第75回カンヌ国際映画祭でソン・ガンホが「最優秀男優賞」を受賞し「エキュメニカル審査員賞」も受賞した『ベイビー・ブローカー』(2022年6月24日公開、ギャガ配給)。6月13日、カンヌ後に韓国でプロモーションを終えた是枝裕和監督の、日本帰国後初の公の場となる凱旋記者会見が都内で行われた。

最優秀男優賞ソン・ガンホとの強い信頼と絆を語る!

会見場には、大勢のマスコミ陣が駆けつけ、質疑応答の時間は最後まで記者たちの挙手が止まらないほど白熱!カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホとの強い信頼と絆を感じさせるエピソードも飛び出すなど、大盛り上がりの凱旋会見となった。

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ソン・ガンホが男優賞を受賞した時の感想について。
「彼の名前が呼ばれたとき、なるほどなと思いました。この作品にとって最高のゴールではないかとその瞬間に思いましたね。監督賞を受賞したパク・チャヌク監督のチームと一緒にその夜はお祝いしたんですが、みんなハッピーでした。『誰も知らない』のとき、男優賞を受賞した柳楽(優弥)くんはもう日本に帰国していて、僕一人で受賞の知らせを聞いたので、その場でハグしあうとかできなかったんですが、今度はそれができたのでよかったです。
ちょっと気になったのは、ソン・ガンホさんは韓国では国民的人気俳優で、それこそパク・チャヌクやらポン・ジュノら韓国の代表的監督たちの作品で名演を見せてきたのに、たまたま僕の映画で受賞がめぐってきたという気もして、韓国の名匠たちに怒られないか気になりました(笑)」

韓国ではナンバーワンヒットのスタートになったことについて。
「僕は27年くらい前にもともと単館系にかかるような映画でスタートした者なので、それこそ全国1600スクリーンでかかるような興行など、大丈夫かな?という気持ちでした。ライバルの「犯罪都市2」と張り合うのは僕のキャパシティを越えているのでは(笑)? という感じです」

韓国での凱旋プロモーションについて。
「カンヌから韓国に着いたとき、空港の職員たちがずらりと付いてきてしまって、空港が揺れたような感じでした(笑)。ガンホさんのような国民的スターが韓国発のカンヌ男優賞受賞ということで、オリンピックの金メダル以上のような扱いでした。またイ・ジウン(IU)さんの人気が凄すぎて、空港の外にまでファンがあふれていました! 舞台挨拶でも熱狂的でしたが、見た後の反応も悪くないと思います(笑)。というのも『犯罪都市2』のような作品と比べて僕の映画はストーリーに起伏がない(こんなこと言っていいのかな?とつぶやく)し。善悪もあいまいだし(笑)」

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日韓の撮影現場の違いのようなものについて。
「韓国はもうアメリカのやり方を投入してきています。準備も完ぺきにしておかないとやってくれないらしいですが、『僕の場合は現場で作っていくからね』と先に僕のやり方を説明しておきました。週52時間労働というのも決まっていて、4日働いて3日休むという感じですが、働き方改革も進んでいます。日本では若い人がそういう規則のない現場が過酷なようで、なかなかスタッフのなり手がいない。だから日本の撮影現場は高齢化が進んでいます(笑)。監督も僕くらいの年齢の人はもう引退に追い込まれてしまうくらい、若い人がどんどん出てくる。こういうところは考えさせられますね」

子役に苦労したとか。
「オーディションで選んだ子で、すごく勘が良いんですが、撮影が楽しすぎたのか、常にエキサイト状態で(笑)。カン・ドンウォンさんが彼の面倒を見てくれて助かりました。映画の中でみんながホテルの部屋で沈んでいるシーンがあったんですが、彼はベッドで寝ているんですけど、本当に3時間くらい熟睡している間に撮影したんです(笑)。撮影に入る前に部屋を暗くすれば騒ぎつかれていたので寝てしまいそうだったので、暗くしたら本当に寝てくれました(笑)。赤ちゃんは生まれて1か月くらいの子をオーディションで選び、動きのいい子にしました。大人が動くとほほを触ってくるような子を。そういう子供たちのために医者や救急車みたいな車も常駐して、何かあった時のために備えているのもしっかりしているなと思いました」

アジア映画の最近の躍進について。
「アジアをどう捉えるか、ちょっと迷うんですが、今度のカンヌではジャーナリストの数が凄かったかな。韓国からは50媒体くらい来ていました。『PLAN 75』の早川千絵さんのような若い才能が日本から出てくるのも感じますね。数年前くらいから(『ドライブ・マイ・カー』の)濱口竜介監督のことをどう思うかと海外の映画祭で聞かれるようになっていたし。そういう新しい人の変化はちょっとずつありますね」

今度は英語で映画を撮りたいということも?
「いずれチャンスがあれば、という言葉が活字になると消えてしまうんで消さないでくださいね(笑)。カンヌのパーティでハヴィエル・バルデムを見かけて、写真を撮りたくてずっと彼の後を追いかけていたら、振り向きざまに僕を指さして「お前を知っている」というゼスチャーをしてくれたのが嬉しかったですね。ほかにもジェイク・ギレンホールやマッツ・ミケルセンとかもいるのを見ていると、頭の中で彼らを組み合わせた物語を考えたり……というようなことをいずれチャンスがあればやりたいです(笑)」

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ソン・ガンホはどんな人?
「ポン・ジュノが撮影に入る前にオフィスに招いてくれて、そこで話をしたときに『今はいろいろ心配かもしれないが、ソン・ガンホが来たら、すべて彼のペースで進むから大丈夫』と言われました。本当にその通りで、現場に来ると彼は昨日撮影したもののあら繋ぎを見せてというんで、それを毎日のように見せるとすごく褒めてくれるんですが『素晴らしい。でも僕の演技ではたぶん、この前のテイクで演じたやつの方がきっと良いと思う。もちろん最終的には監督の判断だけど』『このセリフはたぶん途中で切った方が良いかもしれない』などと助言してくれて、僕も韓国語がわからないので、ニュアンスの面ではすごく助けてもらいました。そんなやりとりが最後のダビングルームのところまで続いて、最後まで一緒に走ってくれたという感謝の気持ちでいっぱいです」

本作で扱った社会的なテーマについてのキャスト陣からの反応は。
「出来上がった後、ソン・ガンホさんが『これは命を巡る話だ』とメイキングのインタビューで口にしていて、あぁ、そうだなと思いました。家族の話ではなく、もうひとつ“先”にある命を巡る話なんだという捉え方をされてて、そういう言葉で自分が『そうだな』と気づくことはありますね」
と語っていた。

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