「この映画が描く危険なパリにぞくぞくするような真実がある」と絶賛する細田守監督が登場
タイトルの“レ・ミゼラブル”とは、フランス語で<惨めな人々>という意味。本作は、パリ郊外の街モンフェルメイユを舞台に、現代社会の闇をリアルに描いていく衝撃作。監督を務めるラジ・リは物語の舞台となるこの街に生まれ育ち、今もそこに暮らす注目の新鋭。長編映画監督デビュー作ながら、自身がその街で体験してきたことを映画に投影させ、昨年のカンヌ以来、本年度アカデミー賞国際長編映画賞ノミネートをはじめ世界中で数々の賞を受賞。フランスでは観客動員200万人を突破する大ヒットを記録中だ。
そんな本作のラジ・リ監督がアカデミー賞授賞式直後に来日を果たした。本作にかねてから注目し、映画を「パリはおしゃれなんかじゃない。この映画が描く危険なパリに、ぞくぞくするような真実がある」と絶賛する細田守監督が応援にかけつけ、2月17日(月)にプレミアム試写会を実施した。
ラジ・リ監督は、「私の最初の長編映画である『レ・ミゼラブル』を皆さんに紹介できることを、とても嬉しく思います」と感慨深げに挨拶。
世界各地で高く評価されている本作は、監督によると50か国ほどでの配給が決まってるといい、「昨年のカンヌ以降、2~30か国をプロモーションで回り、サウジアラビア、アメリカ、北アフリカなど色々なところに行きました。この映画を携えての世界ツアーももう少しで終わります」と充実の表情で答える。
ゲストの細田監督は、「僕は去年、『レ・ミゼラブル』が観たくてものすごく頑張って努力をしてようやく観れた者として、今日はラジ・リ監督の応援をするためにやってきました」と挨拶。細田監督は、昨年の釜山国際映画祭の頃からこの映画に注目していたといい、その理由について、「もともとネットではカンヌの頃からすごく話題になっていたから知っていたんです。それで釜山でようやく観れると思ったんですが、日本からチケットを取ろうとしたけど全然取れなくて。それで上映当日の朝、会場で映画館の前で並べばキャンセルが出るかもしれないと思って並んでたんですが、全然キャンセルが出なくて。それで“クソー”という思いで、日本に帰ってきてから東北新社(本作の配給会社)さんに泣きついたんです(笑) 実際観られた映画は、本当に素晴らしかったです」と振り返る。リ監督は、「僕らは子供時代から日本のTVアニメとともに育ってきました。だから、今回細田監督と一緒に舞台に立つことができて本当に光栄に思います」と感謝を述べる。
細田監督は、「僕たちの映画に共通して言えるのは、“子供”が大きなカギを握っているということだと思います。この映画では社会の変化について子供がどう感じているのかを描いていますが、社会的な映画の中でここまで描いている映画はそう多くはないと思います。そこが感動したポイントでもあったんです」と自分たちの作品の共通点に言及する。それに対してリ監督は、「この映画の舞台はモンフェルメイユという街で、自分もそこで育ってきた子供だったんです。こういう場所で育っていく子供達の未来はどんなものなんだろうという意味で、彼らの存在はとても大切です。ああいう社会の中で、最初の犠牲者になるのが子供たちなんです。だから、そんな子供達を全面にフィーチャーしたいと思いました」を狙いを語る。その街などに住み、演技経験が全くない子供達をキャスティングしたことについて、「一緒に演技の練習をしたりしました。その結果は本当に素晴らしいものです」と振り返る。細田監督は、「本当にその場所に生きている子供達ということが伝わってくるし、この映画で抱えている問題が彼らに降りかかっていくことになる訳だけど、彼らが大きくなった時に、その問題はいったいどうなってるのか…と考えさせるものでもあります。そういう意味も含めて、子供とか子役とかいうことではなく、ずっと世代を越えて繋がっていく問題に対して、僕らがどう考えなければならないのかを考えさせてくれる存在でもあるんです」と語る。
ふたりのもうひとつの共通点と言えるのが、リ監督はつい先日、細田監督は昨年のアカデミー賞に監督作がノミネートされ、授賞式に参加したこと。リ監督は、「カンヌやゴールデン・グローブ賞にも参加しました。でも、長編デビュー作でアカデミー賞に参加できるなんて、本当に恵まれたことだと思います。アカデミー賞にノミネートされるということは、色んな人に映画を観てもらえるチャンスを与えらているということなんです。この映画で描かれているような現実を多くの人に観てもらうことが映画を作った目的でもあります。映画が描くのはこの地区の現実であり、僕は証言者として作ったつもりです」と語る。
細田監督は、「この映画は、ドキュメンタリーのような一面もあると同時に色んな表情を持っていて、映画を観ながら『その男、凶暴につき』を思い出していました。そんなテイストもあるな、と」と映画が持つ多面的な表情を語る。リ監督は、「ストーリー自体はハードな部分もありますが、これからを担う若者達のエネルギー溢れる部分やコミカルな部分など、実際にあるものを伝えたかったんです」と語る。
リ監督とともに、映画に“市長”役で出演しているスティーヴ・ティアンチューも来日。「ラジ・リが前からこの映画を撮りたいとずっと思ってきたことを知っているから、この映画をラジと一緒に作れたことが嬉しいです。フランスではこういう映画を作ること自体がなかなか難しいことだから、こうして日本にまで紹介できるということは、映画にとって“大勝利”だと思っています」と挨拶した。
細田監督は、「『レ・ミゼラブル』というタイトルだけど、映画を観ると現在の“レ・ミゼラブル”として腑に落ちると思います。これから我々はどう考えていけばいいのか、ということを考えさせてくれる映画です」とメッセージを送った。
最後に、リ監督は、「手と足をきちんと地につけて見てください(笑) 最後の10分はかなり凄いですよ」と茶目っ気たっぷりに締めくくった。
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