“山田康雄さんに似ているといわれるのは、恥ずかしいし、恐れ多い”
——子供の頃から映画が好きだったそうですね。
映画ノートも作っていたし、「スクリーン」もずっと読んでいました。毎日のように映画を観ている子供でしたね。マックイーンとイーストウッドが一番好き。『大脱走』のオートバイをイメージして、自転車を改造していました。小学校か中学校の頃だったかな、22インチくらいの自転車の後ろに座布団をつけたり、お母さんに頼んで洋服の袖を切ってもらったりして(笑)。『コンバット』が好きで、米軍のGIが持っている水筒を友達みんなと買って、ベルトにつけたり。モデルガンもわざわざ博多まで買いに行きました。近くの山に登って、飛行機の音がしたら「ドイツ軍だ!」とか言って草むらに隠れたりするコンバットごっこ、めちゃくちゃ楽しい遊びでした。
——『スター・ウォーズ』では永井一郎さんからヨーダ役を、『キングダム・ハーツ』では肝付兼太さんからジミニー・クリケット役を引き継いでいます。イーストウッドの山田さんもそうですが、すでに浸透している役を引き継ぐことにプレッシャーを感じていますか?
どの役も、出来上がっている役に寄せて頑張って演じていますが、自分では声は似ていないと思っています。でも、プロデューサーや劇団の先輩から「山田さんに声が似ている」と言われるようになって「そうなのかな」なんて考えるようになりました。『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』が最初のイーストウッドで、そのときはお風呂で練習して「あれ、俺結構似てる」なんて思ったりしたけれど(笑)
どの劇団もそうだけど、みんな先輩と舞台で一緒に芝居をしていると、口真似だけじゃなく芝居そのものが似てくるんです。うちでいえば、納谷悟朗、熊倉一雄、山田康雄。みんな稽古で芝居が自然に染み付いてくるから、口真似も似てくるのかなって思っています。山田さんに似ていると言われるのは、穴があったら入りたいくらい、恥ずかしいです。恐れ多いし、似てないし……。でも、先輩たちが作って来た芝居、吹き替えで作り上げて来たキャラクターは、引き継いでいきたいと思います。
—— スティーヴ・ブシェミやウィレム・デーフォーはずっとやりたい役だったそうですが、今後声をあてたい俳優はいますか?
主役がやりたいです。チビ、ハゲ、小動物ばっかり演じているので、そろそろかっこいいイケメンの役をやりたいです。だって、俺みたいな見てくれの男がイーストウッドみたいないい男を演じられるのが吹き替えの醍醐味でしょ。イケメンの主役がいいですね。母親が元気なうちに、かっこいい役を演じる自分を見せたいです(笑)。スコット・イーストウッドを、山田さんそっくりに演じてみるのもおもしろいかも。イケメン役は小野大輔さんにまわりがちだけど、僕もやりたいです!
—— 話は尽きませんが、最後に読者にメッセージをお願いします!
ここはカッコいいコメントで締めたいと思います(笑)。子供の頃からの大ファンであるイーストウッドの吹き替えをやった。さらにそれは、大人になってからずっと憧れていた先輩から引き継いだ役でした。そんな思い入れのある役を57歳の自分が演じること、そしてイーストウッドは88歳(※)になっている。感無量です。いつものチビ、ハゲ、小動物じゃないぞ!
※『運び屋』撮影時。現在は89歳
(取材・文/タナカシノブ 写真/久保田司)
STORY
アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は金もなく、孤独な90歳の男。商売に失敗し、自宅も差し押さえられかけたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられる。それなら簡単と引き受けたが、それが実はメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」だということを彼は知らなかった…。
『運び屋』
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