『ゲット・アウト』『アス』のプロデューサーが、新たな衝撃を呼び起こすパラドックス・スリラー『アンテベラム』のBlu-rayが本日4月27日(水)より発売!驚愕のギミックを備えたスリラーでありながら、人種差別問題を抉り出す本作の魅力をご紹介します!(文・斎藤博昭/編集・SCREEN編集部)
ネタバレ禁物!大胆な罠にハマれ!
これから映画を観る人にとってネタバレは禁物だ。特に予想外の展開や仕掛けが用意された作品は、できる限り予備知識を少なくして向き合うと、大きなサプライズとともに興奮や感動を受け取ることができる。2021年に公開された『アンテベラム』は、その点でハイレベルな一作。物語は、アメリカ南部のプランテーションで始まる。奴隷制度が信奉された土地で労働を強いられる黒人女性のエデンが、命の危険を感じ、恐怖に怯える日々を送りながら、脱走を試みようとするドラマが展開。
そしてもうひとつ、社会学者でベストセラー作家のヴェロニカが、講演会に呼ばれ、不穏な事件に見舞われる物語が同時進行する。接点のないと思われた2つの世界がどう交わっていくのか? 背筋が凍るシーンも用意しながら、想像を絶するクライマックスへとなだれ込んでいく野心作。
エデンとヴェロニカの両ヒロインを、ミュージシャンとしても人気のジャネール・モネイが1人2役で好演。脚本・監督はジェラルド・ブッシュ、クリストファー・レンツ。気鋭コンビが仕掛ける大胆な罠に、観ているこちらは陶酔するようにハマってしまう。映画ファンも“未体験”の領域に導くのが、この『アンテベラム』だ。
CHECK POINT1
社会派作品の系譜を継ぐ、“時代”が求めたスリラー!
スリラーやホラーは基本的に“怖がらせる”ことが目的だが、じつは社会問題のテーマを密かに織り込んでいるケースも多い。たとえば『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968)に始まるジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ3部作は、人種差別、資本主義社会、ベトナム戦争への批判が込められていたし、特に近年は社会派のスリラーやホラーがひとつのブームになっている。『パージ』シリーズは格差社会、『ミッドサマー』(2019)は白人至上主義、『透明人間』(2020)はフェミニズムを浮き彫りにした。
このブームの中心にいるのが、ホラーに人種差別問題を絡めるジョーダン・ピール監督。アカデミー賞作品賞候補になった『ゲット・アウト』(2017)や、『アス』(2019)は黒人の立場から鮮烈にこのテーマを描き、大ヒット。その2作のプロデューサーが手がけたのが『アンテベラム』で、まさに時代が求めたスリラーと言っていい。
映像特典でチェック!
監督とプロデューサーの信頼関係はどんなものなのか? 監督のブッシュとレンツは、本作のプロデューサーたち、レイモンド・マンスフィールドとショーン・マッキトリックが、同じ思いと覚悟で映画を作り上げてくれた感謝を口にする。次回作も一緒に作ることが特典映像のインタビューで明言され、本作で育まれた深い絆を実感したい。
CHECK POINT2
観直すと新たな発見も!?斬新なギミックに驚愕
そうした社会派スリラー/ホラーのブームの中にあっても、この『アンテベラム』は異色中の異色。奴隷制の世界と、そうではない世界が並行して描かれるのだが、2つのドラマが交わる瞬間が訪れる。そのアイデアには、これまで多くの映画を観てきた人も驚きを禁じ得ないはず。
2つのドラマ、それぞれに人種差別のテーマが色濃く込められているのだが、両者がリンクすることで、そのインパクトは倍増どころか絶大になって、エモーショナルに心を刺激してくる。改めて、この展開の大胆さ、斬新さに感心することだろう。そして作品のギミックを知った後に、最初から観直すことで、また新たな発見があり、本当の恐怖を体感できるのも『アンテベラム』の大きな魅力。繰り返されるスリルと面白さこそ、Blu-rayならではの醍醐味だ。
映像特典でチェック!
映画としてはハードルが高いチャレンジをどう克服したかを、脚本の主要部分を担当した監督のレンツが解説。奴隷制をテーマにすると過去の時代の物語だと受け止められやすいが、家族から引き離され、恐怖の世界に拘束される感覚を実感させるため、現代的な要素を取り入れたこと。それをホラーとして描くことの正当性や工夫が興味深い。
CHECK POINT3
注目の“表現者”ジャネール・モネイが才能フル発揮!
ジャネール・モネイといえば、ミュージック界のトップスターとして有名で、音楽プロデューサー、モデルとしても大活躍。そして俳優業に進出して映画初出演の『ムーンライト』(2016)で演技の才能を証明。3人の主人公の1人を演じた『ドリーム』(2016)、その後の『ハリエット』(2019)など、彼女が出た映画はことごとく高評価を受けている。
2021年に日本でも話題になった『アメリカン・ユートピア』(2020)でも重要なパートでジャネールの曲が使われたりして、ジャンルにとらわれない“表現者”として彼女は絶好調である。
そんなジャネールの才能がフルに発揮されたのが、この『アンテベラム』。ヴェロニカとエデンという、境遇も違えば、外見の印象も異なる2役で、それぞれのドラマチックな運命や決断を体当たりで演じている。いま最も輝いているスターのオーラとともに、その熱演に引き込まれるのは間違いない。
映像特典でチェック!
監督たちは、ジャネールが「瞳や見つめ方だけでたくさんのことを表現できる」と絶賛。彼女が難役に対して、深くのめり込めるように、安心できる空間を作り出すことが仕事だったと告白する。ジャネール自身は多くの黒人女性への敬意を忘れずに演じたことを語っているが、インタビュー映像からは劇中の2役ともまったく違う素顔も伝わってくる。
『アンテベラム』Blu-rayは4月27日リリース!
Blu-ray:5280円(税込)
■音声:英語Dolby True HD 5.1chサラウンド
■字幕:日本語字幕
■映像特典(約23分)
・インタビュー(ジェラルド・ブッシュ&クリストファー・レンツ/ジャネール・モネイ)
・撮影風景
・劇場予告編
※撮影風景においては、日本語字幕の付与はございません。
発売元:株式会社キノフィルムズ/木下グループ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
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