児童⽂学の⼤家E・ケストナー 唯⼀の⼤⼈向け⻑編⼩説、原作
昨年のベルリン国際映画祭コンペティション部⾨に出品され、ドイツ映画賞では最多10部⾨ノミネート主要3部⾨を受賞するなど、⼤きな話題を呼んだドイツ映画『Fabian-Going to the Dogs』が、『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』の邦題で6 ⽉10 ⽇(⾦)よりBunkamura ル・シネマほか全国順次公開される。原作は、「エーミールと探偵たち」「点⼦ちゃんとアントン」「⾶ぶ教室」「ふたりのロッテ」などで知られ、⽇本でも多くのファンを持つ児童⽂学の⼤家エーリヒ・ケストナーが書いた唯⼀の⼤⼈向け⻑編⼩説「ファビアン あるモラリストの物語」(みすず書房刊)。
舞台は1931年のベルリン。出⼝のない不況は⼈々の⼼に空虚な隙間をつくり、ひたひたと迫るナチスの⾜⾳が聞こえてくる。作家を志してベルリンにやってきたファビアンは、時代の中でどこへ⾏くべきか惑い、⽴ち尽くしていた。⼥優を夢⾒るコルネリアとの恋。ただ⼀⼈の「親友」ラブーデの破滅。やがてコルネリアは⼥優への階段を登るためファビアンの元を離れ、次第に⼆⼈の関係は崩壊していく…。ナチス台頭の前夜、空虚な時代の⼀⼈の⻘年の恋と惑いは、まさに現代と重なる物語だ。
監督は、本作が本邦初公開作となるドミニク・グラフ監督。刺激的な映像のコラージュや、往年のベルリンの美しさを際⽴てる濃密な描写などを縦横無尽に駆使し、原作の世界観を⾒事に再現した。主演は、『コーヒーをめぐる冒険』でドイツ映画賞主演男優賞はじめ数々の賞を獲得し、その後も⼤ヒットスリラー『ピエロがお前を嘲笑う』や『ある画家の数奇な運命』の主演で注⽬を浴びたドイツ映画界のトップスター トム・シリング。ヒロインは、『さよなら、アドルフ』に主演し、その可憐な姿で⼤きな注⽬を集めたドイツの⼈気⼥優ザスキア・ローゼンダール。2⼈は、『ある画家の数奇な運命』に続き2度⽬の共演となる。
あわせて⽇本版ポスタービジュアルも解禁された。「僕はどこへ?」のキャッチコピーと⼾惑いの表情を浮かべる主⼈公ファビアンの姿が印象的だ。背景には、ナチスの象徴である“ハーケンクロイツ”、燃やされる本など、ファビアンを取り囲む時代を象徴する写真が並ぶが、ファビアンの惑いに共感を覚える現代の⽇本⼈は多いだろう。右か左か、前か後ろか、⼀体どこへ⾏くべきなのか。90年前の⼩説が、⾒事に「今、この世界」の映画になったことが感じられる。
(C)Hanno Lentz / Lupa Film