★1983年、フランシス・フォード・コッポラ監督の「アウトサイダー」(スーザン・E・ヒントン原作)が公開されたのをきっかけに、アメリカのメディアでは少年期から大人へ成長する狭間にあった主要キャストを<YA(ヤング・アダルト)>スターと呼んで特集を組んだ。その約2年後、今度は活躍目覚ましい若手の俳優を一括りにした<ブラッド・パック>(「小僧の集団」的な語意)というちょっと皮肉ったような造語がメディアを賑わすようになる——これは、前者の<ヤング・アダルト>と比較すると、同じ成長期に属する俳優であっても、いわゆる一般的な青春映画寄りのイメージが強く、このワードが使われ始めた当初で言うと、ジョン・ヒューズ監督の「ブレックファスト・クラブ」(1985) や、ジョエル・シュマッカー監督の「セント・エルモス・ファイヤー」(1985)等で活躍していた主要キャストがそれに当てはめられていた。また、それらの作品に出演していない同年代の俳優たち(マシュー・ブロデリック、ジョン・キューザック、その他)も、ムーブメントづくりの一環として<ブラッド・パック>括りに加えられたこともある。もっとも、そのような十把一絡げの扱いをされた大半の若手俳優たちにしてみれば、注目されるのは有難いにしろ、決して手放しで歓迎できるものではなかったようだ。
その後、枝分かれした彼ら(彼女ら)各々の出演作は、演じたジェネレーションやジャンルに関係なく、<ブラッド・パック>の新作として扱われる傾向がしばらく続くことになる。
実際のところ、<ヤング・アダルト>とは、もともと存在していた呼称(子供から大人へ変化していく不安定な青春期を指す)を、そのワードとイメージがマッチした「アウトサイダー」の主要キャストに重ねたものであって、その後にメディアで取り上げられた<ブラッド・パック>のそれと意味合いは異なるものだった。しかし、その中にはエミリオ・エステべスやロブ・ロウなど、後の<ブラッド・パック>メンバーも含まれていたため、今日、アメリカでは、遡って「アウトサイダー」も<ブラッド・パック>作品の奔りとして位置付けされるケースも間々ある。しかし、リアルタイムで当該作品を鑑賞したファンにとっては、複雑で屈折した環境下における青春像を描いた「アウトサイダー」の主要キャストが<ヤング・アダルト>で、その約2年後にメディアを賑わせた一般的な学生~新社会人生活の中における青春像を描いた「ブレックファスト・クラブ」や「セント・エルモス・ファイヤー」などに出演した主要キャストに対しては、<ブラッド・パック>としての印象が強い傾向にある。
その中でも、当時の活躍ぶりが突出していたのは前述の3作品全てに出演していたエミリオ・エステべスで、コメディからアクション、SF、ホラー、ウェスタンに至るまで幅広いジャンルで主演をこなしながら、20代半ばにして、監督・脚本まで手掛ける多才ぶりだった。直近でも、2018年に「パブリック 図書館の奇跡」で、監督・製作・脚本・主演を務め、高い評価を得ている。
SCREEN Collectionsでは、「アウトサイダー」、「セント・エルモス・ファイヤー」の全米公開当時のメインキャストによるヴィンテージ・オートグラフをはじめ、エミリオ・エステべスが「アウトサイダー」撮影時に着用していたクルー・ジャケットなど、1980年代を担った俳優たちのアーカイブ・コンテンツを保管。<ギャラリー・コレクション>コーナーでは、オートグラフを中心にその一部を公開します。