アンバサダーは昨年に続いて橋本愛が担当
今年は、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区にて会場が大幅拡大、初の会場となる東京宝塚劇場でオープニングセレモニーを行い、レッドカーペットが復活。TOHOシネマズ 日比谷、丸の内 TOEI、丸の内ピカデリーと大型劇場が上映劇場に加わったことで主要9部門での上映本数も昨年の86本から大幅に増加し110本の上映が決定。
イベント冒頭、本年度の映画祭におけるコロナ対策の検査体制の説明や会場移転・TIFF&TIFFCOMの連携や今年も同時開催する東京フィルメックスでの共催特集に関する紹介があり、チェアマンの安藤裕康による開催の挨拶と、本年度の映画祭の特色に関する発表があった。
世界的に最も著名な日本映画監督である黒澤明監督に、日本と海外の映画交流のシンボルとなって映画界を盛り上げてほしいという願いから、14年ぶりに黒澤明賞が復活。コロナ禍でこの数年あまりできなかった海外ゲストの招待を今年はようやく再開できるようになり、最大で100名近くのゲストが参加する見通しとなっている。
またゲストとして、第35回東京国際映画祭のフェスティバル・アンバサダーに任命された、女優の橋本愛が登壇。昨年に続いて2年連続でフェスティバル・アンバサダーに選ばれた時の想いや意気込みを語った。
Q.2年連続でアンバサダーとなりましたが、いかがでしたか?
A.とても光栄なことだと思いますし、役目を果たさなければと背筋の伸びる想いです。もう一つは、去年はアンバサダーとして、どういうことを発信していけばいいだろうということを模索していたが、今年は自分にできることがもうちょっとないかと考えて、今の日本の映画界の課題について、自分の気持ちをお話しできたらなと思っています。ハラスメントと呼ばれることだったり労働環境の問題だったりで、自分が感じるのは世代間の溝であり、上の世代の方々が積み重ねてきたものを大事にしようという姿勢はすばらしいものだが、下の世代や若い人の声をちゃんと聞こうという、お互いの声を聞くことが、これかのモノづくりにおいてはすごく大事なんじゃないかと思いました。
Q.昨年やってみていかがでしたか?
A.お祭りそのものが大好きなので、映画祭自体大好きですし、昨年は海外の監督や女優さんとお話しする機会があり、語学力や芸術や映画を通してコミュニケーション能力を身につけていかないといけないんだなと、考えさせてくれたきっかけになりました。もう一つは映画や映画祭そのものの役割を考えるきっかけになって、LGBT +Qや環境問題への理解が世界と比べるとまだ浅く、そういったところに目を向けて、歴史や伝統を守っていく姿勢は美しいしすばらしいが、そこからこぼれ落ちてしまう人がたくさんいて、その人たちの苦しみや悲しみに寄り添って作っていくのが映画であり、芸術であるので、そういった存在で助け合いながら、世界をよりよくするお手伝いを映画を通してしていけたらいいのかなと思っていて、東京国際映画祭で改めて世界を見渡して、日本を見つめ直すきっかけになったらいいなと個人的に思っております。
Q.今年の映画祭でやってみたいことなどありますか?
A.青山真治監督はすごく好きな監督ですし、いつかご一緒したいなと思っていた監督だったので、特集上映に足を運べたらなと思っております。
コンペ部門選出の今泉力哉監督・福永壮志監督・松永大司監督も来場
プログラミング・ディレクターの市山尚三より、「コンペティション部門」15作品の紹介に続き、「コンペティション部門」に選ばれた日本映画3作品より、『窓辺にて』の今泉力哉監督、『山女』の福永壮志監督、 『エゴイスト』の松永大司監督が登壇し、作品が選ばれた感想などを語った。
Q. 監督として、東京国際映画祭との関わり方や、コンペに選ばれた感想を聞かせてください。
A.(今泉監督)2013年にも『サッドティー』という作品で「日本映画スプラッシュ部門」で呼んでいただいて、4本5本くらい毎年のように参加させていただいていて、コンペでは『愛がなんだ』という映画で2018年に参加させていただいたぶりになるので、また呼んでいただいて、選ばれて嬉しいなと思っています。
(福永監督)大変嬉しく光栄なことだと思っております。東京国際映画祭の印象というと、自分は長い間海外にいたので参加した経験はあまりなくて、ただ日本を代表する映画祭の一つだと思いますし、映画界にとっても大きなイベントだと思っています。
(松永監督)『アジア三面鏡』の監督として参加させていただいたことがありますが、コンペでは初めてで、映画祭の花形として他の国の映画と並んで自分の映画がどのように見られるかが非常に興味深く、光栄だと思います。
Q. 作品に込めた想いや経緯などを聞かせてください。
A.(今泉監督)稲垣吾郎さんと何かやろうとなり、ずっと自分は恋愛映画を撮り続けているんですけれども、日常に近い恋愛ものをやろうとしていて、今回は主人公の奥さんが浮気していることを知った時に、怒りとか悲しみとかが感情的に起きなかったってことは愛情があるんだろうか?ということに悩む人を描いています。まだ名前のついていない悩みを抱えた人がいっぱいいるのに、その人たちについての作品がまだあまりないな、ということを描くのをずっとやってきて、今回の作品もまさにそういうことをやろうとした作品です。
Q. 映画祭でやってみたいことについて聞かせてください。
A.(福永監督)映画祭は発表の場であり、映画文化への理解を深める場だと思うので、色々な人の作品を拝見するのも楽しみにしていますけど、シンポジウムとかイベントであった人と交流して次に繋げることができればなと思っています。
(松永監督)監督たちと交流するのも楽しみだなと思うのと、『エゴイスト』という作品が、初めて一般上映されるのでどういう反応になるのかがとても楽しみです。
コンペティション部門出品作品一覧
「1976」 マヌエラ・マルテッリ監督 (チリ/アルゼンチン/カタール)
「アシュカル」 ユセフ・チェビ (チュニジア/フランス)
「ザ・ビースト」 ロドリゴ・ソロゴイェン (スペイン/フランス)
「窓辺にて」 今泉力哉 (日本)
「エゴイスト」 松永大司 (日本)
「ファビュラスな人たち」 ロベルタ・トーレ (イタリア)
「輝かしき灰」 ブイ・タック・チュエン (ベトナム/フランス/シンガポール)
「カイマック」 ミルチョ・マンチェフスキ (北マケドニア/デンマーク/オランダ/クロアチア)
「ライフ」 エミール・バイガジン (カザフスタン)
「マンティコア」カルロス・ベルムト (スペイン)
「山女」 福永壮志 (日本)
「孔雀の嘆き」 サンジーワ・プシュパクマーラ (スリランカ/イタリア)
「テルアビブ・ベイルート」 ミハル・ボガニム (キプロス/フランス/ドイツ)
「This Is What I Remember(英題)」アクタン・アリム・クバト (キルギスタン/日本/オランダ/フランス)
「第三次世界大戦」 フーマン・セイェディ(イラン)
オープニング作品
「ラーゲリより愛を込めて」瀬々敬久監督(日本)
クロージング作品
「生きる LIVING」オリヴァー・ハーマナス監督(イギリス)
第35回東京国際映画祭は10月24日(月)~11月2日(水)の10日間の開催期間中、110本(9/21現在で主要9部門で上映が決まっている作品数)の映画が上映される。