(カバー画像:©&TM 2018 MARVEL)
杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター。雑誌や劇場パンフレットなどにコラムを執筆。アメコミ映画のイベントなどではトークショーも。大手広告会社のシニア・エグゼクティブ・ディレクターとしてアメコミ映画のキャンペーンも手がける。
SPUMCとは?
2020年5月29日からイオンシネマさんでヴィン・ディーゼル出演の「ブラッドショット」が営業再開された館から順次公開。この作品はヴァリアントという出版社のコミックが原作のアメコミ物。ウィルス禍を経て日本の映画業界が再起動するきっかけをアメコミ・ヒーローが担うというのはちょっと嬉しい。
本作品はソニー・ピクチャーズの製作ですが、ソニーさんといえば「スパイダーマン」シリーズ!今月はそのソニーが仕掛けようとしている、新たなアメコミ映画世界SPUMCの話題です。SPUMCとはSONYPICTURES UNIVERSE OF MARVEL CHARACTERSの略。“マーベル・キャラで構成されたソニー版シネマティック・ユニバース”みたいな意味。
あれ?では「アベンジャーズ」系のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)とどう違うのか?実はソニーはディズニーでMCUが立ち上がる前に〈スパイダーマンの映画化権〉は手に入れていました。この〈スパイダーマンの映画化権〉には〈スパイダーマンのコミックをベースに登場するキャラの映画化権〉も含まれます。だからソニーはMCU以前にトビー・マッガイアの「スパイダーマン」映画を、MCUとはリンクしない形でアンドルー・ガーフィールドの「アメイジング・スパイダーマン」シリーズを公開。
ややこしいのはトム・ホランドのスパイダーマンだけは“ソニー籍でありながらMCUのキャラ”というディールをソニーとディズニーがかわしています。なのでトム・ホランドのスパイダーマンが登場する「アベンジャーズ/エンドゲーム」と「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」は内容的につながっていますが前者はソニー、後者はディズニーの映画です。
ヴェノム、モービウス以外にも次々と新作が予定されているSPUMC
こうしたMCUとのリンクは残しつつソニーは〈スパイダーマンのコミックをベースに登場するキャラの映画化権〉を使ってMCUとは別にSPUMCを立ち上げようというわけです。
この言葉自体MCUとの区別化をさけるため現状ソニーの人やメディアが使っているのでどこまで一般流通するかわかりませんが、現状のSPUMCの予定作はいまのところ『モービウス』(2021年3月19日:ジャレッド・レトが吸血コウモリ怪人を演じる)『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年6月25日:ヴェノム続編。ウディ・ハレルソンが最凶ヴィラン、カーネイジ役)『スパイダーマン新作』(2021年11月5日:トム・ホランド版3作目。これはMCU)、『スパイダーマン:スパイダーバース2』(2022年10月7日:アカデミー賞受賞のアニメ映画の続編)、『タイトル未定作』(2022年?)です。公開日はいずれも全米公開日。
『タイトル未定作』とは、もともとソニーは何らかのSPUMC作品を2021年10月8日に公開するハズだったのですがウィルス禍で延期。噂では『マン・ウルフ(狼男ヒーロー)』『シニスター・シックス(ヴィラン6人が結集)』『ソロ(テレポート能力持つ傭兵)』『スパイダーウーマン(マーベルでも人気の女性ヒーロー)』『マダム・ウェブ(サイキック能力を持つ女性)』『ジャックポット(メリー・ジェーンにそっくりな女超人)』あたりではないかと言われています。
さてどの映画が来るにしても、気になるのはトム・ホランドのスパイダーマンとのリンク。これについてMCUのプロデューサーでマーベル・スタジオの社長ケヴィン・ファイギはスパイダーマンのことを「複数のシネマティック・ユニバースを行き来する唯一のヒーロー」と位置付けており、MCUとSPUMCの両方に登場可能とのこと。恐らくマルチバース(パラレルワールド)の設定を使いどっちの映画群にも出てくる?考えるだけでもワクワクですね。
一方トビー版「スパイダーマン」3部作を成功させたサム・ライミ監督が「ドクター・ストレンジ」続編の監督でMCUに参加も決まっておりこれも嬉しいです。