“続OK牧場の決斗”ともいうべき傑作!
「墓石と決闘」Hour of the Gun(1967)
製作順に見ていこう。まず「墓石と決闘」(1967)は、名作「荒野の決闘」「OK牧場の決斗」のクライマックスで描かれた保安官ワイアット・アープ、ドク・ホリディとクラントン一味の死闘をオープニングに、この決闘のその後を描いた傑作。監督は「OK牧場…」も手掛けたジョン・スタージェスで、いわば「続OK牧場…」とでも呼びたい内容だ。

保安官ワイアット・アープがクラントン一味と死闘を展開
ここでスタージェスはかなり史実に近い描写を心掛けている。開巻のOKコラルでの登場人物たちの一挙手一投足から、大詰めのアイク・クラントンとアープの一対一の撃ちあいで、アープがパントライン・スペシャルを握った腕をまっすぐにのばし、アイクに怨念の一弾を食らわせる描写に至るまで、いくつもの見せ場はあらゆるアープ映画の中でもスタージェスが拘った実説に最も近いものと言われる。

西部劇史上に輝く「OK牧場の決斗」のその後を描く
また本作の見どころはガンファイト・シーンだけでなく、アープ(ジェームズ・ガーナー)とドク(ジェイソン・ロバーズ)の独特な友情表現も、西部劇的な味わいを深くする大きな要素になっている(これだけ女優が登場しない映画も珍しいかも)。脇役として、この後ニューシネマの傑作「真夜中のカーボーイ」でブレイクするジョン・ヴォイトが出演している点も注目。

ドク役のジェイソン・ロバーズ。彼らの友情も見どころのひとつ

アープ役のジェームズ・ガーナ―

墓石と決闘 好評発売中
Blu-ray=4,800円+税
【封入特典】解説書(解説:岩本克也)、縮刷版劇場チラシ(レプリカ)
【映像特典】オリジナルトレーラー
\テレビ朝日「日曜洋画劇場」版日本語吹替音声を収録/
ジェームズ・ガーナー(羽佐間道夫)、ジェイソン・ロバーズ(久松保夫)、ロバート・ライアン(納谷悟朗)、アルバート・サルミ(富田耕生)、チャールズ・エイドマン(穂積隆信)、スティーヴ・イーナット(田中信夫)
(C)2019 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
アメリカン・ニューシネマ×青春×ウエスタン
「スパイクス・ギャング」The Spikes Gang(1974)
続いての「スパイクス・ギャング」(1974)は、当時流行のニューシネマ風味を加えた異色西部劇だ。なんといっても主役がまだ子供ともいえる三人の少年。純粋な彼らを大人の世界にいざなう老ギャング役で、超いぶし銀のリー・マーヴィンが登場するが、あくまで物語の核は無垢な少年たちの冒険ものだ。

いぶし銀の老ギャングが少年たちをいざなう
演じているのは「おもいでの夏」のゲイリー・グライムズと、「アメリカン・グラフィティ」のロン・ハワード&チャーリー・マーティン・スミスという、まさしくニューシネマ世代の若手たち。青春映画でもあるウエスタンというのは、きっと以前なら考えられなかったかもしれないが、この頃「男の出発」(これもグライムズ、スミスが出演)や「夕陽の群盗」(「ラストショー」のジェフ・ブリッジス主演)など少年を主人公にした“ジュブナイル西部劇”とも称される秀作が連発されており、本作もそれらに連なる作品の一つと言える。

主役の少年たちを演じたゲイリー・グライムズ、ロン・ハワード、チャーリー・マーティン・スミス
監督は「ミクロの決死圏」などのリチャード・フライシャーで、錆びついてきた西部劇のテイストにフレッシュな新風を吹き込もうとした意気込みが伝わる。苦い味わいのラストもニューシネマ的といえそうだ。

“ジュブナイル西部劇”の一翼を担う傑作

スパイクス・ギャング 好評発売中
Blu-ray=4,800円+税、DVD=3,800円+税
【封入特典】解説書(解説:町山智浩)、縮刷版劇場チラシ(レプリカ)
【映像特典】オリジナルトレーラー
\豪華声優陣が参加したTBS「月曜ロードショー」日本語吹替音声を収録/
リー・マーヴィン(小林清志)、ゲイリー・グライムズ(山田昌人)、ロン・ハワード(中尾隆聖)、チャーリー・マーティン・スミス(塩屋翼)
(C)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
J・ニコルソン&M・ブランド二大スター豪華共演!
「ミズーリ・ブレイク」The Missouri Breaks(1976)
そして「ミズーリ・ブレイク」(1976)はアメリカ建国200年である1976年に製作された作品。この年、もう一つ建国200年を記念した西部劇にクリント・イーストウッド監督・主演の「アウトロー」があったが、そちらが血縁でもなく人種も様々な流れ者が集まって新たな“家族”を作っていく“アメリカの未来”を描いていたのに対し、「ミズーリ・ブレイク」は開拓時代を経ていかにアメリカの今が作られたか、その源流を辿ったような作品。

