世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」(公益財団法人、日本美術協会主催)の第31回受賞者が2019年9月17日、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ローマ、ベルリン、そして東京の各都市で一斉に発表された。

アンネ=ゾフィ―・ムター、ウィリアム・ケントリッジらも受賞

絵画部門では、アパルトヘイトなどを主題に、木炭の素描をコマ撮りした『動くドローイング』をはじめ、コラージュ、彫刻の製作や演劇、オペラの演出家、舞台美術家としても活動するウィリアム・ケントリッジ(南アフリカ)が受賞者に。

画像: ウィリアム・ケントリッジ  ヨハネスブルグのアトリエにて 2019年

ウィリアム・ケントリッジ  ヨハネスブルグのアトリエにて 2019年

彫刻部門では、疎外された人間の苦しみや、政治的な抑圧、ジェンダーの問題など様々な社会的矛盾を、パフォーマンスや映像、インスタレーション、彫刻を通じて表現してきたモナ・ハトゥム(イギリス)。

画像: モナ・ハトゥム ロンドンのアトリエにて 2019年

モナ・ハトゥム ロンドンのアトリエにて 2019年

建築部門では、研究所、博物館、学校など営利目的でない建物を中心に、時間を掛けて素材、形態を分析し、“手づくり感”のある空間を創りだす建築家夫妻、トッド・ウィリアムズとビリー・ツインの2名が。

画像: トッド・ウィリアムズ & ビリー・ツィン

トッド・ウィリアムズ & ビリー・ツィン 

音楽部門は、13歳で名匠ヘルベルト・フォン・カラヤンに見出され、多彩な音色、完璧な技巧、卓越した表現力、豊かな音楽性の全てを兼ね備えた演奏で、グラミー賞4回受賞の「ヴァイオリンの女王」ことアンネ=ゾフィ―・ムター。

画像: アンネ=ゾフィー・ムター ミュンヘンにて2019 年

アンネ=ゾフィー・ムター ミュンヘンにて2019

そして演劇・映像部門では、14歳で五代目坂東玉三郎を襲名して以来、歌舞伎界を背負って立つ立女形として活躍し、海外アーティストとのコラボレーションや、演出家、映画監督など歌舞伎の枠を超え活動する坂東玉三郎が選ばれた。

坂東玉三郎は、受賞者発表会に出席し、『今回の受賞を大変うれしく思います。自分の中でこれが最善と思うものを追求してきたので、将来の歌舞伎がどうなるとか未来像は考えたこともないというのが本当のところですが、古いものを好む方、新しいものを見たい方、まだ歌舞伎の何も知らない方にも喜んでいただけるように最善を尽くすのが芸だと思います』と受賞の喜びと芸術についての考えを述べた。

また若手芸術家奨励制度の対象団体には、クラシック音楽に触れる機会の少ないフランスの貧困地域や地方の子供を対象に無料で楽器を貸出し、週4時間3年間のレッスンを行なうデモス(フィルハーモニー・ド・パリの音楽教育プログラム)が選出された。

画像: リハーサル中の子供たち パリ郊外のマシー・オペラハウスにて2019 年(デモス)

リハーサル中の子供たち パリ郊外のマシー・オペラハウスにて2019
年(デモス)

なお授賞式典は10月16日に東京・元赤坂の明治記念館で行なわれ、5部門の受賞者には顕彰メダルと感謝状、賞金がそれぞれに贈られる。

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