劇場でその模様を見ているのだが、かなり頻繁にブーイングが起こった。そんな中で「レ・ミゼラブル」とバンデラスの受賞には拍手が贈られていた。

画像: 女優賞のエミリー・ビーチャム

女優賞のエミリー・ビーチャム

また女優演技賞のエミリー・ビーチャムも意外な受賞で、本人はチャレンジした役柄だったので、とても喜んでいたのも印象的。いろいろと語ればキリがないが、パリ郊外の貧民街で移民少年たちと警察の対立を描いた「レ・ミゼラブル」のラジ・リ監督とプロデューサーが、マクロン大統領に見てほしいと語っていたのが心に残った。

■主な受賞一覧
<長編>
パルムドール 「PARASITE(英題)」(ポン・ジュノ監督)
グランプリ 「アトランティック」(マティ・ディオップ監督)
監督賞 ジャン・ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ(「ヤング・アフメド」)
審査員賞 「レ・ミゼラブル」(ラリ・ジ監督)、「バクラウ」(クレベール・メンドンサ・フィロ&ジュリアノ・ドルネルズ監督)
脚本賞 セリーヌ・シアマ(「炎の貴婦人の肖像」)
女優演技賞 エミリー・ビーチャム(「リトル・ジョー」)
男優演技賞 アントニオ・バンデラス(「ペイン・アンド・グローリー」)
特別賞 「天国に違いない」(エリア・スレイマン監督)
<短編>
パルムドール 「ザ・デスタンス・ビトウィーン・アス・アンド・ザ・スカイ」(ヴァシリス・キケイトス監督)
審査員特別賞 「モンストルオ・ディオス」(アグスティナ・サン・マルティン監督)
カメラドール 新人監督賞 セザール・ディアス(「ヌーストラス・マドレス」)

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