杉山すぴ豊 SUGIYAMA SUPI YUTAKA
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
次々と発表されるMCUフェイズ4の新作。その中身とポイントを詳しく解説します
「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」の劇場公開も終わりマーベル・シネティック・ユニバース(MCU)のフェイズ3も一段落。と同時に次のMCUがどうなるかの発表が次々と行なわれています。先月号でもレポートしたサンディエゴ・コミコンでMCUのフェイズ4が発表され、その後のディズニーのファン向けコンベンションD23でさらに新たな作品の製作発表が行なわれました。
これらの情報をあわせると、まずフェイズ4作品として「ブラック・ウィドウ」(2020年5月1日)、「エターナルズ」(2020年11月6日)、「シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テンリングス」(2021年2月12日)、「ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス」(2021年5月7日)、「ソー:ラヴ&サンダー」(2021年11月5日)が劇場公開。
これらの合間にディズニーの新しい配信サービス〈ディズニー・プラス〉のドラマとして「ザ・ファルコン&ウィンター・ソルジャー」「ワンダヴィジョン」「ロキ」「ホワット・イフ...?」「ホークアイ」がリリース。続いてフェイズ5として「ブラックパンサー2」(2022年5月6日)、以下公開日未定ですが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3」「キャプテン・マーベル2」「ブレイド」「ファンタスティック・フォー」などが劇場公開。〈ディズニー・プラス〉のドラマとして「ムーンナイト」「シーハルク」「ミズ・マーベル」がリリースされます。
フェイズ4以降の大きな特長は、映画とドラマが強力にリンクしていること。今まではMCU映画はマーベルの映画部門マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギが指揮をとり、一方ネットフリックスの「デアデビル」などのドラマはマーベルのTV部門が作っていました。
しかし今回の〈ディズニー・プラス〉のドラマはマーベル・スタジオが作るためMCU映画と同列に扱われており、例えば「ザ・ファルコン&ウィンター・ソルジャー」は映画「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」やスティーブ・ロジャースがキャプテン・アメリカを引退した「アベンジャーズ/エンドゲーム」の続編であり、映画「ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス」にはワンダも出ることからドラマ「ワンダヴィジョン」とリンク。
「ミズ・マーベル」はキャプテン・マーベルに憧れた少女がヒーローになる物語ですから映画「キャプテン・マーベル2」につながるでしょう。
映画同士のクロスオーバーから映画とドラマのクロスオーバーへ
またこれまで以上に“非白人男性のヒーロー化”が進みます。「ブラックパンサー」でアフリカ系アメリカ人の動員に成功したため、「シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テンリングス」はアジア系アメリカ人をターゲットに。女性ヒーローものもぐっと増えます。フェイズ4のキックオフは「ブラック・ウィドウ」だし、ナタリー・ポートマンが女性ソーを演じることも話題。
超人族を描いた「エターナルズ」でメキシコ系の女優サルマ・ハエックが演じるキャラは、コミックでは白人系男性でした。かつて映画同士をクロスオーバーさせたMCUは、今度は映画とドラマのクロスオーバーへ。より巧みな仕掛けとヒーローの多様性に挑戦します。
さて、この中で僕が最も注目するのはドラマ「シーハルク」。ハルクことブルースの従妹が緑色のスーパー女性に変身。しかも彼女は弁護士。このキャラは次のスパイダーマン映画への登場が噂されていました。というのも「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」をご覧になった方はおわかりですが、スパイダーマンは“弁護士を雇わなきゃならない”状況になったから(笑)。
従ってドラマ「シーハルク」とトムホ版映画「スパイダーマン」第3弾の連動に期待していたのですが、ここに来てそもそもスパイダーマンの映画化権を持つソニーとマーベルの親会社であるディズニーとの交渉が難航し、スパイダーマンのMCU離脱!?というショッキングなニュースも飛び込んできました。スパイダーマンがMCUに残留するのか、これも今後の重大なポイントです。