約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は、新作『チケット・トゥ・パラダイス』にてジュリア・ロバーツとの息の合った漫才バトル!?が話題のジョージ・クルーニーに注目です。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

目標とする俳優はグレゴリー・ペックとポール・ニューマン!

ローズマリー・クルーニーという美人の歌手兼女優(若い読者のおじいさん世代の憧れだった)を伯母に、父親はハンサムなアンカーマンと、ジョージ・クルーニーは2枚目でセクシーで当たり前の家系なのである。もっとも売り出す前はローズマリーおばさんの家に居候してクローゼットで寝ていたそうだが、そういう下積みの苦労が今のジョージの人間的な魅力の肥やしになっているはず。

初めて会ったのはTV「ER /緊急救命室」(1994 ~ 2009)でイケメン医師を演じていた時。かなり意識過剰で冗談を連発するのも照れ隠しのようだった。髪、眉毛、全てが濃くて周囲から浮いて見えるほどに目立ち、当時はやけに首を振る癖があって一種の貧乏ゆすりのような印象を受けた。

1992年ころのジョージ・クルーニー

Photo by Harry Langdon/Getty Images

「伯母や父から芸能界の浮き沈みを嫌という程見せられたから、スターになる夢などなかった。俳優として安定したら、社会の不平等と戦う事が僕の生きていく使命だと思っている。目標にしている俳優はグレゴリー・ペックとポール・ニューマン。二人共、信念を持って生き、ヒューマニズムにあふれていたから」などとコメントしていた。

『オーシャンズ11』(2001)の頃になるとスターとしての余裕が出てきて共演のマット・デイモンをだしに使ってふざけたり、ハリウッド1の独身大モテ時代で、レネー・ゼルウィガーを先頭に記録に残っているだけでも20人余の美女との恋愛ごっこで注目されていた。40歳頃から白髪となり、ロマンスグレイのエレガンスがプラス効果となる。

2014年に人権擁護の弁護士、アマルと結婚。「心から尊敬できるパートナーと巡り合った。僕は本当にラッキーだ!」

以後、社会問題を扱った作品の制作、監督に精を出していた。

画像1: 筆者とクルーニー

筆者とクルーニー

ジュリアとのキスシーンは笑いが止まらず80回も繰り返したよ

新作『チケット・トゥ・パラダイス』ではジュリア・ロバーツと4回目の共演、息の合った漫才バトルを繰り広げている。

「楽園で離婚したカップルにフィーバーがよみがえる、っていうアイデアは以前にホテルの床に5時間這いつくばって産み出したもの。何と言ってもアメリカでは国民の半分が離婚しているから、身に沁みる話だろう。僕らのケミストリーが中心だから、ジュリアが承諾しなければボツになる企画だったが、彼女に問い合わせたらすぐにオーケーしてくれた。ただね、彼女と働くとふざけっぱなしで仕事にならないからそれが唯一の心配の種だった。案の定、キッスシーンは80回ものテークを必要としたんだよ※。笑いだしたり吹き出したりが79回だったのだから。二人で踊りだすシーンなんかも若手の俳優たちが驚き呆れ果てるほど、ノリにノッて古ッたらしいダンスをやってしまったしね。

※ 本ストーリーは冗談だったと後ほど本人がコメントしています。

コロナ規制中にオーストラリアでのロケを励行したのだが、出演者もクルーも色々な犠牲を払って不便な状況で長時間働いてくれた。ジュリアは家族を置いて一人で来ていたから、かなりホームシックになったようだ。僕はワイフと5歳の双子を連れてきていてしょっちゅう、隣に住んでいたジュリアを招いては子守代わりにこき使ったりしてね(笑)。何しろ1日に洗濯機を6回まわすほどの忙しい家だから猫の手も借りたいほどだった」

ネスプレッソのCMのギャラは3000万ドル、最近手放したがテキーラのビジネスも大成功した起業家でもあるジョージだが、某航空会社の3500万ドルのCMのオファーを蹴ったそうだ。「アマルも僕も企業の目的や道理が僕らの信念から外れる時は断ることにしているから」とあくまで社会活動家の精神を貫くジョージであった。

画像2: 筆者とクルーニー

筆者とクルーニー

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