あの視覚効果の裏側とは?
「キャプテン・マーベル」で視覚効果を監修したクリストファー・タウンゼント。これまでMCUにおいて「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」などの作品をVFXで支えてきたタウンゼントのインタビューをお届けしよう。
Q1:「キャプテン・マーベル」はニック・フューリーらの若返りやキャプテン・マーベル覚醒時など、魅力的な視覚効果が満載でした。最大限にVFXが発揮されているシーンとその理由を教えてください。
最もVFXが使われていたシーンは確実にアクト3(第3幕)のいわゆるエンド・バトル(最後の戦い)でしょう。あのシーンは背景が全てCGなので多くのVFXを用いました。フル・デジタルショットにデジタルダブル※1がいる場合もあります。あのシーンが恐らく最もVFXを用いたシーンでしょうね。ですがVFXは全体的に使われています。特にサミュエル・ジャクソン扮するニック・フューリーの場合は約500のショットもVFXを用いました。彼を若返らせるために、かなり骨を折りましたよ。比較的簡単なショットもありましたが、あの若返りはもちろん、とてつもない挑戦でした。映画の他のキャラクターの中では、特に猫のグースに多くの時間をかけましたね。映画の中のグースは実はCG猫なのです。ですから、あの猫もふんだんにVFXを必要としました。
【SCREEN ONLINE独占】Q2:ブリー・ラーソンは猫アレルギーとのことですがが、グースとの共演シーンで工夫した点や苦労した点はありますか?
ブリー・ラーソンはほとんど猫を抱っこできなかったので、最終的には、当初の予想よりも多く、猫が登場するショットを手掛けなければならなくなりました。本作の中で猫が登場するカットの70~80%は実はCGです。本作で登場する猫のショットのうち100……あるいは少なくとも75~80ショットの猫は実はCGです。ですから、予想よりも遥かに手がかかりました。狙いは猫をできるだけ自然に見せることのみです。最初の演技のシーンは、アニメーションキャラクターを専門とする2人のドイツ人が担当しました。我々はヒーロー猫であるレジーと細部まで全く同じフルCG猫を作るよう指示を受けたのですが、彼らは素晴らしい仕事をしてくれました。
【SCREEN ONLINE独占】Q3:スクラル人は容姿を変えられます。実写からスクラル人へのシェイプシフトは新たな挑戦でしたか。それとも他のプロジェクトで経験済みだったのでしょうか。
似た経験はありましたが、これほどのレベルではありませんでした。監督が論理的かつ大変な指示をくれて、その意見や感覚をキャラクターに活かさなければならないのです。ですから変身に関する多くの参考資料を見て、常に古典的な傑作に戻っていました。『狼男アメリカン』も見ましたがあれは当時、全て模型と人工装具等で作られており、あの変化の生理的側面に惹かれました。
まずは両方の俳優を合わせて2つの融合版を困難ながらも作り出し、それから1つの行動から次の行動へ移る動きの演技に加工をしていき、そのうえ高度なシミュレーションをします。肌を二重にしたり光らせたり衣装を変えたり……ありとあらゆるエフェクトを何重にも用いました。これにより次々と変身していくのです。
また我々は、各キャラクターの出演時間に応じて変身する前後の片方あるいは両方の姿を鮮明にしようとしました。ビーチでメンデルソーンの役が変身するショットでは、まずメンデルソーンの実際の写真から始めて、そこから彼の演技を基に動画を作りました。それを女性のCGの演技に合わせたのです。完璧な彼女のフルCG版があったのです。写真素材としてベン・メンデルソーンのキャラクターから始めたとしても、女性のフルCG版に合わせる前にベンをフルCG版に変えなくてはなりませんでした。ですから、これらをマッピング前に準備するだけでも、とんでもなく大変でしたよ。繰り返しになりますが、少し妙で違和感がありつつも他と調和したシームレスなエフェクトを目指したのです。当然、物理的に変身しつつも元の姿にも戻るし、スクラル人とは何者だったのかという特徴を残しました。2つの姿は基本的に繋がっています。このアイデアを用いて、キャラクターの有機的構造を変身後の姿にも組み込みました。皮膚の下の血管や粘液等からするっと抜け出させて、スクラル人特有の見た目を与えたのです。