成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて38年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
私なりの理想的な政治家のイメージを表現したくてこの映画の役を演じたのよ
「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」はシャーリーズ・セロンにしては珍しいロマコメ、普通は彼女に釣り合った背が高いハンサムガイがお相手に選ばれるが、今回はどこから見ても喜劇役者のセス・ローゲン、それでも映画が進むに連れ、二人の恋愛ケミストリーが展開し、それが感じられるところがこの映画のユニークな強みであろう。
インタビューにウルトラショートヘアーで現れたシャーリーズは、自信たっぷりの妖しい笑いを浮かべながらセスとの共演から話してくれた。
『今までの映画からの経験を話すと、共演者と物凄く気が合って、多少なりとも恋愛的な感情が芽生えると現場はとびきりセクシーでロマンティックになるものの、いざ映画になって完成作を見ると退屈で、なんの新鮮味も感じられないものになってしまうことが多いのよ。そして、相手役に対して性的にほとんど興味も湧かず、うーん、今回はラブシーンがしんどいなあ、なんていう時の完成作を見ると心躍るようなラブラブのケミストリーが濃厚に漂っていたりで、本当にロマンスの場面って予測できないものなのよ。不思議でしょう?
セスとはすごく気が合って、おまけに映画の分析とかも一緒にして、ケミストリーが生まれる状況などについても深く話し合ったのだけれど、私達は同志として理解と尊敬をお互いに抱いているのが良いケミストリーになったのだと思うわね。一緒にプロデューサーも兼ねているから映画の出来も気になるので、一種の責任感も要素の一つ、なんて考えると恋愛のケミストリーって全くロマンスからは遠いものなのだな、と笑っちゃったりね』
この映画で、彼女は米国務長官役なので、現在の政治家たちにについて聞くと、
『あまりにも現実で討論の渦中なのと、自分の政治的見解については公開したくないので今は話せないわ。もちろん私なりに理想の政治家のイメージがあって、それは自由平等、世界平和、環境問題、企業との兼ね合い、などなどを巧みに操る、できれば女性の代表が現れてほしい、それをこの映画で表現してみたかったのね。
そして見た目にもグラマラスで美しい女性の大統領の可能性を見せて、これからの女性たちの目標になればと期待しているの。男性たちにはリーダーの素質も持った女性を知的、又は肉体的な面で支えるのも需要な役目だと思ってほしかったし。二人が精神的に平等に参加してこそ、より上等なリーダーシップが生まれるとね』
と毅然として応えてくれた。
本当にシャーリーズが大統領になってくれたら良いのに、と思わせるほどの余裕と貫禄と人間味を漂わせている。
シャーリーズが友人の赤ちゃんを預かった時の赤面ものの大失敗とは?
セスが昔、小さな子供だったシャーリーズのベビーシッターだったところからストーリーがスタートしているがベビーシッターの経験は?
『実は全く無いのよ。まだ自分の子供を持つ前に友人の赤ちゃんをしばらく預かってほしいと頼まれて、何といっても何事にも挑戦心を持つ私だから、この間にこの子になにか新しい技を覚え込ませて親をびっくりさせてやろうと〝言葉〞を教えようと思ってね。
お風呂に入れた時、アヒルのおもちゃがあったので「これはダック、ダックよ、ダックて言ってごらん」って話しかけたら「ファック、ファック」って言うじゃない(笑)。慌てて、違う「ダック」って言いなさい、と何度も練習させても「ファック」としか言えなくて親が帰ってきたら、私を指しながら「ファック、ファック」って得意そうな顔をして、親は仰天するし、私は真っ赤な顔になって穴があったら入りたい気分になったのよ。
その他でも赤ん坊にフライドポテトを食べさせて後で親にさんざん苦情を言われたりと、どうも子守の役は私には向いてないみたいね』
とケラケラと笑って白状してくれた。
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