約40年にわたってハリウッドを中心に映画記者活動を続けている筆者が、その期間にインタビューしたスターは星の数。現在の大スターも駆け出しのころから知り合いというわけです。ということで、普段はなかなか知ることのできないビッグスターの昔と今の素顔を語ってもらう興味津々のコーナーです。今回は、オスカー賞常連のペネロペ・クルスが苦戦した役に注目です。(文・成田陽子/デジタル編集・スクリーン編集部)

成田陽子

ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて40年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。

共演男優たちと次々恋に落ちたが、同郷のハビエル・バルデムと結婚

目下、ペネロペ・クルスはアダム・ドライヴァーと共演の『フェラーリ』の撮影中だそうだが、イタリーのレースカー・ダイナスティーをアメリカ人、スペイン人の俳優で占めているマイケル・マン監督の意欲作は期待出来そうだ。ペネロペはアダム扮するエンツォ・フェラーリの妻、ローラを演じている。

今やオスカー賞の常連。レッドカーペットではハリウッドスターのベテランとして華麗なドレスとルックスを見せてくれるペネロペだが、初めてインタビューしたのは『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)の時。

既に25歳だったが英語がまだうまく話せなかったせいか、幼稚園児のように頼りなく、キョロキョロと周囲を見回して全く落ち着かず、成熟が早いヨーロッパの女性にしては珍しく少女のようにあどけなかったのを思い出す。

1992年ころのペネロペ

Photo by Getty Images

「クラシカル・バレーを9年間続けたのだけれど、突然女優になりたくなったのは、子供の頃、寂しい時などに『本で読んだ女主人公やら、映画で見た豪華なスター』などの役に自分で勝手に成り切って、ドラマチックな世界に入り込んで行っては最高の気分になったからかも。別次元の人間になる興奮とでもいうのかしら」

と女優志願の理由を小さな声で話してくれた。

そして翌年、共演したマット・デイモンと交際に発展、次に共演したニコラス・ケイジとロマンス、2年後にはトム・クルーズとのめくるめく恋が世界中に知られて「スペインのセクシー美女」としてセレブの仲間入り、マシュー・マコノヒーが最後の恋人で、結局2010年に結婚した相手は同じスペイン人の男優、ハビエル・バルデムとなった。めでたし、めでたし!

現在11歳のレオという息子と9歳のルナという娘が生まれている。ペネロペとハビエルが一緒に登場すると、ムンムンとした熱気が漂って、周囲の温度が10度ぐらいアップする(?)温暖効果も大歓迎。

画像1: 筆者とペネロペ

筆者とペネロペ

母性愛が強いので『パラレル・マザーズ』の役はとても難しかった

新作『パラレル・マザーズ』(2021)ではキャリア4回目のオスカー候補に。『それでも恋するバルセロナ』(2008)では見事にオスカー助演女優賞を受賞しているが、スペイン人女優としては初の栄誉だった。

『パラレル・マザーズ』ではフォトグラファーとして成功している女性を演じ、独身で妊娠、出産、産院で同じ日に出産した若い女性と知り合い、共にシングルマザーだったためふたりは親しくなるのだが後日、赤ん坊の取り間違いを発見。ここまではよくあるドラマなのだが名匠、ペドロ・アルモドヴァルの手にかかってストーリーは思いがけない方向に進む。

「今まで演じた役の中で、最も難しかった。脚本を読んでまず圧倒されるような衝撃を受け、そして撮影中は心身が消耗していくのが感じられ、改めて、もし自分に子供が居なかったら絶対にここまで演じられなかったと思う。

ペドロとはこれで7回目の映画だけれど今回は毎シーン気を失いそうな役作りをして、彼が最後に支えてくれるという信頼関係が無かったら到底出来なかったでしょうね。知らない街で会った他人の子供を勝手に抱きしめたりする母性愛を過剰に持っている私だから演じるのが物凄く辛かった」

とコメントするペネロペは、最近やっと出演依頼に「ノー」と言えるようになり、作品を選んでワーカホリックな生活を捨て、子供たちの成長を直に見守る毎日を楽しむようになったそう。

ビジネスウーマンとしても才能を発揮して、妹のモニカと組んでファッションラインを設立、そのうちの一つ、「マンゴー」は世界中に支店を持つ人気ブティックに成長。

小柄な体の持ち主だがひとたび役を得たり、レッドカーペットに立つと一回りも二回りも大きく見えるのは女優としての自信と余裕が備わってきたせいだろう。

画像2: 筆者とペネロペ

筆者とペネロペ

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