『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の歌』などで知られるヴィム・ヴェンダース監督が来日し、日本の俳優・役所広司と組んで東京の公共トイレをテーマにした映画を製作することを明かした。

日本のきれいなトイレを世界に知ってもらい、ずっときれいに使い続けるために

これは2022年5月11日に東京・渋谷で行われた「THE TOKYO TOILET Art Project wth Wim Wenders」と題した記者会見で発表されたもの。これは柳井康治氏と日本財団が多様性を受け入れる社会の実現を目的に実施する公共トイレ改修プロジェクト。渋谷区全面協力の下、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを区内17か所に設置する(現在12か所まで設置)。趣旨に賛同した世界的に活躍する16名の建築家やクリエイターがそれぞれの個性を発揮し、2020年から東京都渋谷区内に新たに公共トイレをデザインし、改修されている。

画像: 左から建築家の安藤忠雄、ヴェンダース、役所

左から建築家の安藤忠雄、ヴェンダース、役所

今回このプロジェクトから世界的な監督であるヴィム・ヴェンダースに声をかけ、この日本の清潔なトイレを世界中にアピールする映画を製作することになった。このThe Tokyo Toletには特別な清掃員たちがおり、365日トイレを快適にするために働いている。そんな彼らを主人公にしたアートフィルムをヴェンダース監督と日本を代表する俳優・役所広司がタッグを組み製作するというもの。

画像: 左から長谷部健渋谷区長、安藤、ヴェンダース、役所、高崎卓馬クリエイティブ・ディレクター、柳井康治プロジェクト・オーナー

左から長谷部健渋谷区長、安藤、ヴェンダース、役所、高崎卓馬クリエイティブ・ディレクター、柳井康治プロジェクト・オーナー

この発表会のため久々に来日したヴェンダースは、『このような勇敢な方々とご一緒できて光栄です。10年くらい東京に来ていなかったので、ちょっとホームシックな気分でした』とあいさつ。現在シナリオハンティングも始めているという。『最初に依頼を見て「なんだって?トイレの映画?」と驚いたのですが、すごいチャレンジだと考えました。でもそこからいろいろな魔法の扉が開いていくように感じました。素晴らしいクリエイターの皆さん、敬愛する建築家の安藤忠雄さん、才能ある俳優の役所さんとご一緒できて、社会的に意義のある作品になりそうだと』

トイレの清掃員を演じることになった役所広司もヴェンダースとのコラボに驚いたという。『役者生活を40年くらいやってきましたが、ずっとここで頑張ってきたご褒美のようなものだと思いました。まさかあのヴェンダース監督とお仕事ができるなんて』と喜びを語る役所は今回の役について『監督にどういう役を考えているか先ほどちょっと伺ったんですが、365日もトイレをきれいにするという大変な仕事をする人だから、基本的に人間が好きで、献身的な人だろうと。彼が仕事しているところだけでなく私生活はどうなのかということろも考えているようです』とすでに役作りを始めているようなコメントを述べた。

画像: 安藤忠雄氏設計「あまやどり」      撮影:永禮賢、提供:日本財団

 安藤忠雄氏設計「あまやどり」      撮影:永禮賢、提供:日本財団

美しく機能的な公共のトイレを作るだけでなく、どこまできれいに維持していけるか? そのためにはメンテナンスが必要で、きれいにする人と共に、使う人の意識も変えなければいけないということがこのプロジェクトの二つの意義という。使う人がずっとこのトイレたちをきれいにしていこうと思えるような作品を作るということは、美しい映画が生まれるに違いないとヴェンダースも役所もプロジェクトに関わるクリエイターたちも期待している様子だった。

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