ブラピ率いる製作会社【プランB】ヒット連発の理由に迫る

ハリウッドで確固たる地位を築いたプロデューサーとしてのブラピ

ブラッド・ピットの最新主演作「アド・アストラ」は、宇宙空間を舞台にした壮大なストーリーだ。一見、娯楽要素の強いアクションの印象もあるが、16年前に太陽系の彼方で消息を絶った父親と、その行方を探し、救出しようとする息子の運命には深いテーマも盛り込まれ、これまでの映画とは明らかに一線を画す。その理由のひとつが、ブラピの製作会社「プランBエンターテインメント」がプロデュースしていること。今やプランBといえば、「信頼」のブランド。オリジナリティの高さと、作品の質の高さでは、多くの製作会社の中でもトップレベルなのは、ここ数年のラインナップを振り返っても明らかだ。

2013年の同社製作の「それでも夜は明ける」がアカデミー賞作品賞を受賞したとき、プロデューサーとしてブラピがオスカーを受け取った光景を覚えている人も多いだろう。ブラピは同作にちらっと出演しているものの、あくまでもメインの役割は「作り手」。この作品賞受賞で、ブラピのプロデューサーとしての実績が映画ファンにも広く知れ渡ることになり、プランBの知名度も上がった。この翌年の2015年には、全米プロデューサー組合から同社にVisionary Awardが贈られた。これは、エンタテインメント業界に独創的な貢献をした会社や人に贈られる賞。プロデューサーとしてのブラピは、ハリウッドで確固たる地位を築いたのである。

もともとプランBは、2002年、ブラピと、その後、パラマウントのCEOとなるブラッド・グレー、そしてブラピの当時の妻、ジェニファー・アニストンによって設立された。ブラピ主演の「トロイ」（04）や、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場」（05）、さらにマーティン・スコセッシ監督が悲願のアカデミー賞作品賞に輝いた「ディパーテッド」（06）と、設立直後からハイレベルな作品を送り出すことに成功。

作品を成功へ導くのはブラピのチャレンジ精神

さらに注目されたのが、2010年の「キック・アス」だ。ヒットガール役のクロエ・グレース・モレッツを大ブレイクさせた一作だが、過激な描写にも果敢に挑み、マニアックなファンも獲得。コミック原作ながら、ファミリー向けに抑えた表現にしないチャレンジ精神にプランBの野心が感じられた。「作りたい映画を作らせる」というブラピの精神が、作品の成功を導いたのだ。プランBを設立した2002年くらいから、ブラピは俳優としての主演作をやや少なめにして、このような野心プロジェクトの製作に積極的になっていく。スクリーンに映る「外見がカッコいい」ブラピから、陰で作品を支える「生き方がカッコいい」自身への変貌を図っていたのかも。そうした経験が、俳優業では「マネーボール」（11）のような、味わい深い名演技に結びついたのも間違いない。

そんなプロデューサーと俳優の相乗効果をブラピもわかっているようで、プランB製作の作品に自ら出演することで、あるいは主演をオファーされてからプランBとして関わることで、ヒットが難しそうな作品に「ブラッド・ピット主演」というセールスポイントを加味。やや地味なトーンの西部劇「ジェシー・ジェームズの暗殺」（07）や、テレンス・マリック監督の実験精神もあふれた「ツリー・オブ・ライフ」（11）、大胆なゾンビアクション大作の「ワールド・ウォーＺ」（13）などは、ブラピ主演でなければ注目度はずいぶん下がっていたはず。そう考えると新作「アド・アストラ」でも、自分が主演することで、これまでにない斬新な宇宙SF映画のテイストに挑戦できたのも納得できる。

