『断絶』は 70 年代の始まりであり、終わりでもある——
1971年のアメリカ映画『断絶』は、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの門下生だったモンテ・ヘルマン監督初のメジャースタジオ作品。『イージー★ライダー』(69)の大ヒット以降、従来の大作映画の不振によりメジャースタジオが苦境に立たされていた状況下、ユニバーサル映画がピーター・フォンダ監督『さすらいのカウボーイ』(71)、デニス・ホッパー監督『ラスト ムービー』(71)とともに起死回生の若者向け企画として仕掛けた野心作。キャストには当時人気絶頂のシンガーソングライター、ジェームズ・テイラーとビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソンの二人のロックミュージシャンを起用、名優ウォーレン・オーツも最高の演技を魅せる。ザ・ガール役に抜擢された当時新人のローリー・バードはまさに劇中の役柄そのままの少女で、ヘルマン監督はザ・ガールのディテールの着想を彼女から得ている。
撮影に使われた3台の55年型シェヴィのうち1台はのちに黒に塗装され、『アメリカン・グラフィティ』(73)に登場。もう1台は『トランザム 7000』(77)の排気音のオーヴァーダブ用車輌として使われた。70年代のアメリカで果てしなく続く道とガソリンスタンド、そしてただひたすらに車を走らせる若者...。『イージー★ライダー』でワイアットとビリーが求めたアメリカン・ドリームは『バニシング・ポイント』(71)でコワルスキーが夢破れつつもみせた自由への疾走に変容し、ついには『断
絶』で空疎な空気と閉塞感、疎外感とともに存在することがすべてであることとなった。
映り込むものすべての行動原理は排除され、観る者の感情移入も受け付けずに喪失感だけが漂う。もうひとつの『イージー★ライダー』として題材、物語、キャストなどあらゆる面で”売れる”期待を集めた本作。しかしヘルマンはその商業性をすべて排除、ロードムービーとしての純度を極限に高めることにこだわった。その結果スタジオと対立し、不幸な公開形態を余儀なくされた 『断絶』は興行惨敗に終わり、ヘルマンは以降一度もメジャースタジオで作品を撮っていない。
この度発売される≪最終盤≫ブルーレイはモンテ・ヘルマン監督自身が米国クライテリオン社発売の DVD、ブルーレイ用に監修・制作した数々の映像特典約160分を収録。これらは日本初登場となり、さらに88ページにわたる詳細なブックレットも付属される。
断絶≪最終盤≫ブルーレイ 5月13日(水)発売
¥9,800+税|本編約102分|1971年|アメリカ映画|原題:TWO-LANE BLACKTOP
【SPECIAL FEATURES】
★モンテ・ヘルマン、ゲイリー・カーツ音声解説 ★オリジナル予告編 ★Monte Hellman:American Auteur-モンテ・ヘルマンドキュメンタリー ★On the Road Again-モンテ・ヘルマンがロケ地をめぐる ★Make It Three Yards-モンテ・ヘルマン×ジェイムズ・テイラーインタビュー ★Somewhere Near Salinas-モンテ・ヘルマン×クリス・クリストファーソンインタビュー ★Sure Did Talk To You-「断絶」制作の歴史 ★Those Satisfactions Are Permanent-ローリー・バード、ジェイムズ・テイラーのスクリーンテスト映像
発売・販売:キングレコード
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STORY
深夜のストリートレースで儲けた賭け金を手に、レース用にチューニングした 55 年型シェヴィを南東方面へ向けて飛ばすザ・ドライバーとザ・メカニック。停まるのは食事と燃料補給、そして車の整備のときだけだ。途中のダイナーで拾ったザ・ガールを後部座席に乗せ、無言のまま車を走らせる。そしてあるガソリンスタンドでポンティアックGTOに遭遇、2台の車はお互いのピンクスリップを賭けた長距離レースでワシントンDCを目指すことになる。