昨年の企画上映「1980年代日本映画――試行と新生」に続いて開催
これは昨2021年 の 企画上映「 1980年代日本映画 ――試行 と 新生」に続き、時代を代表する ヒット 作 や 新しい才能による重要作などを中心に、計 66本( 57プログラム)によって、 1990年代の日本映画を回顧する企画 。国立映画アーカイブのみならず、国内外を通して前例のない試みとなるという。
日本映画史に残るヒット作品、社会現象になった話題作
当時の 日本映画 の 歴代 配給収入 記録 を 塗り替え た 『 もののけ姫 』(宮崎駿 をはじめ 、 90年代の 実写日本映画最大の ヒット となり シリーズ化 もされた 『 踊る大捜査線 THE MOVIE』( 本広克行) 、 ブーム を巻き起こし 後にハリウッドでもリメイクされた 『 Shall we ダンス? 』( 周防正行) や『 リング 』( 中田秀夫) 、 単館系 26週ロングランとなり映画賞を席巻した話題作 『 月はどっちに出ている 』 (崔洋一 )など を上映する。
第一線で活躍する監督たちの初期作に注目
1990年代に は様々な分野から 監督デビューが相次ぎ、 その多くが 現在も活躍し続けている。 是枝裕和『ワンダフルライフ』、 岩井俊二 『 Love Letter』、橋口亮輔 『二十才 の微熱』、 松岡錠司 『きらきらひかる』、 佐藤嗣麻子 『エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』、 園子温『部屋 THE ROOM』、 熊切和嘉『鬼畜大宴会』、 三池崇史 『新宿黒社会 チャイナマフィア戦争』、廣木隆一 『 800 TWO LAP RUNNERS』、 平山秀幸 『ザ・中学教師』、 青山真治 『 Helpless』、矢口史靖 『ひみつの花園』など、日本映画を牽引するトップランナーたちの 若々しい初期作品に 注目したい。
女性監督の躍進
1990年代には女性の監督が増え始めた。 松浦雅子 『 人でなしの恋 』、 佐藤嗣麻子 『 エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』、 風間志織 『 冬の河童 』、 松井久子 『 ユキエ 』、 浜野佐知 『 第七官界彷徨 尾崎翠を探して 』 といった 長篇 作品 、 また 河瀨直美による中篇や実験映画で活躍した小口詩子 、 和田淳子の短篇作品も上映する。
映画に見る女性像の変遷
「ジェンダー」という言葉が定着し、性別役割に対する意識が変化した1990年代には、女性のライフスタイルについても従来とは異なる観点で描かれるように。主体的なヒロイン像を描いた『 ひみつの花園 』(矢口史靖)、働く女性のシスターフッドを題材とした『 OL忠臣蔵 』(原隆仁)、時代に即した家庭像を反映した『 毎日が夏休み 』(金子修介)など、ユニークな試みに注目を。
多様化するセクシュアリティ
1990年代は、同性愛者に対する差別が違憲とされたり、ゲイやレズビアンの人々がメディアで積極的に取り上げられるなど、 LGBTに対する意識が前景化した時代でもあった。映画もまた、この 主題 を意欲的に取り上げた。本上映会では、セクシュアリティの混沌を題材とした実験映画『 ばら科たんぽぽ 』(小口詩子)や、女性同性愛描写が含まれる『 エコエコアザラク WIZARD OF DARKNESS』(佐藤嗣麻子)、日常ドラマにおいて 男性同性愛者を描いた『 二十才の微熱 』(橋口亮輔)『 800 TWO LAP RUNNERS』(廣木隆一)『 きらきらひかる 』(松岡錠司)などを上映。
時代を魅了した俳優たち
《活躍した話題作を上映》役所広司『Shall we ダンス?』『シャブ極道』『CURE』 /豊川悦司『きらきらひかる』『Love Letter』『居酒屋ゆうれい』 /永瀬正敏『死んでもいい』『我が人生最悪の時』/織田裕二『踊る大捜査線 THE MOVIE』 /哀川 翔 『ネオ チンピラ 鉄砲玉ぴゅ~ 』 片岡礼子『二十才の微熱』『鬼火』
《俳優キャリアの 原点 若き日の 作品 を上映 》西島秀俊『居酒屋ゆうれい』/ 浅野忠信 『 Helpless』 /井浦新( ARATA 『ワンダフルライフ』/西田尚美『ひみつの花園』 /渡辺真起子『 M/OTHER』/ 板谷由夏 『 アベックモンマリ 』
アニメーション映画の 作家性の深まり
1990年代は、劇場用アニメーションが幅広いファン層を獲得して作家性が深ま り 、インパクトの大きな作品が送り出された 。 多大な 影響を及ぼした作品として『 機動警察パトレイバー 2 the Movie』( 押井守 )、『 耳をすませば 』(近藤喜文)、『 もののけ姫 』(宮崎駿) 、『 PERFECT BLUE』(今敏) を 35mmフィルムで鑑賞できる。
海外映画祭など国際的に評価された作品
1990年代には、海外映画祭で日本映画が注目を集め、国際的な評価が高まった。 ヴェネツィア国際映画祭で受賞した北野武『 HANA-BI』、カンヌ国際映画祭で評価された諏訪敦彦『 M/OTHER』 、 ベルリン国際映画祭などで 受賞した 篠崎誠『 おかえり 』、 ロカルノ国際映画祭で注目された塩田明彦『 月光の囁き 』 、サン・セバスチャン国際映画祭やナント三大陸映画祭 などで 受賞した 是枝裕和『 ワンダフルライフ 』 などを上映する。
「1990年代日本映画―― 躍動する個の時代」
(英題)Flourishing Independent Filmmakers: Japanese Films in the 1990s
会期
第 1期: 2022年 2月 1日(火) 3月 6日(日)
第 2期: 2022年 4月 5日(火)― 5月 1日(日)
会期中の休館日:月曜日
会場 : 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[ 2階]
お問合せ 050-5541-8600(ハローダイヤル)