危険を顧みず“バズる動画”を優先する人々への警鐘
田舎の広大な敷地の牧場経営で生計を立てる一家。長男オーティス・ジュニア(ダニエル・カルーヤ)は、家業をサボり市街に繰り出す妹エメラルド(キキ・パーマー)にウンザリしているところ、突然、空から異物が降り注ぐ。止んだかと思うも束の間、直前まで会話していた父親が息絶える。オーティス・ジュニアは父親の不可解な死の直前に、雲に覆われた巨大な飛行物体のようなものを目撃したことを妹に明かし、やがて兄妹はその飛行物体の物的証拠を収める“バズり動画”を撮影することを思いつく。
「絶対に見つめてはいけない」“ヤツら”の存在・・・、彼らには想像を絶する事態が待ち受けていた――。
到着したのは、OJから巨大で雲に覆われた異様な飛行物体を一瞬目撃したことを聞いた妹エメラルドが、その飛行物体がフェイクでないことを知らしめる物的証拠を動画に収め、金銭を得ようと思いつくワンシーン。半年前に父が不可解な死を遂げてから、もとより苦しかった牧場経営がさらに悪化し、困難に陥っていた2人。状況を打破するために安直に思いついた計画だったが、彼らはこのあと予想もつかない真の“最悪の奇跡”に直面することとなる。
謎の巨大飛行物体に恐怖を感じながらも、その正体を撮影しようと計画する兄妹の会話を切り取った本編シーンだが、監督を務めたジョーダン・ピールは、壮大なスケールの物語を描く一方で、異常な光景や出来事を目の当たりにしたとき、人々はどのような行動をとるのかということについて本作で訴えかけている。
ピールは「この作品の根底にあるのは“人はスペクタクルに取り憑かれていていいのだろうか”という疑問だ。特に金銭が絡んでくると、本来は純粋であるべきだったり自然であるべきだったりするものが大胆に搾取されるよね」と現代の傾向について指摘している。
そして、例え自分の身に危険が伴う行為であっても、ソーシャルメディアで“バズる動画”を収めるために、その現場を記録することを優先する人たちへの警鐘の意も示している。
エメラルド演じたキキ・パーマーは「SNS中毒でインフルエンサーを目指して躍起になるエメラルドは、この作品が描いているものと大きく関わっています。つまり、自分の外側にある何かを常に追い求め、承認欲求を満たす何かを求め続けている。」と説明し、続けて「たぶん誰もがエメラルドに共感できると思う。自覚できるかどうかは別として、見てほしいという気持ちだけは私たちの多くが持っているから」と言及している。
ピール監督史上の壮大なスケールで完成させたスペクタクルな本作はもちろんのこと、監督が今作でも容赦なく切り込んでいく“誰もが目を背けずにはいられない強烈なメッセージ”を、劇場の大きなスクリーンで目撃したい。
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