舞台は1880年代のモンタナ(1889年に合衆国41番目の州になった)で、大地主から馬を盗んだ一味のリーダーでありながら、その地主の土地の一画で新生活を始めようとするローガン役にジャック・ニコルソン、大地主が馬泥棒一味を退治するために呼び寄せた変わり者の殺し屋クレイトン役にマーロン・ブランド。

ローガン役のジャック・ニコルソン

クレイトン役のマーロン・ブランド
この二大クセモノ男優を戦わせるのが、これまたニューシネマの代表的名作「俺たちに明日はない」を放ったアーサー・ペン監督。爬虫類のような気味の悪い殺し屋の変質ぶりを嬉々として演じるブランドが出色。彼らを囲むサブキャラでハリー・ディーン・スタントン、ランディー・クェイド、フレドリック・フォレストら通好みの個性派アクターが顔をそろえているところも見逃せない。

ブランドの怪演にも注目

ミズーリ・ブレイク 好評発売中
Blu-ray=4,800円+税、DVD=3,800円+税
【封入特典】解説書(解説:大内稔)、縮刷版劇場チラシ(レプリカ)
【映像特典】オリジナルトレーラー
\懐かしのTBS「月曜ロードショー」日本語吹替音声を収録/
マーロン・ブロンド(田口計)、ジャック・ニコルソン(樋浦勉)、ランディ・クエイド(井上真樹夫)、キャスリーン・ロイド(芝田清子)、フレデリック・フォレスト(幹本雄之)、ハリー・ディーン・スタントン(杉田俊也)
(C)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
“ミスター西部劇”のジョン・ウェインの遺作
「ラスト・シューティスト」The Shootist(1976)
最後に控えた「ラスト・シューティスト」(1976)は、これも1976年製作作品だが、“ミスター西部劇”ことジョン・ウェインの遺作であり、彼が72歳で亡くなった(1979年6月)直後に日本公開された。原題はただの『シューティスト』で『ラスト』は日本独自で付けたものだが、まさにウェインのラスト主演作であると同時に、“ラスト・アメリカン・ウエスタン”とも評された珠玉の傑作である。

伝説のガンマンJ・B・ブックを演じたジョン・ウェイン
がんで余命わずかと診断された伝説のガンマン、J・B・ブックスが主人公だが、ブックスと彼を演じるウェイン自身の人生をだぶらせずにはいられない。ブックスの若き日の姿として、「ホンドー」「リオ・ブラボー」「エル・ドラド」といったウェイン主演作のワンシーンが挿入されるせいもあるだろうが、ウェイン自身ががんでこの世を去ったという事実と照らし合わせるだけで、ブックス最後の七日間を描く本作を、西部劇の王様ウェインを手厚く見送るための抒情詩と見てしまうことは禁じ得ない(ただし本作製作後、ウェインにはまだ新作企画があったそうで、彼自身にこれを遺作にするつもりはなかったかも)。さらに時代設定が1901年1月という、20世紀が始まったばかりの早春で、英国ではヴィクトリア女王が崩御したというニュースが新聞を飾る。ある時代の終わりと始まりを予期させるバックボーンも心憎いばかり。

がんに侵された老ガンマンの最後の日々を描く

本作は“西部劇の王様”と呼ばれたウェインの遺作となった
この秀作を演出したのは「ダーティハリー」などの名匠ドン・シーゲル。ウェインは実は「ダーティハリー」主演候補になったこともあったが、後にこれを断ったことをとても後悔していたそう。念願かなっての初顔合わせとなったが、シーゲルはウェインに敬意を払い、いつもの過激なバイオレンス描写を抑え、西部劇という以上に深みのある人間ドラマとして捉えた。ブックスを慕う少年ギロム役は「スパイクス・ギャング」でも好演したロン・ハワード。ウェインが次世代のハリウッドを後にオスカー監督になるハワードに託したかのように見えるラストも胸を打つ。

少年ギロム(左)を演じたのは、のちのオスカー監督ロン・ハワード

ラスト・シューティスト 好評発売中
Blu-ray=4,800円+税、DVD=3,800円+税
【封入特典】リーフレット(解説:大内稔)、縮刷版劇場チラシ(レプリカ)
\豪華声優陣による「ゴールデン洋画劇場版吹替音声」を収録/
ジョン・ウェイン(小林昭二)、ローレン・バコール(馬渕晴子)、ロン・ハワード(水島裕)、ジェームズ・ステュアート(浦野光)、リチャード・ブーン(長堀芳夫)、ヒュー・オブライアン(池田勝)、ハリー・モーガン(永井一郎)、ジョン・キャラダイン(北村弘一)
(C)1976 Dino De Laurentiis Company All Rights Reserved Artwork and Supplementary Materials © 2016 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved
全タイトルに収録!超一流の声優陣による日本語吹替版
これらのブルーレイ・DVDはすべてに日本語吹替え版が収録されていて、いずれも往年のTV洋画劇場で放送された音声(名声優のオンパレード!)を使用しているのも嬉しい。二度見、三度見したくなること請け合いだ。