本作の主人公は17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)。母の死をきっかけに現実世界で心を閉ざしているすずは、全世界で50億人以上が集う仮想世界<U>に参加し、歌姫ベルとして心に秘めた歌を歌うことで一躍世界の人気者に。そんなベルの前に<U>で忌み嫌われる竜の姿をした謎の存在が現れストーリーは動き出す。
主人公すず/ベル役は音楽業界注目の中村佳穂が担当。すずの幼なじみ・しのぶくんこと久武忍を成田凌、カヌー部を1人で立ちあげた天真爛漫で真っ直ぐな男子生徒・カミシンこと千頭(ちかみ)慎次郎役を染谷将太、吹奏楽部でアルトサックスを吹くモデルのような女の子・ルカちゃんこと渡辺瑠果を玉城ティナが、すずの親友で毒舌メガネ女子・ヒロちゃんこと別役弘香役をYOASOBIのikuraとして知られる幾田りらが演じている。さらに、<U>の世界で突然、すずの前に現れた謎の存在・竜役を佐藤健が務めている。
佐藤健が告白!試写で驚いた事実とは?
アフレコの佐藤の印象について中村は「一人の演者として接してくれたのが、とてもありがたかったですし、素敵だと思いました」と笑顔で振り返る。佐藤は声優初挑戦の中村の演技について「素晴らしい表現者です。僕が教えを乞いたいと心から思いました。歌うようにセリフを言い、語りかけるように歌を歌う方。呼吸や”はぁ”という息づかいがすでに歌っているという印象で、”どうやってるの?”と何度も訊きたくなりました。ご一緒できて光栄でした」とズバ抜けた表現力を絶賛した。
竜の声はエフェクトをかけるという約束のもとアフレコされた。予告でもエフェクトがかかった声が流れていたが、本編では外されている。初号でその事実を知った佐藤は「冷静には観れませんでした(笑)。エフェクトでなんとかしてくれるというのが安心材料だったのに……、初号を観るまで(エフェクトが外された)情報は隠蔽されていました」と暴露。エフェクトを外したのは、佐藤演じる竜の声が素晴らしすぎたからという理由が伝えられると「どうですかね、諸説あります」と謙遜していた。
染谷将太「現実世界で起こり得ない感動!唯一無二の世界観」
成田が演じたしのぶくんは学校で女子からの人気も高く、セリフもかっこいいキャラクター。中村は印象的だったシーンについて”すず !”と名前を呼ばれるシーンを挙げ、「劇中のすずのように私も”ドキッ”としました。しのぶくんはグッズが売れそうなかっこいいキャラクターだと思いながら演じていました。私はしのぶくんのキーホルダーがほしいです」とニッコリ。成田は「お母さんのようにすずをやさしく包み込むイメージで演じました」としのぶくんの優しい感情が見えるような演技を心がけていたことを明かした。
染谷は「インターネットの世界は掴みづらいものだけど、細田監督が描くと何かを触っているような、温度感みたいなものが生まれます。仮想世界と日本の原風景とのギャップ、そして没入感もすごいので、一瞬で観終わってしまったという印象です。心を持っていかれました。現実世界では起こり得ない感動があり、唯一無二だと思いました」と感想を熱く語った。学校のマドンナ的存在というキャラクターを演じた玉城は「終盤のカミシンとすずと3人のやりとりが大好きです。自分で観ていても汗だくになるくらいドキドキしていました」とお気に入りシーンを伝えた。カミシン役の染谷は「淡くて、細田監督らしいシーンで、僕も大好きです」と微笑んでいた。幾田は「私自身も歌を作りインターネットに投稿したところから始まりました。自分と重なる部分がありました」と作品のテーマへの共感ポイントを挙げた。
成田凌「朝ドラ1話分のスタンディングオベーション」
本作は、フランスにて開催中のカンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクション内に新設された「カンヌ・プルミエール部門」に選出され、公式上映となるワールドプレミアが現地時間15日午後8時に行われたばかり。日本公開に先駆けて世界でお披露目され、上映終了後は14分にわたるスタンディングオベーションも。
初日舞台挨拶にはカンヌからの中継で参加した細田監督は「この拍手は一体、いつまで続くのだろう」と思いながらも、とても光栄だったと振り返る。「インターナショナルな場所でどんな感想があったのか気になります!」という染谷の質問に「Uのスケールの大きさ、ベルの歌声はもちろん、日常の些細なシーンなど感情のささやかなところまで隅々味わってくれている印象です」と現地の反応を解説した細田監督。成田は「14分って朝ドラ1話分の長さですよね? 結構な長さですが、拍手の間どんな風に過ごしていたのですか?」と興味津々。これに対し細田監督は、「握手をしたり、手を降ったり、みんなの手が痛くならないか心配したりしていました」と微笑む。さらにキャスト一人ひとりに対し、「一緒に仕事できてよかったです」と感謝の言葉を伝え、和やかなムードに包まれながら、イベントは幕を閉じた。
取材・文/タナカシノブ