製作者としてのブラピに影響を与えたのはレッドフォードかもしれない

そしてここ数年、プランBといえば、アカデミー賞の常連となり、よりハイクオリティな製作会社の印象が強くなった。「それでも夜は明ける」の作品賞以降、翌年の「グローリー／明日への行進」（14）、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」（15）と続けて作品賞ノミネート。そして再び「ムーンライト」（16）で作品賞受賞と、なんと4年連続でプランBの作品が栄冠を争ったのである。さらに一年空けて「バイス」（18）も作品賞ノミネート。同年には「ビール・ストリートの恋人たち」（18）が助演女優賞受賞と、この高確率は他の製作会社に比べても抜きん出ている。改めてプロデューサー、ブラピの能力、そして経験で培った作品の目利きには恐れ入るばかり。

さらに映画界全体の流れにも敏感なプランBは、ネットフリックスでの製作にも積極的。「ウォー・マシーン：戦争は話術だ！」（17）のように、メジャースタジオでは難しいシニカルな戦争映画を、同じく野心的プロジェクトを歓迎するネットフリックスと手を組んで、しかもブラピが自ら主演することで話題を集めた。同作で日本にプロモーションに来たブラピは、ネットフリックスとの仕事のやりやすさを熱弁しており、こうしたいい意味でのフットワークの軽さもプランBの成長の大きな要因なのだ。ネットフリックスでは、ポン・ジュノ監督の「オクジャ／okja」（17）も製作している。

こうしたブラピの姿勢に影響を与えたのは、もしかしたら「リバー・ランズ・スルー・イット」（92）のロバート・レッドフォードかもしれない。人気スターでありながら、「作る側」の魅力にめざめ、映画界を変えていく。この精神はこれからも受け継がれるはずで、プランB製作の「ビューティフル・ボーイ」（18）に主演したティモシー・シャラメも、ブラピの影響を受けて将来、監督やプロデューサーとして大成功……なんて想像がふくらんでしまう！

プランBの必見作品４本はコレだ！

9/20（金）公開
「アド・アストラ」Ad Astra

ブラピが演じるのは、太陽系の彼方で消息を絶った父親を探す宇宙飛行士。宇宙ステーションはもちろん、月や火星、さらに海王星まで登場する、かつてないスペース・アクション大作だ。父親役はトミー・リー・ジョーンズ。

10/9（水）Blu-ray＆DVD発売
「バイス」Vice

イラク戦争を決断したブッシュ大統領。その誤った判断を裏で導いた、副大統領のチェイニーの人生をブラック＆シニカルな笑いも込めて描いた野心作。クリスチャン・ベールの激太りの肉体改造による演技が話題になった。

「バイス」スペシャルサイト

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Blu-ray＆DVD発売中
「ビール・ストリートの恋人たち」If Beale Street Could Talk

アカデミー賞作品賞受賞の「ムーンライト」に続く、バリー・ジェンキンズ監督作。1970年代のNYハーレムを舞台に、若い恋人たちが人種問題に深く絡んだ犯罪に巻き込まれる。色調や音楽など超アーティスティックな一作。

「ビール・ストリートの恋人たち」スペシャルサイト

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Blu-ray＆DVD発売中
「ビューティフル・ボーイ」Beautiful Boy

ドラッグ依存症になった息子を、父親がなんとか立ち直らせようとする、感動のヒューマンドラマ。リハビリを終えても再びドラッグに溺れる息子の姿があまりに生々しく、ティモシー・シャラメの壮絶かつ切実な演技が見もの。

プランB の主な作品リスト

2004
トロイ Troy
2005
チャーリーとチョコレート工場　Charlie and the Chocolate Factory
2006
ディパーテッド The Departed
2007
ジェシー・ジェームズの暗殺　The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford
2010
キック・アス Kick-Ass
2011
ツリー・オブ・ライフ The Tree of Life
2013
ワールド・ウォーZ World War Z
それでも夜は明ける Twelve Years a Slave
2015
マネー・ショート 華麗なる大逆転 The Big Short
2016
ムーンライト Moonlight
2017
オクジャ/okja Okja
2018
ビール・ストリートの恋人たち If Beale Street Could Talk
バイス Vice
ビューティフル・ボーイ Beautiful Boy

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