“憧れのイーストウッドに声をあてられることが、ただただうれしい”
——本編の特報映像のナレーション「人は永遠には走れない」、あの映像への反響は大きかったのではないでしょうか?
僕なりのできる範囲で、「山田さんが生き返ってイーストウッドをやっている」そんな風に思ってもらえるくらいのクオリティでやりたいと思っていたのですが、「ナレーションに寄せてほしい」というリクエストがありました。もっとセリフっぽくやりたかったなと、正直物足りなさを感じていましたが、結果的には「涙が出ました!」「似てる!」と評判は上々でした。
——山田さんから引き継がれた役ですが、今回は山田さんがやっていないイーストウッドです。演じた感想はいかがでしたか?
やりやすかったです。というのもいきいきしている頃よりも、年齢を重ねたイーストウッドの方がやりやすいと思っていました。ルパンみたいに元気にやる必要もないし、いっぱいセリフがあるわけじゃないってね。でも、意外とセリフは多かったです(笑)
これまで「多田野は若い頃のイーストウッドは吹き替えられるけど、年齢のいったのは無理だよね」という声も多くありました。でも、自分的にはむしろ年をとったイーストウッドの方がいろいろとエクスキューズできるからやりやすいと思っていたんです。
だって、一番脂の乗っている頃のイーストウッドを演じている時の山田さん知ってます?あれの追加収録の方がよっぽど辛いですよ。キレッキレだし、口もまわるまわるって時代。そんなの僕には無理。今回はそういうイーストウッドを求められていないという点では楽だったと思います。山田さんが生きていたらこんな感じかな、と思いながらやっていましたけどね。
——多田野版イーストウッドという意識ではないのですか?
全くありません。できません。100%山田さんリスペクトで演じています。僕なりのイーストウッドをやってと言われても無理です。大人になるまでイーストウッド本人の声は知らず、山田さんの声で育ちましたから。子供の頃から見ていた俳優さんに57歳になった今、声をあてるという現実が、ただただうれしくて感動しています。
——そんな憧れの人の声を担当した『運び屋』で印象に残っているシーンを教えてください。
一番好きなのは、最後のベッドでの夫婦の会話のシーンです。とてもやりがいがありました。イーストウッドを演じる時は「山田さんならこう演じる」と想像しながらやるのですが、アフレコのときには画面からも耳からもイーストウッドが入ってくるので、お芝居が進むとイーストウッド本人の演技にひっぱられちゃうんです。
そんなときは、山田さんの音源を聞いて山田さん寄りに軌道修正します。字幕版でイーストウッドの声を聞いてみると、山田さんみたいな演技はしてない。正統派の二枚目だからね(笑)。でも、あの最後のシーンは、イーストウッド本人の映像と声が流れる中で、自然にできた僕なりの山田口調になりました。
——吹き替え版と字幕版、2タイプのイーストウッドが楽しめる感じですね。
そういう楽しみ方があっていいと思います。
後半のインタビューは明日6月19日(水)にお届けします。
(取材・文/タナカシノブ 写真/久保田司)
STORY
アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は金もなく、孤独な90歳の男。商売に失敗し、自宅も差し押さえられかけたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。それなら簡単と引き受けたが、それが実はメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だということを彼は知らなかった…。
『運び屋』
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